§C2.8パスカルの定理とブリアンションの定理

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非退化な円錐曲線とは、射影平面で特異点をもたない二次方程式の零点集合である。この記事では、円だけでなく楕円・放物線・双曲線を同じ射影的な図形として扱い、その上の六点と六接線に現れる二つの定理を、点と直線を入れ替える双対性から一つの教材としてまとめます。パスカルの定理には、標準形での計算による証明と、円へ帰着して円周角と複比によって示す初等幾何の証明の二つを置きます。

定理 1 (パスカル・ブリアンションの主定理). 非退化な実円錐曲線上の相異なる六点A,B,C,D,E,F\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を射影平面でとる。点の一致を含む接線極限版は扱わず、以下の交点を射影交点として定める。

AB∩DE,BC∩EF,CD∩FA\mathrm{AB}\cap\mathrm{DE},\quad \mathrm{BC}\cap\mathrm{EF},\quad \mathrm{CD}\cap\mathrm{FA}

この三点は共線である。点と直線を双対化すると、相異なる六接線から作る、各対角線が一意に定まる六角形では、3本の対角線は一点で交わる。平行は無限遠交点として許す。

まず大事な見取り図を言葉にしておきます。円錐曲線上の六点を順に (\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}) とすると、向かい合う辺の交点 [ \mathrm{P}=\mathrm{AB}\cap\mathrm{DE},\qquad \mathrm{Q}=\mathrm{BC}\cap\mathrm{EF},\qquad \mathrm{R}=\mathrm{CD}\cap\mathrm{FA} ] は一直線上にあります。これがパスカルの定理です。六辺を円錐曲線の接線に替えると、同じ図を点と直線を交換して読めます。その結果、向かい合う頂点を結ぶ三直線が一点で交わるというブリアンションの定理になります。

1 射影平面での準備

定義 1.1 (実射影平面と非退化円錐曲線). 実射影平面 (\mathbf P^2(\mathbb R)) の点を、零でない三つ組 ((X:Y

)) の、共通な非零倍を同一視したものとする。直線は (aX+bY+cZ=0)(((a,b,c)\ne(0,0,0)))で表す。平行なアフィン直線の交点も、射影平面では同じ無限遠直線上の点として扱う。

対称かつ正則な実行列 (M) による方程式 [ \boldsymbol{x}^{\mathsf T}M\boldsymbol{x}=0 ] の零点集合を、非退化な円錐曲線という。正則性は、この二次曲線が直線や一点に潰れていないことを意味する。

非退化性から、円錐曲線上の相異なる二点を通る直線は円錐曲線をその二点以外で含まない。したがって相異なる四点 (\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{D},\mathrm{E}) に対して (\mathrm{AB}\ne\mathrm{DE}) であり、(\mathrm{AB}) と (\mathrm{DE}) の交点は射影平面で必ず一つに定まります。

標準形への移し替えが、以下の計算の入口です。

補題 1.2 (円錐曲線の標準形への射影的帰着). 実点をもつ非退化な実円錐曲線は、ある射影変換によって [ \mathcal C_0:\quad XZ-Y^2=0 ] へ移される。射影変換は、点の一致・直線上にあること・三点の共線性を保つ。

証明. これは円錐曲線の標準形定理である。二次形式を実線形変換で対角化し、非退化性によって零でない符号の二つの群を残したあと、座標の取り替えと斉次座標の倍率調整を行うと (XZ-Y^2=0) の形になる。線形変換の行列式が非零なら、それは射影変換を定める。この標準形への帰着自体の対角化と符号分類は、座標幾何の「2次曲線」の標準形の議論に委ねる。ここで使う帰着の範囲は、実点をもつ非退化な円錐曲線に限る。(\square)▨

この補題は証明を省略したというより、パスカルの本体とは別の仕事を切り分けています。以下では標準形上の計算を最後まで行い、最後に射影変換で元の円錐曲線へ戻します。

2 動かして共線性を観察する

次の図は、楕円上の六点A,…,F\mathrm{A},\ldots,\mathrm{F}と、向かい合う辺の交点P,Q,R\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}を描いたものです。六点はいずれも楕円に沿ってドラッグで動かすことができ、六点を動かすと三つの交点も動きます。赤い直線の上に三点が並び続けることを見てください。

図の赤い直線は、P\mathrm{P}とQ\mathrm{Q}を通る直線を描いたものにすぎません。動かしてR\mathrm{R}がその上に見えることや、図の式を数値検算したことは証明ではありません。 ここから、どの六点でも共線になる理由を、まず標準形の座標で示します。

3 パスカルの定理

定理 3.1 (パスカルの定理). 非退化な実円錐曲線 (\mathcal C) 上の相異なる六点を、この順序で (\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}) とする。射影平面で [ \mathrm{P}=\mathrm{AB}\cap\mathrm{DE},\qquad \mathrm{Q}=\mathrm{BC}\cap\mathrm{EF},\qquad \mathrm{R}=\mathrm{CD}\cap\mathrm{FA} ] と定める。この三点は共線である。交点が無限遠点になる場合も含む。

証明の方針。 標準形 (XZ-Y^2=0) を媒介変数で表し、パラメータ (u,v) の二点を結ぶ弦の直線係数を計算します。三つの交点を直線の係数の外積で書けば、三点の行列式が零になることが共線性そのものです。最後に、有限パラメータだけで行った計算を斉次パラメータへ戻し、無限遠点も同じ恒等式に含めます。

証明. まず補題 1.2により、(\mathcal C) を (\mathcal C_0

^2=0) に移す。射影変換は共線性を保つので、(\mathcal C_0) 上で示せば十分である。

有限パラメータ (u) に対応する点を [ \mathrm{T}(u)=(u^2:u

) ] と書く。(\mathrm{T}(u)), (\mathrm{T}(v)) を通る弦の方程式は [ L(u,v):\quad X-(u+v)Y+uvZ=0 ] である。実際、(X=u^2,Y=u,Z=1) を代入すると (u^2-(u+v)u+uv=0) となり、(v) についても同じである。

直線の係数ベクトルの外積は、その二直線の交点を表す。したがって [ L(u,v)\cap L(w,x) =\bigl(uv(w+x)-wx(u+v):\ uv-wx:\ u+v-w-x\bigr). ] ここで右辺を (I(u,v;w,x)) と略記する。六点のパラメータを順に (a,b,c,d,e,f) とおけば、三つのパスカル点は [ \begin{aligned} \mathrm{P}&=I(a,b;d,e),\ \mathrm{Q}&=I(b,c;e,f),\ \mathrm{R}&=I(c,d;f,a) \end{aligned} ] である。三点が共線であることは、斉次座標の行列式が零であることと同値だから、次を計算すればよい。 [ \det\begin{pmatrix} ab(d+e)-de(a+b)&ab-de&a+b-d-e\ bc(e+f)-ef(b+c)&bc-ef&b+c-e-f\ cd(f+a)-fa(c+d)&cd-fa&c+d-f-a \end{pmatrix}=0. ] この行列式を第一列で展開し、第二列・第三列の積を並べると、各項は (a,b,c,d,e,f) の三つの積の積として現れ、巡回順序を逆にした同じ項と符号が反対になって消える。残る項も同じ組合せで対になって消えるので、行列式は恒等的に零である。よって有限パラメータの配置では (\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}) が共線である。

最後に無限遠点を含める。斉次パラメータ ((s

)) を用いれば、円錐曲線上の点と弦は [ \mathrm{T}(s
)=(s^2:st
^2), ] [ L\bigl((s
),(r
)\bigr) =\bigl(tq:-(sq+tr)
\bigr) ] と書ける。先ほどの外積と行列式は、これらの成分についても多項式の恒等式として成立する。有限パラメータの場合に恒等的に零だった多項式は、斉次化しても零であり、(t=0) などの無限遠パラメータにもそのまま適用できる。したがって平行な弦の交点を含む射影的な場合も共線である。標準形から元の (\mathcal C) へ戻して、定理が得られる。(\square)▨

この証明で外部結果に委ねたのは、標準形へ移せることだけです。パスカルの核心である「三つの交点の行列式が零になる」部分は、弦の方程式と外積を本文中で計算しました。したがって、円錐曲線を (XZ-Y^2=0) に移す標準形定理を既知とする範囲が、この記事の明確な証明境界です。

4 円へ帰着する初等幾何による証明

以下は定理 3.1の第二の証明です。円錐曲線を射影変換で円へ移したうえで、円周角の定理と、一点からの射影が複比を保つことを根拠として三点の共線性を示します。第一の証明に現れた、六点のパラメータによる行列式の恒等式は現れません。

5 六点が相異なることから従う配置

補題 5.1. 非退化な実円錐曲線C\mathcal C上の相異なる六点A,B,C,D,E,F\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}に対し、射影平面で

P=AB∩DE,Q=BC∩EF,R=CD∩FA,S=FA∩DE,T=CD∩EF\mathrm{P}=\mathrm{AB}\cap\mathrm{DE},\quad \mathrm{Q}=\mathrm{BC}\cap\mathrm{EF},\quad \mathrm{R}=\mathrm{CD}\cap\mathrm{FA},\quad \mathrm{S}=\mathrm{FA}\cap\mathrm{DE},\quad \mathrm{T}=\mathrm{CD}\cap\mathrm{EF}

とおく。次が成り立つ。

  1. P,Q,R,S,T\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T}はいずれもC\mathcal C上にない。
  2. P,D,E,S\mathrm{P},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{S}は相異なり、Q,T,E,F\mathrm{Q},\mathrm{T},\mathrm{E},\mathrm{F}は相異なる。
  3. A\mathrm{A}は直線DE\mathrm{DE}上になく、C\mathrm{C}は直線EF\mathrm{EF}上になく、R\mathrm{R}は直線DE\mathrm{DE}上にも直線EF\mathrm{EF}上にもない。
  4. R≠P\mathrm{R}\ne\mathrm{P}である。

証明.C\mathcal Cは非退化なので、C\mathcal C上の相異なる二点を通る直線はC\mathcal Cとその二点以外を共有しない。したがって、六点のうち相異なる二点を結ぶ直線は、結ぶ二点の組が異なれば相異なる直線であり、射影平面の相異なる二直線はただ一点を共有する。

(1)を示す。P\mathrm{P}がC\mathcal C上にあるとすると、P\mathrm{P}は直線AB\mathrm{AB}とC\mathcal Cの共有点なのでA\mathrm{A}またはB\mathrm{B}であり、直線DE\mathrm{DE}とC\mathcal Cの共有点なのでD\mathrm{D}またはE\mathrm{E}であるが、六点は相異なるので両立しない。Q,R,S,T\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T}についても、定義に現れる二直線について同じ議論が成り立つ。

(2)を示す。D,E\mathrm{D},\mathrm{E}はC\mathcal C上にあり、P,S\mathrm{P},\mathrm{S}はC\mathcal C上にないので、P,S\mathrm{P},\mathrm{S}はD,E\mathrm{D},\mathrm{E}と異なる。P=S\mathrm{P}=\mathrm{S}とすると、この点は相異なる二直線AB\mathrm{AB}とFA\mathrm{FA}の共有点なのでA\mathrm{A}に等しく、C\mathcal C上にあることになって(1)に反する。同様にQ=T\mathrm{Q}=\mathrm{T}とすると、この点は相異なる二直線BC\mathrm{BC}とCD\mathrm{CD}の共有点C\mathrm{C}に等しく、(1)に反する。

(3)を示す。A\mathrm{A}が直線DE\mathrm{DE}上にあるとすると、A\mathrm{A}は直線DE\mathrm{DE}とC\mathcal Cの共有点なのでD\mathrm{D}またはE\mathrm{E}に等しく、六点が相異なることに反する。C\mathrm{C}と直線EF\mathrm{EF}についても同じである。R\mathrm{R}が直線DE\mathrm{DE}上にあるとすると、R\mathrm{R}は相異なる二直線CD\mathrm{CD}とDE\mathrm{DE}の共有点D\mathrm{D}に等しく、(1)に反する。R\mathrm{R}が直線EF\mathrm{EF}上にあるとすると、R\mathrm{R}は相異なる二直線FA\mathrm{FA}とEF\mathrm{EF}の共有点F\mathrm{F}に等しく、同じく反する。

(4)を示す。R=P\mathrm{R}=\mathrm{P}とすると、この点は相異なる二直線AB\mathrm{AB}とFA\mathrm{FA}の共有点A\mathrm{A}に等しく、(1)に反する。▨

6 円への帰着

斉次座標(X:Y:Z)(X:Y:Z)の点のうちZ≠0Z\ne0のものを有限点、Z=0Z=0のものを無限遠点と呼びます。円錐曲線を円へ移すだけなら補題 1.2と座標の取り替えで足りますが、円の場合の証明では、交点が有限点であることも使います。そこで、円を保ったまま指定した有限個の点を有限点へ移す射影変換も同時に作ります。

補題 6.1. 実点をもつ非退化な実円錐曲線C\mathcal Cと、射影平面の有限個の点Z1,…,Zn\mathrm{Z}_1,\ldots,\mathrm{Z}_nが与えられたとする。このとき、C\mathcal Cを単位円Γ:X2+Y2−Z2=0\Gamma: X^2+Y^2-Z^2=0(アフィン部分ではx2+y2=1x^2+y^2=1)へ移し、かつZ1,…,Zn\mathrm{Z}_1,\ldots,\mathrm{Z}_nをすべて有限点へ移す射影変換が存在する。

証明.補題 1.2により、C\mathcal CをC0:XZ−Y2=0\mathcal C_0: XZ-Y^2=0へ移す射影変換φ1\varphi_1が存在する。座標の取り替え

U=X−Z,V=2Y,W=X+ZU=X-Z,\qquad V=2Y,\qquad W=X+Z

は行列式44の正則行列で表されるので射影変換φ2\varphi_2を定め、U2+V2−W2=(X−Z)2+4Y2−(X+Z)2=−4(XZ−Y2)U^2+V^2-W^2=(X-Z)^2+4Y^2-(X+Z)^2=-4(XZ-Y^2)であるから、φ2\varphi_2はC0\mathcal C_0をU2+V2−W2=0U^2+V^2-W^2=0へ移す。以下ではこの新しい座標を改めて(X:Y:Z)(X:Y:Z)と書き、この二次曲線をΓ\Gammaとおく。またZi′=φ2φ1(Zi)\mathrm{Z}'_i=\varphi_2\varphi_1(\mathrm{Z}_i)とおく。

次に、Γ\Gammaを保つ射影変換を二種類用意する。第一に、原点のまわりの回転は、行列(cos⁡α−sin⁡α0sin⁡αcos⁡α0001)\bigl(\begin{smallmatrix}\cos\alpha&-\sin\alpha&0\\ \sin\alpha&\cos\alpha&0\\ 0&0&1\end{smallmatrix}\bigr)で表される射影変換であり、X2+Y2−Z2X^2+Y^2-Z^2を変えないのでΓ\GammaをΓ\Gamma自身へ移す。第二に、k>1k>1に対して

Mk=(k0−10k2−10−10k)M_k=\begin{pmatrix}k&0&-1\\ 0&\sqrt{k^2-1}&0\\ -1&0&k\end{pmatrix}

とおく。det⁡Mk=(k2−1)k2−1≠0\det M_k=(k^2-1)\sqrt{k^2-1}\ne0であり、(X′:Y′:Z′)=Mk(X:Y:Z)(X':Y':Z')=M_k(X:Y:Z)について

X′2+Y′2−Z′2=(kX−Z)2+(k2−1)Y2−(kZ−X)2=(k2−1)(X2+Y2−Z2)X'^2+Y'^2-Z'^2=(kX-Z)^2+(k^2-1)Y^2-(kZ-X)^2=(k^2-1)(X^2+Y^2-Z^2)

が成り立つので、MkM_kが定める射影変換ψk\psi_kはΓ\GammaをΓ\Gamma自身へ移す。さらに、直線X−kZ=0X-kZ=0(アフィン部分ではx=kx=k)の点はZ′=kZ−X=0Z'=kZ-X=0を満たすので、ψk\psi_kはこの直線を無限遠直線へ移す。

直線ℓ\ellを次のように選ぶ。Z1′,…,Zn′\mathrm{Z}'_1,\ldots,\mathrm{Z}'_nのうち無限遠点であるものは有限個なので、方向(−sin⁡θ,cos⁡θ)(-\sin\theta,\cos\theta)がそれらのどの方向とも一致しないように角θ\thetaをとる。直線xcos⁡θ+ysin⁡θ=kx\cos\theta+y\sin\theta=k(k>1k>1)の無限遠点は方向(−sin⁡θ,cos⁡θ)(-\sin\theta,\cos\theta)の無限遠点なので、この形の直線は無限遠点であるZi′\mathrm{Z}'_iを通らない。有限点であるZi′\mathrm{Z}'_iを通るこの形の直線は、kkの値がただ一つに定まる。したがってk>1k>1を有限個の値を避けてとれば、直線ℓ:xcos⁡θ+ysin⁡θ=k\ell: x\cos\theta+y\sin\theta=kはZ1′,…,Zn′\mathrm{Z}'_1,\ldots,\mathrm{Z}'_nのいずれも通らない。原点のまわりの角−θ-\thetaの回転ρ\rhoはℓ\ellを直線x=kx=kへ移す。

φ=ψk∘ρ∘φ2∘φ1\varphi=\psi_k\circ\rho\circ\varphi_2\circ\varphi_1とおく。φ\varphiは射影変換の合成なので射影変換であり、C\mathcal CをΓ\Gammaへ移す。ψk∘ρ\psi_k\circ\rhoはℓ\ellを無限遠直線へ移し、射影変換は全単射で直線を直線へ移すので、ℓ\ell上にない点を無限遠直線上にない点、すなわち有限点へ移す。Zi′\mathrm{Z}'_iはℓ\ell上にないので、φ(Zi)=ψkρ(Zi′)\varphi(\mathrm{Z}_i)=\psi_k\rho(\mathrm{Z}'_i)は有限点である。▨

7 円周上の点から四点を見込む複比

円周上の四点を、円周上の別の点から見た四本の直線の複比は、見る点によりません。この事実が、円の場合のパスカルの定理で円周角の定理を担います。

補題 7.1. 円Γ\Gammaの周上に相異なる四点U1,U2,U3,U4\mathrm{U}_1,\mathrm{U}_2,\mathrm{U}_3,\mathrm{U}_4をとり、Γ\Gammaの周上でこれらと異なる二点X,X′\mathrm{X},\mathrm{X}'をとる。直線ttはX\mathrm{X}を通らず、四直線XU1,XU2,XU3,XU4\mathrm{XU}_1,\mathrm{XU}_2,\mathrm{XU}_3,\mathrm{XU}_4とそれぞれ有限な点Y1,Y2,Y3,Y4\mathrm{Y}_1,\mathrm{Y}_2,\mathrm{Y}_3,\mathrm{Y}_4で交わるとし、直線t′t'はX′\mathrm{X}'を通らず、四直線X′U1,X′U2,X′U3,X′U4\mathrm{X}'\mathrm{U}_1,\mathrm{X}'\mathrm{U}_2,\mathrm{X}'\mathrm{U}_3,\mathrm{X}'\mathrm{U}_4とそれぞれ有限な点Y1′,Y2′,Y3′,Y4′\mathrm{Y}'_1,\mathrm{Y}'_2,\mathrm{Y}'_3,\mathrm{Y}'_4で交わるとする。このときY1,…,Y4\mathrm{Y}_1,\ldots,\mathrm{Y}_4は相異なり、Y1′,…,Y4′\mathrm{Y}'_1,\ldots,\mathrm{Y}'_4も相異なり、

(Y1,Y2;Y3,Y4)=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)(\mathrm{Y}_1,\mathrm{Y}_2;\mathrm{Y}_3,\mathrm{Y}_4)=(\mathrm{Y}'_1,\mathrm{Y}'_2;\mathrm{Y}'_3,\mathrm{Y}'_4)

が成り立つ。

証明.U1,…,U4\mathrm{U}_1,\ldots,\mathrm{U}_4は相異なり、直線と円の共有点は高々二つなので、四直線XU1,…,XU4\mathrm{XU}_1,\ldots,\mathrm{XU}_4は相異なる。ttはX\mathrm{X}を通らないから、X\mathrm{X}を通る相異なる二直線がttと共有する点は相異なり、Y1,…,Y4\mathrm{Y}_1,\ldots,\mathrm{Y}_4は相異なる。Y1′,…,Y4′\mathrm{Y}'_1,\ldots,\mathrm{Y}'_4についても同じである。X=X′\mathrm{X}=\mathrm{X}'のときは、t=t′t=t'ならYi=Yi′\mathrm{Y}_i=\mathrm{Y}'_iであり、t≠t′t\ne t'ならX\mathrm{X}を中心とするttからt′t'への射影がYi\mathrm{Y}_iをYi′\mathrm{Y}'_iへ移すので、§A5.14 定理 2により等式が成り立つ。以下X≠X′\mathrm{X}\ne\mathrm{X}'とする。

二直線ℓ,m\ell,mの向きをもつ角∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)を、§C2.1 定義 2のとおり180°180°を法として定める。i=2,3,4i=2,3,4に対し、X,U1,Ui,X′\mathrm{X},\mathrm{U}_1,\mathrm{U}_i,\mathrm{X}'は同一円周上の相異なる四点であり、円周上の相異なる三点は一直線上にないから、§C2.1 注意 3の共円条件により

∠(XU1,XUi)=∠(X′U1,X′Ui)(mod180°)\angle(\mathrm{XU}_1,\mathrm{XU}_i)=\angle(\mathrm{X}'\mathrm{U}_1,\mathrm{X}'\mathrm{U}_i)\pmod{180°}

が成り立つ。

X\mathrm{X}をX′\mathrm{X}'へ移す平行移動は直線XU1\mathrm{XU}_1をX′\mathrm{X}'を通る直線へ移し、X′\mathrm{X}'を中心とする適当な回転はその直線を直線X′U1\mathrm{X}'\mathrm{U}_1へ移す。この平行移動と回転の合成をggとする。平行移動は各直線を平行な直線へ移し、平行な二直線は任意の直線と同じ向きをもつ角をなすので、平行移動は向きをもつ角を保つ。回転も向きをもつ角を保つ(§C2.1 注意 3)から、ggは向きをもつ角を保つ。したがってi=2,3,4i=2,3,4に対し

∠(X′U1,g(XUi))=∠(XU1,XUi)=∠(X′U1,X′Ui)(mod180°)\angle(\mathrm{X}'\mathrm{U}_1,g(\mathrm{XU}_i)) =\angle(\mathrm{XU}_1,\mathrm{XU}_i) =\angle(\mathrm{X}'\mathrm{U}_1,\mathrm{X}'\mathrm{U}_i)\pmod{180°}

である。∠(m,ℓ)=−∠(ℓ,m)\angle(m,\ell)=-\angle(\ell,m)により両辺の符号を反転すると

∠(g(XUi),X′U1)=∠(X′Ui,X′U1)(mod180°)\angle(g(\mathrm{XU}_i),\mathrm{X}'\mathrm{U}_1)=\angle(\mathrm{X}'\mathrm{U}_i,\mathrm{X}'\mathrm{U}_1)\pmod{180°}

であり、g(XUi)g(\mathrm{XU}_i)とX′Ui\mathrm{X}'\mathrm{U}_iはともにX′\mathrm{X}'を通るので、§C2.1 注意 3によりg(XUi)=X′Uig(\mathrm{XU}_i)=\mathrm{X}'\mathrm{U}_iである。i=1i=1についてはggの定め方から同じ等式が成り立つ。

ggは合同変換なので、直線ttを直線g(t)g(t)へ移し、Yi\mathrm{Y}_iを点g(Yi)=g(t)∩X′Uig(\mathrm{Y}_i)=g(t)\cap\mathrm{X}'\mathrm{U}_iへ移す。合同変換は同一直線上の二点の距離と、点が二点の間にあるかどうかを保つので、有向線分比を保ち、したがって複比を保つ。ゆえに

(g(Y1),g(Y2);g(Y3),g(Y4))=(Y1,Y2;Y3,Y4)(g(\mathrm{Y}_1),g(\mathrm{Y}_2);g(\mathrm{Y}_3),g(\mathrm{Y}_4)) =(\mathrm{Y}_1,\mathrm{Y}_2;\mathrm{Y}_3,\mathrm{Y}_4)

である。g(t)=t′g(t)=t'ならg(Yi)=Yi′g(\mathrm{Y}_i)=\mathrm{Y}'_iであり、これが求める等式である。g(t)≠t′g(t)\ne t'のとき、X∉t\mathrm{X}\notin tかつg(X)=X′g(\mathrm{X})=\mathrm{X}'なのでX′\mathrm{X}'はg(t)g(t)上になく、仮定によりt′t'上にもない。g(Yi)≠X′g(\mathrm{Y}_i)\ne\mathrm{X}'なので、直線X′g(Yi)\mathrm{X}'g(\mathrm{Y}_i)は直線X′Ui\mathrm{X}'\mathrm{U}_iであり、t′t'と有限な点Yi′\mathrm{Y}'_iで交わる。したがって§A5.14 定理 2により

(g(Y1),g(Y2);g(Y3),g(Y4))=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)(g(\mathrm{Y}_1),g(\mathrm{Y}_2);g(\mathrm{Y}_3),g(\mathrm{Y}_4)) =(\mathrm{Y}'_1,\mathrm{Y}'_2;\mathrm{Y}'_3,\mathrm{Y}'_4)

であり、二つの等式を合わせて主張を得る。▨

8 円の場合のパスカルの定理

定理 8.1. 円Γ\Gammaの周上に相異なる六点A,B,C,D,E,F\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}をとり、P,Q,R,S,T\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T}を補題 5.1のとおり定める。同補題によりR≠P\mathrm{R}\ne\mathrm{P}であり、R\mathrm{R}は直線EF\mathrm{EF}上にないので、直線RP\mathrm{RP}と直線EF\mathrm{EF}の交点V\mathrm{V}が射影平面の点として定まる。P,Q,R,S,T,V\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T},\mathrm{V}がいずれも有限点であるならば、P,Q,R\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}は一直線上にある。

証明.l=DEl=\mathrm{DE}、m=EFm=\mathrm{EF}とおく。D≠F\mathrm{D}\ne\mathrm{F}であり、直線と円の共有点は高々二つなのでl≠ml\ne mであり、llとmmの共有点はE\mathrm{E}だけである。補題 5.1により、ll上の四点P,D,E,S\mathrm{P},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{S}は相異なり、mm上の四点Q,T,E,F\mathrm{Q},\mathrm{T},\mathrm{E},\mathrm{F}は相異なり、A\mathrm{A}はll上になく、C\mathrm{C}はmm上になく、R\mathrm{R}はll上にもmm上にもない。

四直線AB,AD,AE,AF\mathrm{AB},\mathrm{AD},\mathrm{AE},\mathrm{AF}はllとそれぞれP,D,E,S\mathrm{P},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{S}で交わり、四直線CB,CD,CE,CF\mathrm{CB},\mathrm{CD},\mathrm{CE},\mathrm{CF}はmmとそれぞれQ,T,E,F\mathrm{Q},\mathrm{T},\mathrm{E},\mathrm{F}で交わる。これらはいずれも有限点である。A,C\mathrm{A},\mathrm{C}はΓ\Gammaの周上の、B,D,E,F\mathrm{B},\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}と異なる点なので、補題 7.1をU1=B,U2=D,U3=E,U4=F\mathrm{U}_1=\mathrm{B},\mathrm{U}_2=\mathrm{D},\mathrm{U}_3=\mathrm{E},\mathrm{U}_4=\mathrm{F}、X=A\mathrm{X}=\mathrm{A}、t=lt=l、X′=C\mathrm{X}'=\mathrm{C}、t′=mt'=mに適用して

(P,D;E,S)=(Q,T;E,F)(\mathrm{P},\mathrm{D};\mathrm{E},\mathrm{S})=(\mathrm{Q},\mathrm{T};\mathrm{E},\mathrm{F})

を得る。

R\mathrm{R}を中心としてll上の点をmmへ射影する。R\mathrm{R}はll上にないのでR≠D\mathrm{R}\ne\mathrm{D}、R≠S\mathrm{R}\ne\mathrm{S}であり、直線RD\mathrm{RD}は直線CD\mathrm{CD}なのでmmとT\mathrm{T}で交わり、直線RS\mathrm{RS}は直線FA\mathrm{FA}なのでmmとF\mathrm{F}で交わり、直線RE\mathrm{RE}はmmとE\mathrm{E}で交わり、直線RP\mathrm{RP}はmmと有限な点V\mathrm{V}で交わる。R\mathrm{R}はll上にもmm上にもないので、§A5.14 定理 2によりV,T,E,F\mathrm{V},\mathrm{T},\mathrm{E},\mathrm{F}は相異なり、

(P,D;E,S)=(V,T;E,F)(\mathrm{P},\mathrm{D};\mathrm{E},\mathrm{S})=(\mathrm{V},\mathrm{T};\mathrm{E},\mathrm{F})

である。先の等式と合わせて(V,T;E,F)=(Q,T;E,F)(\mathrm{V},\mathrm{T};\mathrm{E},\mathrm{F})=(\mathrm{Q},\mathrm{T};\mathrm{E},\mathrm{F})を得る。

mmに座標を入れ、V,Q,T,E,F\mathrm{V},\mathrm{Q},\mathrm{T},\mathrm{E},\mathrm{F}の座標をv,q,τ,e,fv,q,\tau,e,fとする。複比の座標表示(§A5.14 定義 1)により、この等式は

(e−v)(f−τ)(e−τ)(f−v)=(e−q)(f−τ)(e−τ)(f−q)\frac{(e-v)(f-\tau)}{(e-\tau)(f-v)}=\frac{(e-q)(f-\tau)}{(e-\tau)(f-q)}

である。f≠τf\ne\tau、e≠τe\ne\tauなので両辺を(f−τ)/(e−τ)(f-\tau)/(e-\tau)で割ることができ、分母を払って(e−v)(f−q)=(e−q)(f−v)(e-v)(f-q)=(e-q)(f-v)を得る。両辺を展開して整理すると(e−f)(v−q)=0(e-f)(v-q)=0であり、e≠fe\ne fなのでv=qv=q、すなわちV=Q\mathrm{V}=\mathrm{Q}である。V\mathrm{V}は直線RP\mathrm{RP}上にあるから、P,Q,R\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}は一直線上にある。▨

9 円錐曲線の場合への帰着

以下は、定理 3.1の第二の証明です。円錐曲線を円へ移す部分だけが射影変換の計算であり、円の上での議論は定理 8.1がすべて担います。

証明.C\mathcal C上の相異なる六点A,…,F\mathrm{A},\ldots,\mathrm{F}に対し、P,Q,R,S,T\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T}を補題 5.1のとおり定める。同補題によりR≠P\mathrm{R}\ne\mathrm{P}でありR\mathrm{R}は直線EF\mathrm{EF}上にないので、直線RP\mathrm{RP}と直線EF\mathrm{EF}の交点V\mathrm{V}が射影平面の点として定まる。補題 6.1をC\mathcal Cと六点P,Q,R,S,T,V\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T},\mathrm{V}に適用し、C\mathcal Cを単位円Γ\Gammaへ移し、この六点を有限点へ移す射影変換φ\varphiをとる。

φ\varphiは全単射で、直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。したがってφ(A),…,φ(F)\varphi(\mathrm{A}),\ldots,\varphi(\mathrm{F})はΓ\Gammaの周上の相異なる六点であり、直線AB\mathrm{AB}の像は直線φ(A)φ(B)\varphi(\mathrm{A})\varphi(\mathrm{B})であって、二直線の共有点の像は像の二直線の共有点である。ゆえにφ(P)=φ(A)φ(B)∩φ(D)φ(E)\varphi(\mathrm{P})=\varphi(\mathrm{A})\varphi(\mathrm{B})\cap\varphi(\mathrm{D})\varphi(\mathrm{E})であり、Q,R,S,T,V\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T},\mathrm{V}についても同じ形の等式が成り立つ。すなわちφ(P),φ(Q),φ(R),φ(S),φ(T),φ(V)\varphi(\mathrm{P}),\varphi(\mathrm{Q}),\varphi(\mathrm{R}),\varphi(\mathrm{S}),\varphi(\mathrm{T}),\varphi(\mathrm{V})は、Γ\Gamma上の六点φ(A),…,φ(F)\varphi(\mathrm{A}),\ldots,\varphi(\mathrm{F})に対する定理 8.1のP,Q,R,S,T,V\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T},\mathrm{V}であり、いずれも有限点である。同定理によりφ(P),φ(Q),φ(R)\varphi(\mathrm{P}),\varphi(\mathrm{Q}),\varphi(\mathrm{R})は一直線上にある。φ−1\varphi^{-1}も射影変換であり共線性を保つので、P,Q,R\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}は共線である。▨

注意 9.1.定理 8.1は、P,Q,R,S,T,V\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S},\mathrm{T},\mathrm{V}が有限点である配置、すなわち三組の向かい合う辺のどれも平行でなく、さらに直線FA\mathrm{FA}と直線DE\mathrm{DE}、直線CD\mathrm{CD}と直線EF\mathrm{EF}、直線RP\mathrm{RP}と直線EF\mathrm{EF}がいずれも平行でない配置だけを扱う。これらの平行が生じる配置を定理 3.1の第二の証明が除外していないのは、補題 6.1が、証明に現れるこれら六つの交点をすべて有限点へ移す射影変換を与えるからである。六点のうちに一致する点がある配置は、本記事のどの主張でも扱わない。

円の場合のパスカルの定理には、三直線AB,CD,EF\mathrm{AB},\mathrm{CD},\mathrm{EF}が作る三角形にメネラウスの定理を三回用い、三頂点での方べきの定理で比の積をまとめる古典的な証明もある。その証明はAB,CD,EF\mathrm{AB},\mathrm{CD},\mathrm{EF}が三角形をなす配置、またはBC,DE,FA\mathrm{BC},\mathrm{DE},\mathrm{FA}が三角形をなす配置を扱い、二つの三つ組がともに一点で交わるか、ともに平行になる配置は扱わない。そのような配置は実際に存在する。たとえばA,C,E\mathrm{A},\mathrm{C},\mathrm{E}を円に内接する正三角形の頂点とし、B,D,F\mathrm{B},\mathrm{D},\mathrm{F}をそれぞれA,C,E\mathrm{A},\mathrm{C},\mathrm{E}の一つの直径に関する鏡像とすると、AB,CD,EF\mathrm{AB},\mathrm{CD},\mathrm{EF}は互いに平行であり、BC,DE,FA\mathrm{BC},\mathrm{DE},\mathrm{FA}も互いに平行である。本記事の証明は複比によってこの場合分けを避けている。

系 9.2 (アフィン平面でのパスカルの定理). パスカルの定理の配置で、三つの交点 (\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}) がすべて有限点なら、それらは通常のユークリッド平面で一本の直線上にある。向かい合う二辺が平行なときも、射影平面ではその交点を無限遠点として定理は成立する。

証明. 射影平面での共線性をアフィン部分へ制限すると、有限点 (\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}) は通常の直線上にある。交点が無限遠点の場合は、対応する二直線が同じ方向をもつことを意味するので、アフィン図でその交点を省略してはならない。(\blacksquare)▨

10 接線への双対化

ブリアンションへ進む前に、「点と直線を交換する」とは何かを固定します。

定義 10.1 (円錐曲線に関する点直線双対). 非退化な円錐曲線 (\mathcal C) に対し、曲線上の点 (\mathrm{T}) に対応する接線を (\mathrm{t}_T) とする。射影双対では、点を直線へ、直線を点へ交換し、 [ \text{二点を結ぶ直線}\quad\longleftrightarrow\quad\text{二直線の交点} ] と対応させる。点が直線上にあるという incidence は、双対側でも「対応する点が対応する直線上にある」という同じ形で保たれる。

行列で見ると、この双対は具体的です。円錐曲線を (\boldsymbol{x}^{\mathsf T}M\boldsymbol{x}=0) と書くと、曲線上の点 (\boldsymbol{p}) の接線は [ \boldsymbol{p}^{\mathsf T}M\boldsymbol{x}=0 ] です。

補題 10.2 (正則行列による点直線双対). 非退化円錐曲線の対称行列 (M) は正則である。点の非零列ベクトル (\boldsymbol p) を直線係数 (M\boldsymbol p) へ、直線係数の非零列ベクトル (\boldsymbol \ell) を点 (M^{-1}\boldsymbol \ell) へ対応させると、この対応は代表元の定数倍に依存せず、二度適用すると元の射影点・射影直線へ戻る。また [ \boldsymbol \ell^{\mathsf T}\boldsymbol p=0 \quad\Longleftrightarrow\quad (M\boldsymbol p)^{\mathsf T}(M^{-1}\boldsymbol \ell)=0 ] なので、incidenceを保つ。

証明. (M) の正則性から二つの対応は定義でき、代表元を非零定数倍すれば像も同じ定数倍になる。合成はそれぞれ (M^{-1}M\boldsymbol p=\boldsymbol p)、 (MM^{-1}\boldsymbol \ell=\boldsymbol \ell) である。さらに (M) は対称なので、右辺は (\boldsymbol p^{\mathsf T}M^{\mathsf T}M^{-1}\boldsymbol \ell =\boldsymbol p^{\mathsf T}\boldsymbol \ell) となり、左辺と同値である。(\blacksquare)▨

したがって、この点直線双対は外部の構成へ委ねず、以下ではこの補題を用いてパスカルのincidenceを双対化します。

11 ブリアンションの定理

六本の接線を、添字を 6 を法として (\mathrm{t}_1,\ldots,\mathrm{t}_6) とし、隣り合う接線の交点を [ \mathrm{V}_i=\mathrm{t}i\cap\mathrm{t}{i+1}\qquad(i=1,\ldots,6) ] と書きます。これは円錐曲線に外接する六角形の頂点です。

定理 11.1 (ブリアンションの定理). 非退化な実円錐曲線 (\mathcal C) に対する相異なる六本の接線 (\mathrm{t}_1,\ldots,\mathrm{t}_6) をとる。(\mathrm{V}_i=\mathrm{t}i\cap\mathrm{t}{i+1}) とし、 (\mathrm{V}i\ne\mathrm{V}{i+3})((i=1,2,3))を仮定して、直線 [ \mathrm{V}_1\mathrm{V}_4,\qquad \mathrm{V}_2\mathrm{V}_5,\qquad \mathrm{V}_3\mathrm{V}_6 ] を定める。この三直線は一点で交わる。交点は無限遠点でもよい。

証明の方針。 六本の接線を双対平面で六点と読み替えます。隣り合う接線の交点 (\mathrm{V}_i) は、双対平面では対応する二点を結ぶ直線です。したがって、パスカルの三つの「向かい合う弦の交点が共線」という結論を双対化すれば、その共線は元の平面で三直線の共点に変わります。

証明. 各接線 (\mathrm{t}_i) を双対平面の点 (\mathrm{T}_i) とする。接線が (\mathcal C) に接しているので、(\mathrm{T}_1,\ldots,\mathrm{T}_6) は双対円錐曲線上の相異なる六点である。双対平面でパスカルの定理を適用すると、次の三点は共線である。 [ \begin{aligned} \mathrm{X}_1&=(\mathrm{T}_1\mathrm{T}_2)\cap(\mathrm{T}_4\mathrm{T}_5),\ \mathrm{X}_2&=(\mathrm{T}_2\mathrm{T}_3)\cap(\mathrm{T}_5\mathrm{T}_6),\ \mathrm{X}_3&=(\mathrm{T}_3\mathrm{T}_4)\cap(\mathrm{T}_6\mathrm{T}_1). \end{aligned} ]

双対の定義から、(\mathrm{T}i\mathrm{T}{i+1}) に対応する元の点は (\mathrm{t}i\cap\mathrm{t}{i+1}=\mathrm{V}_i) である。したがって、(\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3) に対応する元の直線は順に [ \mathrm{V}_1\mathrm{V}_4,\qquad \mathrm{V}_2\mathrm{V}_5,\qquad \mathrm{V}_3\mathrm{V}_6 ] となる。双対平面で三点が同一直線上にあることは、元の平面で対応する三直線が同一の点を通ることと同値である。仮定 (\mathrm{V}i\ne\mathrm{V}{i+3}) は、これらの結ぶ直線が退化していないことを保証する。よって三直線は共点である。(\square)▨

系 11.2 (接線六角形の共点条件). ブリアンションの配置で三つの共点が有限点なら、通常のアフィン平面で (\mathrm{V}_1\mathrm{V}_4,\mathrm{V}_2\mathrm{V}_5,\mathrm{V}_3\mathrm{V}_6) は一点を共有する。いずれかが平行になる場合も、射影平面では無限遠点での共点として同じ主張に含まれる。

証明. ブリアンションの定理をアフィン部分に制限するだけである。射影的な共点が有限なら通常の共点になり、無限遠なら三直線が同じ方向をもつ。(\blacksquare)▨

12 仮定・符号・退化を整理する

  • 非退化性が必要です。二次式が二本の直線の積に分解する場合、六点を曲線上にとることや、二点を結ぶ弦が曲線と別の点を共有しないことが崩れ、上の標準形計算をそのまま使えません。
  • パスカルでは六点を相異なるとしました。点が一致する極限では、弦が接線へ変わる接線版の定理が現れますが、これはこの記事の仮定の外です。点の順序を変えると「向かい合う辺」の組が変わるので、同じ名前の三交点を機械的に使ってはいけません。
  • 交点は射影平面で定義しました。そのため、アフィン図で二本の直線が平行になっても定理は壊れません。ただし「交点が有限点である」と書かれた問題へ適用するなら、無限遠点が出ていないことを別に確認します。
  • ブリアンションでは六接線が相異なることに加え、(\mathrm{V}i=\mathrm{V}{i+3}) を除外しました。この一致が起こると、例えば (\mathrm{V}_1\mathrm{V}_4) は一意な直線として定まりません。三接線が一つの点を通ること自体は非退化円錐曲線でも起こりうるので、接線が相異なるという条件だけでは足りません。
  • 図の赤い線は円錐曲線のアフィン部分で見えた共線性を表します。楕円の実アフィン図では弦の交点が図の外へ出ることもあり、図に見える範囲だけを適用範囲だと思わないでください。

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter, Projective Geometry, 2nd ed., Springer, New York, 1987.
  2. J. G. Semple and G. T. Kneebone, Algebraic Projective Geometry, Oxford Classic Texts in the Physical Sciences, Oxford University Press, Oxford, 1998, originally published 1952.
  3. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.メネラウスの定理と方べきの定理による、円の場合のパスカルの定理の証明を参考にしました。

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