外心・重心・垂心は、それぞれ異なる条件によって定まる三角形の中心です。三角形の形を変えても、正三角形で三点が一致する場合を除けば、三点の位置には一直線上の並びと一定の比が現れます。本記事は、三点が一直線上に並ぶことと、その比を表すオイラー線を扱います。
定理 1 (オイラー線). 正三角形でない非退化三角形△ABCの外心をO、重心をG、垂心をHとする。このときO,G,Hは一直線上にあり、
OG:GH=1:2.正三角形ではO=G=Hとなる。
頂点 A をドラッグしてください。
定義 2. 平面上の点Gと0でない実数kに対し、Gを中心とする比kの相似拡大 (homothety) とは、GをG自身へ写し、Gと異なる各点Pを次の点P′へ写す平面の変換をいう。k>0のときは、P′は半直線GP上にあってGP′=kGPを満たす点であり、k<0のときは、P′は半直線GPとGについて反対向きの半直線上にあってGP′=∣k∣GPを満たす点である。
補題 3.Gを中心とする比−21の相似拡大をhとし、P、Qを相異なる二点とする。このときh(P)=h(Q)であり、h(P)h(Q)=21PQが成り立つ。さらに、直線h(P)h(Q)は直線PQに平行であるか、直線PQと一致する。
証明. 二点P、Qの一方がGと一致する場合を考える。Q=Gとするとh(Q)=Gであり、h(P)は直線GP上にあってGh(P)=21GPを満たすから、直線h(P)h(Q)は直線PQと一致し、h(P)h(Q)=21GP=21PQである。P=Gの場合も同じである。
二点P、QがどちらもGと異なり、三点G、P、Qが一直線上にある場合を考える。hはGを通る直線の各点を同じ直線の点へ写すから、h(P)とh(Q)はともに直線PQ上にあり、直線h(P)h(Q)は直線PQと一致する。二点P、QがGについて同じ側にあればh(P)h(Q)=21∣GP−GQ∣=21PQであり、反対側にあればh(P)h(Q)=21(GP+GQ)=21PQである。
二点P、QがどちらもGと異なり、三点G、P、Qが一直線上にない場合を考える。GについてP、Qと対称な点をそれぞれP∗、Q∗とする。GP=GP∗、GQ=GQ∗であり、∠PGQと∠P∗GQ∗は対頂角として等しいから、二辺とその間の角が等しく△GPQ≡△GP∗Q∗である。よってP∗Q∗=PQであり、∠GPQ=∠GP∗Q∗は直線PP∗を横切線とする錯角であるからPQ∥P∗Q∗である。点h(P)は半直線GP∗上にあってGh(P)=21GP=21GP∗を満たすので線分GP∗の中点であり、同じ理由でh(Q)は線分GQ∗の中点である。中点連結定理(§A5.2 定理 2.1)を△GP∗Q∗に適用すると、h(P)h(Q)∥P∗Q∗かつh(P)h(Q)=21P∗Q∗=21PQを得る。直線h(P)h(Q)は直線P∗Q∗に平行であり、直線P∗Q∗は直線PQに平行であるから、直線h(P)h(Q)は直線PQに平行である。
いずれの場合もh(P)h(Q)=21PQ>0であるからh(P)=h(Q)である。▨
証明. 三角形の重心は各中線を頂点の側から2:1に内分するから、重心Gは中線AMA上にあってAG:GMA=2:1を満たす。したがってGは線分AMAの内部にあり、MAは半直線GAとGについて反対向きの半直線上にあってGMA=21GAを満たす。これは、Gを中心とする比−21の相似拡大がAをMAへ写すことにほかならない。頂点を巡回して同じ議論を適用すると、この相似拡大はBをMBへ、CをMCへ写す。▨
証明. 中点連結定理(§A5.2 定理 2.1)により、線分MBMCは辺BCに平行で長さがBCの半分である。△ABCは非退化であるからMBは直線BC上になく、直線MBMCと直線BCは異なる二直線である。異なる二つの平行な直線は共有点をもたないから、辺BC上の点MAは直線MBMC上にない。よって△MAMBMCは非退化である。
三角形△MAMBMCの頂点MAから下ろした高さは、MAを通り直線MBMCに垂直な直線である。MBMCはBCに平行であるから、この高さはMAを通りBCに垂直な直線であり、MAは辺BCの中点であるから、この高さは辺BCの垂直二等分線である。外心Oは三辺の垂直二等分線の共有点であるから、この高さはOを通る。頂点を巡回して同じ議論を適用すると、△MAMBMCの三本の高さはいずれもOを通る。
頂点MAから下ろした高さと頂点MBから下ろした高さが平行であるとすれば、それぞれに垂直な直線MBMCとMCMAも平行になり、共有点MCをもつ二直線が一致してMA、MB、MCが一直線上に並ぶ。これは前段に反するから、二本の高さは平行ではなく、共有点をただ一つもつ。三本の高さはいずれもOを通るから、この共有点はOである。▨
補題 6. 非退化三角形△ABCの外心をO、重心をGとする。O=Gであることと、△ABCが正三角形であることは同値である。
証明. 辺BCの中点をMAとする。△ABCが正三角形である場合を考える。AB=ACであるから頂点Aは辺BCの垂直二等分線上にあり、中点MAもこの垂直二等分線上にある。A=MAであるから、中線AMAは辺BCの垂直二等分線と一致する。頂点を巡回して同じ議論を適用すると、三本の中線は三辺の垂直二等分線と一致する。重心Gは三本の中線の共有点であり、外心Oは三辺の垂直二等分線の共有点であるから、O=Gである。
逆にO=Gとする。重心Gは中線AMAをAG:GMA=2:1に内分するからG=MAであり、O=MAである。外心Oと中点MAはともに辺BCの垂直二等分線上にあるから、二点を通る直線OMAは辺BCの垂直二等分線である。頂点A、重心G=O、中点MAは中線AMA上にあるので、直線AMAと直線OMAは相異なる二点OとMAを共有し、一致する。したがってAは辺BCの垂直二等分線上にあり、AB=ACが成り立つ。頂点を巡回して同じ議論を適用するとBC=BAも成り立つので、△ABCは正三角形である。▨
証明 (中点三角形への相似拡大による証明). 辺BC、CA、ABの中点をそれぞれMA、MB、MCとし、Gを中心とする比−21の相似拡大をhとする。補題 4により、hはA、B、CをそれぞれMA、MB、MCへ写す。
中点MAを通りBCに垂直な直線をmAとする。中点連結定理(§A5.2 定理 2.1)によりMBMCはBCに平行であるから、mAはMAを通りMBMCに垂直な直線、すなわち△MAMBMCの頂点MAから下ろした高さである。
垂心Hは、Aを通りBCに垂直な直線の上にある。H=Aの場合、h(H)=h(A)=MAはmA上にある。H=Aの場合、直線AHはAを通りBCに垂直な直線であり、補題 3により直線MAh(H)は直線AHに平行であるか直線AHと一致するから、直線MAh(H)はMAを通りBCに垂直な直線mAであり、h(H)はmA上にある。頂点を巡回して同じ議論を適用すると、h(H)は△MAMBMCの三本の高さのいずれの上にもある。補題 5により、この三本の高さはただ一つの共有点をもち、それはOである。したがって
h(H)=Oが成り立つ。
△ABCが正三角形である場合を考える。補題 6によりO=Gである。相似拡大hはGと異なる点をGと異なる点へ写すから、h(H)=O=GからH=Gを得る。よってO=G=Hである。
△ABCが正三角形でない場合を考える。補題 6によりO=Gである。H=GとすればO=h(H)=h(G)=GとなってO=Gに反するから、H=Gである。相似拡大hの定め方により、O=h(H)は、点Oが直線GH上にあってGについてHと反対側にあり、GO=21GHを満たすことを意味する。したがってO、G、Hは一直線上にあり、Gは線分OHの内部にあって
OG:GH=21GH:GH=1:2となる。▨
外心を原点にすると、垂心は次のベクトルで表されます。
証明.h=a+b+cと定め、この位置ベクトルをもつ点をH′とする。辺BCの方向ベクトルはc−bであり、
(h−a)⋅(c−b)=(b+c)⋅(c−b)=∣c∣2−∣b∣2=0.したがってH′は、Aを通りBCに垂直な直線の上にある。頂点を巡回して
(h−b)⋅(a−c)=∣a∣2−∣c∣2=0,(h−c)⋅(b−a)=∣b∣2−∣a∣2=0も得るので、H′はBを通りCAに垂直な直線の上にも、Cを通りABに垂直な直線の上にもある。この三本の直線は△ABCの三本の高さであるから、H′は垂心Hであり、その位置ベクトルはhである。▨
証明 (ベクトルによる別証明). 重心の位置ベクトルは
g=3a+b+c=3h.h=0ならg=0でもあり、O=Gとなるため、補題 6により△ABCは正三角形になる。したがって、正三角形でない場合はh=0である。このとき
OG=31h,GH=32hであるから、O,G,Hはこの順に一直線上に並ぶ。また、二つの正の距離は
OG=31∣h∣,GH=32∣h∣であるため、OG:GH=1:2となる。▨
解答.
Gを中心とする比−21の相似拡大をhとする。補題 4により、hはA、B、CをそれぞれMA、MB、MCへ写す。外心Oは三頂点のいずれとも異なりOA=OB=OCを満たすから、補題 3により
h(O)MA=21OA,h(O)MB=21OB,h(O)MC=21OCが成り立ち、これらは互いに等しい。補題 5により△MAMBMCは非退化であり、非退化三角形の三頂点から等距離にある点はその外心だけであるから、h(O)は△MAMBMCの外心である。
△ABCは正三角形でないから、定理 1によりOとHはGについて反対側にありOG=21GHを満たす。点h(O)は半直線GOとGについて反対向きの半直線、すなわち半直線GH上にあってGh(O)=21GO=41GHを満たす。一方OH=OG+GH=23GHであるから、線分OHの中点NはOから43GHの距離にあり、Gから見てHの側へ43GH−21GH=41GHだけ離れている。したがってNは半直線GH上にあってGN=41GHを満たすのでN=h(O)であり、△MAMBMCの外心は線分OHの中点である。この点は「九点円」で扱う九点円の中心でもある。▨
問題 10.∠Aが直角である非退化三角形△ABCについて、外心Oと垂心Hが三角形のどの点であるかを述べよ。さらに、O、G、Hが一直線上にあることとOG:GH=1:2が成り立つことを、重心Gが中線を2:1に内分することから確かめよ。
解答.
辺BCの中点をMA、辺ABの中点をMCとする。
∠Aは直角であるから直線ABは直線CAに垂直であり、直線ABは頂点Bを通るので、Bから下ろした高さは直線ABである。同じ理由で、Cから下ろした高さは直線CAである。この二本の高さはAを共有し、Aから下ろした高さもAを通るから、垂心はH=Aである。
中点連結定理(§A5.2 定理 2.1)を△ABCの辺AB、BCの中点MC、MAに適用すると、MCMAはCAに平行である。CAはABに垂直であるからMCMAもABに垂直であり、MCは辺ABの中点であるから、直線MCMAは辺ABの垂直二等分線である。したがってMAA=MABが成り立ち、MAは辺BCの中点であるからMAB=MACでもある。点MAは三頂点から等距離にあるので、外心はO=MAである。
重心Gは中線AMAをAG:GMA=2:1に内分する。H=AとO=MAはどちらもこの中線の端点であるから、三点O、G、Hは直線AMA上にあり、Gは線分OHの内部にある。さらにOG=GMAとGH=GA=2GMAからOG:GH=1:2を得る。▨