§C2.1蝶形定理

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円の弦の中点を通る別の二本の弦を引き、それぞれの端点を交差させて結ぶと、もとの弦の上に二つの交点が定まります。本記事は、二つの交点が弦の中点から等しい距離にあるという蝶形定理を初等幾何と座標の両方で証明し、中点の仮定を外した配置を扱います。

定理 1 (蝶形定理). 円Γ\Gammaの弦PQPQの中点をMMとする。MMを通るΓ\Gammaの弦AB,CDAB,CDで、PQPQとも互いとも異なるものをとり、直線ADADと直線BCBCがどちらも直線PQPQと平行でないとする。

X=AD∩PQ,Y=BC∩PQX=AD\cap PQ,\qquad Y=BC\cap PQ

とおくと、X≠YX\ne Yであり、MMは線分XYXYの中点である。とくにMX=MYMX=MYが成り立つ。

定義 2 (向きをもつ角). 二直線ℓ,m\ell,mの 向きをもつ角 (directed angle)(有向角)∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)を、ℓ\ellを反時計回りに回してmmと平行にするための回転角として、180°180°を法として定める。

注意 3 (向きをもつ角の性質). 以下の性質は初等幾何学の道具として証明せずに用いる。任意の直線ℓ,m,n\ell,m,nについて

∠(ℓ,m)+∠(m,n)=∠(ℓ,n),∠(m,ℓ)=−∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)+\angle(m,n)=\angle(\ell,n),\qquad \angle(m,\ell)=-\angle(\ell,m)

が成り立つ。ℓ′⊥ℓ\ell'\perp\ellかつm′⊥mm'\perp mならば∠(ℓ′,m′)=∠(ℓ,m)\angle(\ell',m')=\angle(\ell,m)である。∠(ℓ,n)=∠(ℓ′,n)\angle(\ell,n)=\angle(\ell',n)ならばℓ\ellとℓ′\ell'は平行または一致し、共有点をもてば一致する。直線に関する対称移動σ\sigmaは∠(σ(ℓ),σ(m))=−∠(ℓ,m)\angle(\sigma(\ell),\sigma(m))=-\angle(\ell,m)を満たし、相似拡大と回転は向きをもつ角を保つ。相異なる四点P,Q,R,SP,Q,R,Sについて、P,Q,RP,Q,RとS,Q,RS,Q,Rがいずれも一直線上にないとき、P,Q,R,SP,Q,R,Sが同一円周上にあることと

∠(PQ,PR)=∠(SQ,SR)(mod180°)\angle(PQ,PR)=\angle(SQ,SR)\pmod{180°}

は同値である(円周角の定理とその逆)。同一円周上にあれば、四点のどの二点を弦にとっても同じ形の等式が成り立つ。

補題 4 (交わる二弦が定める相似). 円Γ\Gammaの相異なる弦AB,CDAB,CDがΓ\Gammaの内部の点MMで交わるとする。このときMA⋅MB=MC⋅MDMA\cdot MB=MC\cdot MDであり、平面の相似変換φ\varphiで、MMを固定し、AAをCCへ、DDをBBへ写し、向きをもつ角の符号を反転するものが存在する。φ\varphiは線分ADADの中点を線分CBCBの中点へ写す。

証明.

方べきの定理によりMA⋅MB=MC⋅MDMA\cdot MB=MC\cdot MDである。MMはΓ\Gammaの内部にあるから、MMは線分ABABの内部の点であり、線分CDCDの内部の点でもある。A≠CA\ne Cである。A=CA=Cならば二弦はともにAAとMMを通り一致するからである。半直線MAMAと半直線MCMCは一致しない。一致すれば、MMから出る一つの半直線がΓ\Gammaと相異なる二点A,CA,Cで交わることになり、内部の点から出る半直線がΓ\Gammaとただ一点で交わることに反する。半直線MAMAと半直線MCMCは互いに逆向きでもない。逆向きならばA,M,CA,M,Cが一直線上にあり、弦ABABと弦CDCDが同じ直線の上にあって一致する。したがって角AMCAMCは0°0°より大きく180°180°より小さく、その二等分線ℓ0\ell_0が定まる。

ℓ0\ell_0に関する対称移動をτ\tauとする。τ\tauはMMを固定し、半直線MAMAと半直線MCMCを入れ替え、したがってそれらと逆向きの半直線MBMBと半直線MDMDも入れ替える。k=MC/MAk=MC/MAとおくと、MA⋅MB=MC⋅MDMA\cdot MB=MC\cdot MDからk=MB/MDk=MB/MDでもある。MMを中心とする比kkの相似拡大をη\etaとし、φ=η∘τ\varphi=\eta\circ\tauとおく。τ(A)\tau(A)は半直線MCMCの上にあってMτ(A)=MAM\tau(A)=MAを満たすから、φ(A)\varphi(A)は半直線MCMCの上にあってMφ(A)=k⋅MA=MCM\varphi(A)=k\cdot MA=MCを満たし、φ(A)=C\varphi(A)=Cである。同様にτ(D)\tau(D)は半直線MBMBの上にあってMτ(D)=MDM\tau(D)=MDを満たすから、Mφ(D)=k⋅MD=MBM\varphi(D)=k\cdot MD=MBとなり、φ(D)=B\varphi(D)=Bである。φ\varphiは対称移動と相似拡大の合成であるから相似変換であり、τ\tauが向きをもつ角の符号を反転し、η\etaが向きをもつ角を保つから、φ\varphiは符号を反転する。相似変換は線分を線分へ写し、長さを一定の比kk倍にするから、線分ADADの中点は線分φ(A)φ(D)=CB\varphi(A)\varphi(D)=CBの中点へ写る。▨

補題 5 (二直線への垂線の足). 相異なる二点O,XO,Xをとり、XXを通る相異なる二直線ℓ,m\ell,mをとる。OOからℓ,m\ell,mへ下ろした垂線の足をそれぞれH,KH,Kとする(OOがℓ\ellの上にあるときはH=OH=Oとし、mmについても同様とする)。K≠OK\ne OかつK≠XK\ne Xならば

∠(ℓ,HK)=∠(OX,OK)\angle(\ell,HK)=\angle(OX,OK)

が成り立つ。

証明.H≠KH\ne Kである。H=KH=Kならば、この点はℓ\ellとmmの両方の上にあってXXに一致し、K≠XK\ne Xに反する。よって直線HKHKが定まる。K≠OK\ne Oであるから直線OKOKも定まる。

H=OH=Oの場合を扱う。OOとXXはともにℓ\ellの上にあるからℓ=OX\ell=OXであり、HK=OKHK=OKである。したがって両辺は同じ角である。

H=XH=Xの場合を扱う。OOからℓ\ellへ下ろした垂線の足がXXであるからℓ⊥OX\ell\perp OXである。またHK=XK=mHK=XK=mであり、m⊥OKm\perp OKである。垂直な直線の組の向きをもつ角は等しいから∠(ℓ,HK)=∠(ℓ,m)=∠(OX,OK)\angle(\ell,HK)=\angle(\ell,m)=\angle(OX,OK)となる。

H≠OH\ne OかつH≠XH\ne Xの場合を扱う。HHは直線OXOXの上にない。HHが直線OXOXの上にあれば、HHとXXはともにℓ\ellの上にあり相異なるからℓ=OX\ell=OXとなり、OOがℓ\ellの上にあってH=OH=Oとなるからである。同じ理由でKKも直線OXOXの上にない。四点H,O,X,KH,O,X,Kは相異なり、∠(HO,HX)=90°=∠(KO,KX)\angle(HO,HX)=90°=\angle(KO,KX)であるから、注意 3の共円の判定によりH,O,X,KH,O,X,Kは同一円周上にある。この円はOXOXを直径とする円である。HHは直線XK=mXK=mの上になく(HHがmmの上にあればH=XH=Xとなる)、OOも直線mmの上にない(OOがmmの上にあればK=OK=Oとなる)から、弦XKXKをHHとOOから見込む角の等式∠(HX,HK)=∠(OX,OK)\angle(HX,HK)=\angle(OX,OK)が成り立つ。HX=ℓHX=\ellであるから主張を得る。▨

証明 (初等幾何による証明). 円Γ\Gammaの中心をOOとする。MMは弦PQPQの中点であるからΓ\Gammaの内部の点であり、A,B,C,DA,B,C,Dはいずれも直線PQPQの上にない。実際、AAが直線PQPQの上にあれば、MMを通る弦ABABは直線PQPQに含まれて弦PQPQと一致する。MMは線分ABABの内部の点であり、線分CDCDの内部の点でもあり、A,B,C,DA,B,C,Dは相異なる。とくにA,BA,Bは直線PQPQに関して反対側にあり、C,DC,Dも反対側にある。

X≠MX\ne Mである。MMが直線ADADの上にあれば、A≠MA\ne Mより直線ADADは直線AM=ABAM=ABに一致し、DDは直線ABABとΓ\Gammaの交点A,BA,Bのいずれかになる。D=AD=Aならば弦CDCDはAAとMMを通って弦ABABと一致し、D=BD=Bでも同様であって、いずれも仮定に反する。同じ理由でY≠MY\ne Mである。

M=OM=Oの場合を扱う。MMを通る弦AB,CDAB,CDは直径であるから、OOを中心とする点対称移動ρ\rhoはAAをBBへ、CCをDDへ写す。ρ\rhoは直線ADADを直線BCBCへ写し、OOを通る直線PQPQを自分自身へ写すから、ρ(X)=Y\rho(X)=Yである。したがってM=OM=Oは線分XYXYの中点であり、X≠MX\ne MからX≠YX\ne Yである。

以下M≠OM\ne Oとする。弦の中点と中心を結ぶ直線は弦に垂直であるからOM⊥PQOM\perp PQであり、OOは直線PQPQの上にない。とくにX≠OX\ne OかつY≠OY\ne Oである。

線分ADADの中点をM1M_1、線分BCBCの中点をM2M_2とする。中心から弦へ下ろした垂線の足は弦の中点であるから(弦が直径のときは足も中点もOOである)、M1M_1はOOから直線ADADへ下ろした垂線の足であり、M2M_2はOOから直線BCBCへ下ろした垂線の足である。またMMはOOから直線PQPQへ下ろした垂線の足である。M1≠MM_1\ne Mである。M1=MM_1=MならばMMが直線ADADの上にあってX=MX=Mとなるからである。同様にM2≠MM_2\ne Mである。

点XXを通る二直線ADADとPQPQは相異なり(AAは直線PQPQの上にない)、M≠OM\ne OかつM≠XM\ne Xであるから、補題 5を点O,XO,X、直線ℓ=AD\ell=AD、m=PQm=PQ、足H=M1H=M_1、K=MK=Mに適用して

∠(AD,M1M)=∠(OX,OM)\angle(AD,M_1M)=\angle(OX,OM)

を得る。同じ補題を点O,YO,Y、直線ℓ=BC\ell=BC、m=PQm=PQ、足H=M2H=M_2、K=MK=Mに適用して

∠(BC,M2M)=∠(OY,OM)\angle(BC,M_2M)=\angle(OY,OM)

を得る。

弦AB,CDAB,CDは相異なり、Γ\Gammaの内部の点MMで交わるから、補題 4の相似変換φ\varphiがある。φ\varphiは直線ADADを直線CBCBへ、直線M1MM_1Mを直線M2MM_2Mへ写し、向きをもつ角の符号を反転するから

∠(BC,M2M)=∠(φ(AD),φ(M1M))=−∠(AD,M1M)\angle(BC,M_2M)=\angle(\varphi(AD),\varphi(M_1M))=-\angle(AD,M_1M)

である。三つの等式を合わせて

∠(OY,OM)=−∠(OX,OM)=∠(OM,OX)\angle(OY,OM)=-\angle(OX,OM)=\angle(OM,OX)

を得る。

直線OMOMに関する対称移動をσ\sigmaとする。σ\sigmaは直線OMOMを固定し、向きをもつ角の符号を反転するから

∠(σ(OX),OM)=∠(σ(OX),σ(OM))=−∠(OX,OM)=∠(OY,OM)\angle(\sigma(OX),OM)=\angle(\sigma(OX),\sigma(OM))=-\angle(OX,OM)=\angle(OY,OM)

である。直線σ(OX)\sigma(OX)と直線OYOYはともにOOを通り、直線OMOMとの向きをもつ角が等しいから一致する。また直線PQPQは直線OMOMとMMで直交するからσ(PQ)=PQ\sigma(PQ)=PQである。直線OXOXと直線PQPQは相異なり(OOはPQPQの上にない)、XXで交わるから

σ(X)=σ(OX)∩σ(PQ)=OY∩PQ=Y\sigma(X)=\sigma(OX)\cap\sigma(PQ)=OY\cap PQ=Y

である。σ\sigmaを直線PQPQに制限すると、PQPQの上の各点をMMに関して対称な点へ写す点対称移動になる。したがってMMは線分XYXYの中点である。σ\sigmaが固定するPQPQの上の点はMMだけであるから、X≠MX\ne MよりX≠YX\ne Yである。▨

注意 6 (除いた配置と図が示す配置). 定理は、直線ADADまたは直線BCBCが直線PQPQと平行な配置を除いている。この配置ではXXまたはYYが定まらない。弦ABABまたは弦CDCDが弦PQPQと一致する配置も除いているが、たとえばAB=PQAB=PQならばX=AX=A、Y=BY=Bであって、主張はMMがPQPQの中点であることそのものである。上の証明は、AAとDDが直線PQPQの反対側にある配置(X,YX,Yが弦PQPQの内部にある配置)と、同じ側にある配置(X,YX,YがΓ\Gammaの外部にある配置)を区別せずに扱っている。冒頭の図は前者だけを示す。

証明 (相似と方べきによる別証明).

A,BA,Bは直線PQPQに関して反対側にあり、C,DC,Dも反対側にある(初等幾何による証明の冒頭と同じ理由による)。ゆえに、AAとDDが直線PQPQの反対側にあることと、BBとCCが反対側にあることは同値である。またX≠MX\ne MかつY≠MY\ne Mであり、XXは直線ABABの上にも直線CDCDの上にもない(直線ABABと直線PQPQの共有点はMMだけである)。YYについても同様である。以下、二直線のなす角とは、二直線が作る角のうち0°0°より大きく90°90°以下のものをいう。

XXから直線AB,CDAB,CDへ下ろした垂線の足をそれぞれE,FE,Fとし、YYから直線AB,CDAB,CDへ下ろした垂線の足をそれぞれG,KG,Kとする。直線PQPQと直線ABABのなす角をθ\thetaとする。θ<90°\theta<90°のとき、E≠ME\ne MかつG≠MG\ne Mであり、三角形XEMXEMと三角形YGMYGMはそれぞれE,GE,Gで直角をもつ。直角三角形のMMにおける角は鋭角であり、直線XM=PQXM=PQと直線ME=ABME=ABのなす角に等しいから、∠XME=θ=∠YMG\angle XME=\theta=\angle YMGである。したがって△XEM∼△YGM\triangle XEM\sim\triangle YGMであり

XEYG=MXMY\frac{XE}{YG}=\frac{MX}{MY}

を得る。θ=90°\theta=90°のときはE=G=ME=G=Mであり、XE=MXXE=MXかつYG=MYYG=MYであるから、同じ等式が直接成り立つ。直線PQPQと直線CDCDのなす角について同じ議論を行い

XFYK=MXMY\frac{XF}{YK}=\frac{MX}{MY}

を得る。

四点A,B,C,DA,B,C,DはΓ\Gammaの上にあるから、円周角の定理により∠(AB,AD)=∠(CB,CD)\angle(AB,AD)=\angle(CB,CD)が180°180°を法として成り立ち、直線AB,ADAB,ADのなす角と直線CB,CDCB,CDのなす角は等しい。この角をψ\psiとする。ψ<90°\psi<90°のとき、E≠AE\ne AかつK≠CK\ne Cであり、直角三角形AXEAXEと直角三角形CYKCYKのA,CA,Cにおける角はいずれもψ\psiに等しいから、△AXE∼△CYK\triangle AXE\sim\triangle CYKであって

XEYK=XAYC\frac{XE}{YK}=\frac{XA}{YC}

を得る。ψ=90°\psi=90°のときはE=AE=AかつK=CK=Cであり、XE=XAXE=XAかつYK=YCYK=YCであるから、同じ等式が成り立つ。同様に、円周角の定理による∠(DA,DC)=∠(BA,BC)\angle(DA,DC)=\angle(BA,BC)から、直線DA,DCDA,DCのなす角と直線BA,BCBA,BCのなす角が等しく

XFYG=XDYB\frac{XF}{YG}=\frac{XD}{YB}

を得る。四つの等式を掛け合わせると

MX2MY2=XEYG⋅XFYK=XEYK⋅XFYG=XA⋅XDYC⋅YB\frac{MX^2}{MY^2} =\frac{XE}{YG}\cdot\frac{XF}{YK} =\frac{XE}{YK}\cdot\frac{XF}{YG} =\frac{XA\cdot XD}{YC\cdot YB}

となる。

x=MXx=MX、y=MYy=MY、u=MP=MQu=MP=MQとおく。AAとDDが直線PQPQの反対側にある場合、XXは線分ADADの内部の点であるからΓ\Gammaの内部にあり、したがって線分PQPQの内部にあってx<ux<uである。XXを通る二弦AD,PQAD,PQについての方べきの定理により

XA⋅XD=XP⋅XQ=(u−x)(u+x)=u2−x2XA\cdot XD=XP\cdot XQ=(u-x)(u+x)=u^2-x^2

である。BBとCCも反対側にあるから、同様にYB⋅YC=u2−y2YB\cdot YC=u^2-y^2である。ゆえにx2(u2−y2)=y2(u2−x2)x^2(u^2-y^2)=y^2(u^2-x^2)、すなわちu2x2=u2y2u^2x^2=u^2y^2であり、x=yx=yを得る。AAとDDが直線PQPQの同じ側にある場合、XXは直線ADADの上にあって線分ADADの外にあるからΓ\Gammaの外部にあり、したがって線分PQPQの外にあってx>ux>uである。割線の方べきの定理によりXA⋅XD=XP⋅XQ=(x−u)(x+u)=x2−u2XA\cdot XD=XP\cdot XQ=(x-u)(x+u)=x^2-u^2であり、同様にYB⋅YC=y2−u2YB\cdot YC=y^2-u^2であるから、x2(y2−u2)=y2(x2−u2)x^2(y^2-u^2)=y^2(x^2-u^2)から再びx=yx=yを得る。以上で、いずれの配置でもMX=MYMX=MYである。

AAとDDが直線PQPQの反対側にある場合には、さらにMMがXXとYYの間にあることを示す。MMは直線ADADの上にない。BBはΓ\Gammaの上の点でA,DA,Dと異なるから直線ADADの上になく、線分MBMBは直線ADADと交わらない(直線ABABが直線ADADと共有する点はAAだけであり、AAは線分MBMBの上にない)から、BBとMMは直線ADADに関して同じ側にある。同様にCCとMMも直線ADADに関して同じ側にある。ゆえに線分BCBCの全体がこの側にあり、その内部の点YYは直線ADADの上になく、MMと同じ側にある。したがってX≠YX\ne Yであり、線分MYMYは直線ADADと交わらないから、XXは線分MYMYの上にない。A,DA,DとB,CB,Cの役割を入れ替えて同じ議論を行うと、YYは線分MXMXの上にない。直線PQPQの上の相異なる三点X,M,YX,M,Yのうち、他の二点の間にあるものはただ一つであるから、MMがXXとYYの間にある。MX=MYMX=MYと合わせて、MMは線分XYXYの中点である。

AAとDDが直線PQPQの同じ側にある配置では、この証明はMX=MYMX=MYを示すにとどまり、XXとYYがMMに関して反対側にあることを示していない。その配置を含めた完全な証明は、初等幾何による証明が与える。□

証明 (座標による別証明). 座標をM=(0,0)M=(0,0)、弦PQPQをxx軸とし、円を

x2+y2+2my−u2=0x^2+y^2+2my-u^2=0

と書く。ここでP=(−u,0),Q=(u,0)P=(-u,0),Q=(u,0)、u>0u>0である。

弦ABABがPQPQに垂直な場合を扱う。このときABABはx=0x=0であり、A=(0,a),B=(0,b)A=(0,a),B=(0,b)と書くことができる。弦CDCDはABABと異なり、ともにMMを通るので垂直ではない。そこでCDCDをy=sxy=sxとし、C=(c,sc),D=(d,sd)C=(c,sc),D=(d,sd)と書く。円との交点条件から

a+b=−2m,ab=−u2,c+d=−2ms1+s2,cd=−u21+s2a+b=-2m,\quad ab=-u^2,\qquad c+d=-\frac{2ms}{1+s^2},\quad cd=-\frac{u^2}{1+s^2}

を得る。直線ADADとBCBCがxx軸と有限の一点で交わるため、a−sda-sdとb−scb-scはともに00でない。二つの交点のxx座標は

xX=ada−sd,xY=bcb−scx_X=\frac{ad}{a-sd},\qquad x_Y=\frac{bc}{b-sc}

である。分母を払った和の分子は

ad(b−sc)+bc(a−sd)=ab(c+d)−scd(a+b)ad(b-sc)+bc(a-sd)=ab(c+d)-scd(a+b)

となる。右辺の二項へ解の和と積を代入すると、どちらも

2mu2s1+s2\frac{2mu^2s}{1+s^2}

となるので、xX+xY=0x_X+x_Y=0である。a,d≠0a,d\ne0であるからxX≠0x_X\ne0であり、X≠MX\ne Mである。したがってX≠YX\ne Yであり、MMはXYXYの中点である。弦CDCDが垂直な場合はABABとCDCDの役割を交換すればよく、この交換ではXXとYYも交換される。両弦がともに垂直ならば、MMを通る同一直線になって別の弦ではないため、その場合は生じない。

以下では、弦AB,CDAB,CDがともにPQPQに垂直でない場合を扱う。1本目の弦ABABをy=txy=tx、2本目の弦CDCDをy=sxy=sxとする。

A=(a,ta),B=(b,tb)A=(a,ta),B=(b,tb)、C=(c,sc),D=(d,sd)C=(c,sc),D=(d,sd)と書けば、円との交点条件から

a+b=−2mt1+t2,ab=−u21+t2,a+b=-\frac{2mt}{1+t^2},\quad ab=-\frac{u^2}{1+t^2},c+d=−2ms1+s2,cd=−u21+s2.c+d=-\frac{2ms}{1+s^2},\quad cd=-\frac{u^2}{1+s^2}.

直線ADADとxx軸の交点の座標は、2点を通る直線の切片公式から

xX=ad(s−t)sd−ta,x_X=\frac{ad(s-t)}{sd-ta},

同様に

xY=bc(s−t)sc−tb.x_Y=\frac{bc(s-t)}{sc-tb}.

ADADとBCBCがxx軸と有限の一点で交わるという仮定により、ここで用いた分母sd−tasd-taとsc−tbsc-tbはともに00でない。分母を払った和の分子は

ad(sc−tb)+bc(sd−ta)=scd(a+b)−tab(c+d).ad(sc-tb)+bc(sd-ta) =scd(a+b)-tab(c+d).

上の解の和・積を代入すると両項はともに

2mu2st(1+s2)(1+t2)\frac{2mu^2st}{(1+s^2)(1+t^2)}

となり、差は00である。したがってxX+xY=0x_X+x_Y=0である。a,d≠0a,d\ne0かつs≠ts\ne t(二弦は異なる)であるからxX≠0x_X\ne0であり、X≠MX\ne Mである。したがってX≠YX\ne Yであり、MMはXYXYの中点である。分母が00になる平行配置は、定理の有限交点の仮定から除外されている。▨

例 7 (中点仮定を外した配置). 円

x2+y2−2x−24=0x^2+y^2-2x-24=0

と弦PQPQをxx軸上に取り、P=(−4,0),Q=(6,0)P=(-4,0),Q=(6,0)とする。M=(0,0)M=(0,0)は弦PQPQ上にあるが、その中点(1,0)(1,0)ではない。MMを通る二弦の端点を

A=(4,4),B=(−3,−3),C=(125,245),D=(−2,−4)A=(4,4),\quad B=(-3,-3),\quad C=\left(\frac{12}{5},\frac{24}{5}\right),\quad D=(-2,-4)

とする。各点は円上にあり、A,M,BA,M,BとC,M,DC,M,Dはそれぞれ一直線上にある。直線ADADとBCBCの方程式は

AD: y=43(x−1),BC: y=139(x+1213)AD:\ y=\frac{4}{3}(x-1),\qquad BC:\ y=\frac{13}{9}\left(x+\frac{12}{13}\right)

であるから、

X=AD∩PQ=(1,0),Y=BC∩PQ=(−1213,0).X=AD\cap PQ=(1,0),\qquad Y=BC\cap PQ=\left(-\frac{12}{13},0\right).

したがってMX=1MX=1とMY=12/13MY=12/13は等しくない。円、三本の弦、二つの交点はすべて非退化であるため、結論を壊した条件はMMがPQPQの中点でないことだけである。

問題 8. 相似と方べきによる別証明で用いた四組の相似を挙げ、それらの相似比と点X,YX,Yを通る弦の方べきから、AAとDDが直線PQPQの反対側にある配置で

MX2MY2=MP2−MX2MP2−MY2\frac{MX^2}{MY^2}=\frac{MP^2-MX^2}{MP^2-MY^2}

を導け。

解答.

四組の相似は

△XEM∼△YGM,△XFM∼△YKM,△AXE∼△CYK,△DXF∼△BYG\triangle XEM\sim\triangle YGM,\quad \triangle XFM\sim\triangle YKM,\quad \triangle AXE\sim\triangle CYK,\quad \triangle DXF\sim\triangle BYG

である。前二組は直角とMMにおける同じ二直線のなす角から、後二組は直角と円周角から従う。対応する辺の比を掛け、X,YX,Yが弦PQPQの内部にあることから方べきの定理を適用すると

MX2MY2=XA⋅XDYB⋅YC=XP⋅XQYP⋅YQ=MP2−MX2MP2−MY2\frac{MX^2}{MY^2} =\frac{XA\cdot XD}{YB\cdot YC} =\frac{XP\cdot XQ}{YP\cdot YQ} =\frac{MP^2-MX^2}{MP^2-MY^2}

となる。▨

問題 9.例 7の直線AD,BCAD,BCとxx軸との交点をそれぞれ計算し、MX≠MYMX\ne MYを確かめよ。

解答.

ADADは(4,4)(4,4)と(−2,−4)(-2,-4)を通るのでy=43(x−1)y=\frac43(x-1)であり、xx軸との交点はX=(1,0)X=(1,0)である。BCBCは(−3,−3)(-3,-3)と(12/5,24/5)(12/5,24/5)を通るのでy=139(x+12/13)y=\frac{13}{9}(x+12/13)であり、xx軸との交点はY=(−12/13,0)Y=(-12/13,0)である。したがってMX=1MX=1、MY=12/13MY=12/13であり、両者は等しくない。▨

1 つまずいたら

  • MMが中点であるのは弦PQPQについてであり、弦AB,CDAB,CDの中点とは限りません。
  • XXはADADとPQPQの交点であり、YYはBCBCとPQPQの交点です。組を入れ替えないでください。
  • 向きをもつ角の等式は180°180°を法とする等式です。通常の角へ読み替えるときは、等しい場合と補角になる場合を配置ごとに区別してください。
  • 弦が平行なら交点は無限遠点になるため、有限な中点として扱うには別の定式化が必要です。

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.垂線の足と四組の相似・方べきによる別証明を参考にしました。

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