§E11.7独立性と積分布

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二つの事象について確率の積が共通部分の確率に一致するという条件は、三つ以上の事象を扱うときには一通りではない。すべての二事象について積の公式が成り立っても、三事象を同時に選んだ積の公式は成り立つとは限らない。したがって、有限個を任意に選ぶ量化を独立性の定義に含める必要がある。

本記事は、事象族からシグマ加法族の族を経て確率変数族の独立性を定義する。次に、有限個の確率変数が独立であることを、同時分布が周辺分布の積測度に一致することと言い換える。最後に、独立な可積分確率変数の積が可積分であり、その期待値が各期待値の積に分解することを証明する。

1 事象族とシグマ加法族の独立性

有限部分を選ぶときには、同じ添字を重複して選ばない。重複を許すと、一般にはP(Ai)2=P(Ai)P(A_i)^2=P(A_i)を要求することになり、独立性とは異なる条件になる。

定義 1.1.(Ω,F,P)(\Omega,\mathcal{F},P)を確率空間とし、IIを空でない添字集合とする。

  1. 事象族(Ai)i∈I(A_i)_{i\in I}が相互独立 (mutually independent events) であるとは、任意のk≥1k\geq 1、相異なる添字i1,…,ik∈Ii_1,\ldots,i_k\in Iに対して P ⁣(⋂r=1kAir)=∏r=1kP(Air)P\!\left(\bigcap_{r=1}^{k}A_{i_r}\right) =\prod_{r=1}^{k}P(A_{i_r}) が成り立つことをいう。任意の相異なるi,j∈Ii,j\in Iについて二事象Ai,AjA_i,A_jだけが独立であるとき、事象族は二つずつ独立 (pairwise independent events) であるという。
  2. 部分シグマ加法族の族(Gi)i∈I(\mathcal{G}_i)_{i\in I}が相互独立 (mutually independent sigma-algebras) であるとは、任意のk≥1k\geq1、相異なる添字i1,…,iki_1,\ldots,i_k、事象Air∈GirA_{i_r}\in\mathcal{G}_{i_r}に対して上の積の公式が成り立つことをいう。二つずつの独立性 (pairwise independence of sigma-algebras) も、相異なる二つのシグマ加法族から一事象ずつ選んで定める。
  3. 実数値確率変数族(Xi)i∈I(X_i)_{i\in I}が相互独立 (mutually independent random variables) であるとは、生成シグマ加法族の族(σ(Xi))i∈I(\sigma(X_i))_{i\in I}が相互独立であることをいう。二つずつの独立性 (pairwise independence of random variables) も生成シグマ加法族の族によって定める。

命題 1.2.n≥1n\geq1とし、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nを実数値確率変数とする。このとき、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nが相互独立であることと、任意の Borel 集合B1,…,Bn⊂RB_1,\ldots,B_n\subset\mathbb{R}に対して

P(X1∈B1,…,Xn∈Bn)=∏r=1nP(Xr∈Br)P(X_1\in B_1,\ldots,X_n\in B_n) =\prod_{r=1}^{n}P(X_r\in B_r)

が成り立つことは同値である。

証明.X1,…,XnX_1,\ldots,X_nが相互独立であるとする。各rrに対して{Xr∈Br}=Xr−1(Br)∈σ(Xr)\{X_r\in B_r\}=X_r^{-1}(B_r)\in\sigma(X_r)であるから、定義 1.1で全添字を選ぶと主張の積の公式を得る。

逆に、任意の Borel 集合B1,…,BnB_1,\ldots,B_nに対して積の公式が成り立つと仮定する。σ(Xi)={Xi−1(B):B∈B(R)}\sigma(X_i)=\{X_i^{-1}(B):B\in\mathcal{B}(\mathbb{R})\}である。実際、右辺は逆像が補集合と可算和を保つことからシグマ加法族をなし、XiX_iを可測にする最小のシグマ加法族に一致する。

1≤k≤n1\leq k\leq n、相異なる添字i1,…,iki_1,\ldots,i_k、事象Aij∈σ(Xij)A_{i_j}\in\sigma(X_{i_j})を任意に選ぶ。各jjについて、ある Borel 集合CijC_{i_j}が存在してAij={Xij∈Cij}A_{i_j}=\{X_{i_j}\in C_{i_j}\}と書くことができる。選ばれなかった添字rrにはCr=RC_r=\mathbb{R}と置く。仮定した積の公式をC1,…,CnC_1,\ldots,C_nへ適用すると、

P ⁣(⋂j=1kAij)=∏r=1nP(Xr∈Cr)=∏j=1kP(Aij)P\!\left(\bigcap_{j=1}^{k}A_{i_j}\right) =\prod_{r=1}^{n}P(X_r\in C_r) =\prod_{j=1}^{k}P(A_{i_j})

を得る。添字と事象の選び方は任意であるから、定義 1.1によりX1,…,XnX_1,\ldots,X_nは相互独立である。▨

例 1.3 (二つずつ独立であるが相互独立でない事象族).Ω={00,01,10,11}\Omega=\{00,01,10,11\}の各点へ確率1/41/4を与える。事象

A={10,11},B={01,11},C={00,11}A=\{10,11\},\qquad B=\{01,11\},\qquad C=\{00,11\}

を考える。三事象はいずれも確率1/21/2をもち、

A∩B={11},A∩C={11},B∩C={11}A\cap B=\{11\},\qquad A\cap C=\{11\},\qquad B\cap C=\{11\}

である。したがって、各二事象の共通部分の確率は1/4=(1/2)(1/2)1/4=(1/2)(1/2)であり、三事象は二つずつ独立である。

一方、A∩B∩C={11}A\cap B\cap C=\{11\}であるから、

P(A∩B∩C)=14≠18=P(A)P(B)P(C).P(A\cap B\cap C)=\frac14 \neq\frac18 =P(A)P(B)P(C).

ゆえに、三事象は相互独立ではない。この例では三つの二事象の組をすべて計算しているため、二つずつの独立性の確認に抜けはない。

2 同時分布と積分布

確率ベクトル(X,Y)(X,Y)の同時分布をμ(X,Y)\mu_{(X,Y)}、各成分の分布をμX,μY\mu_X,\mu_Yと書く。積測度の存在と一意性は§E9.10 定理 5.1が与える。確率測度は有限測度であるため、同定理のシグマ有限性の仮定を満たす。

2.1 証明方針

独立性から Borel 長方形上の同時分布の値を計算し、その値が積測度の長方形値に一致することを示す。積測度の一意性によって長方形上の一致を Borel 集合族全体へ広げる。逆向きは積測度の長方形値を独立性の定義へ戻す。有限個の場合には、長方形がなす π 系と π–λ 定理によって同じ一意性を示す。

定理 2.1. 実数値確率変数X,YX,Yに対して、次の二条件は同値である。

  1. XXとYYは独立である。
  2. R2\mathbb{R}^2の Borel 集合族上で μ(X,Y)=μX⊗μY\mu_{(X,Y)}=\mu_X\otimes\mu_Y が成り立つ。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。XXとYYが独立であるとする。任意の Borel 集合B,C⊂RB,C\subset\mathbb{R}に対して、

μ(X,Y)(B×C)=P(X∈B,Y∈C)=μX(B)μY(C)\mu_{(X,Y)}(B\times C) =P(X\in B,Y\in C) =\mu_X(B)\mu_Y(C)

である。Borel 長方形はR2\mathbb{R}^2の Borel 集合族を生成する。§E9.10 定理 5.1によれば、この長方形値をもつ測度は一意であるため、μ(X,Y)=μX⊗μY\mu_{(X,Y)}=\mu_X\otimes\mu_Yとなる。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。逆に積分布の等式を仮定すると、任意の Borel 集合B,CB,Cに対して

P(X∈B,Y∈C)=(μX⊗μY)(B×C)=μX(B)μY(C)P(X\in B,Y\in C) =(\mu_X\otimes\mu_Y)(B\times C) =\mu_X(B)\mu_Y(C)

である。したがって、定義 1.1によりXXとYYは独立である。▨

系 2.2.n≥2n\geq2とし、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nを実数値確率変数とする。このとき、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nが相互独立であることと

μ(X1,…,Xn)=μX1⊗⋯⊗μXn\mu_{(X_1,\ldots,X_n)} =\mu_{X_1}\otimes\cdots\otimes\mu_{X_n}

が成り立つことは同値である。右辺の有限積測度は左から反復して構成する。

証明. 相互独立性を仮定する。任意の Borel 長方形B1×⋯×BnB_1\times\cdots\times B_nに対して、

μ(X1,…,Xn)(B1×⋯×Bn)=∏r=1nμXr(Br)\mu_{(X_1,\ldots,X_n)}(B_1\times\cdots\times B_n) =\prod_{r=1}^{n}\mu_{X_r}(B_r)

である。確率測度の有限積は、§E9.10 定理 5.1を反復して一意に構成され、同じ長方形値をもつ。Borel 長方形は π 系であり、Rn\mathbb{R}^nの Borel 集合族を生成する。同時分布と有限積測度は全質量11の有限測度であるため、両測度が一致する Borel 集合全体は Dynkin 系をなす。したがって、§E9.1 定理 4.8により二つの測度は一致する。

逆に同時分布が有限積測度に一致するなら、Borel 長方形上の値を計算することにより

P(X1∈B1,…,Xn∈Bn)=∏r=1nP(Xr∈Br)P(X_1\in B_1,\ldots,X_n\in B_n) =\prod_{r=1}^{n}P(X_r\in B_r)

を得る。したがって、確率変数族は相互独立である。▨

3 独立な確率変数の積の期待値

積の期待値を分解する前に、積そのものが可積分であることを確認する必要がある。各確率変数の可積分性と独立性から、この確認を Tonelli の定理によって行うことができる。

3.1 証明方針

最初に同時分布を積測度へ置き換える。非負関数∣xy∣|xy|へ Tonelli の定理を適用して、その積分がE[∣X∣]E[∣Y∣]E[|X|]E[|Y|]に等しく有限であることを示す。この絶対可積分性を確認した後に限って符号をもつ関数xyxyへ Fubini の定理を適用し、二つの一変数積分の積へ分解する。

定理 3.1.X,YX,Yを独立な実数値確率変数とし、

E[∣X∣]<∞,E[∣Y∣]<∞E[|X|]<\infty, \qquad E[|Y|]<\infty

を仮定する。このときXYXYは可積分であり、

E[XY]=E[X]E[Y]E[XY]=E[X]E[Y]

が成り立つ。

証明.定理 2.1により、(X,Y)(X,Y)の同時分布はμX⊗μY\mu_X\otimes\mu_Yである。分布による積分表示は、非負 Borel 可測関数hhについて

E[h(X,Y)]=∫R2h(x,y) dμ(X,Y)(x,y)E[h(X,Y)]=\int_{\mathbb{R}^2}h(x,y)\,d\mu_{(X,Y)}(x,y)

を与える。この表示は、指示関数では同時分布の定義であり、非負単関数では有限加法性、一般の非負可測関数では非負単関数の増加近似と単調収束定理から従う。

h(x,y)=∣xy∣h(x,y)=|xy|とし、非負関数に対する§E9.11 定理 2.3を適用すると、

E[∣XY∣]=∫R2∣xy∣ d(μX⊗μY)(x,y)=∫R∣x∣(∫R∣y∣ dμY(y))dμX(x)=E[∣X∣]E[∣Y∣]<∞.\begin{aligned} E[|XY|] &=\int_{\mathbb{R}^2}|xy|\,d(\mu_X\otimes\mu_Y)(x,y)\\ &=\int_{\mathbb{R}}|x| \left(\int_{\mathbb{R}}|y|\,d\mu_Y(y)\right)d\mu_X(x)\\ &=E[|X|]E[|Y|]<\infty. \end{aligned}

したがって、XYXYは可積分であり、(x,y)↦xy(x,y)\mapsto xyは積測度について絶対可積分である。この確認により、分布による積分表示をxyxyの正部分と負部分へ適用することができる。その後に§E9.11 定理 3.2を適用すると、

E[XY]=∫R2xy d(μX⊗μY)(x,y)=∫Rx(∫Ry dμY(y))dμX(x)=E[X]E[Y].\begin{aligned} E[XY] &=\int_{\mathbb{R}^2}xy\,d(\mu_X\otimes\mu_Y)(x,y)\\ &=\int_{\mathbb{R}}x \left(\int_{\mathbb{R}}y\,d\mu_Y(y)\right)d\mu_X(x)\\ &=E[X]E[Y]. \end{aligned}

▨

系 3.2.X,YX,Yを独立な二次可積分実数値確率変数とする。このとき、

Cov⁡(X,Y)=0,Var⁡(X+Y)=Var⁡(X)+Var⁡(Y)\operatorname{Cov}(X,Y)=0, \qquad \operatorname{Var}(X+Y)=\operatorname{Var}(X)+\operatorname{Var}(Y)

が成り立つ。

証明. 確率測度の全質量は11であるため、Cauchy–Schwarz の不等式からE[∣X∣]≤E[X2]1/2E[|X|]\leq E[X^2]^{1/2}であり、YYについても同様である。したがって、X,YX,Yは可積分である。定理 3.1によりE[XY]=E[X]E[Y]E[XY]=E[X]E[Y]であるから、

Cov⁡(X,Y)=E[XY]−E[X]E[Y]=0.\operatorname{Cov}(X,Y) =E[XY]-E[X]E[Y]=0.

また、(X+Y)2≤2X2+2Y2(X+Y)^2\leq2X^2+2Y^2であるためX+YX+Yは二次可積分である。平方を展開すると、

Var⁡(X+Y)=Var⁡(X)+Var⁡(Y)+2Cov⁡(X,Y),\operatorname{Var}(X+Y) =\operatorname{Var}(X)+\operatorname{Var}(Y) +2\operatorname{Cov}(X,Y),

したがって主張を得る。▨

無相関性は二次の積率だけを用いる条件であり、同時分布全体を積分布に制約する独立性より弱い。

例 3.3 (無相関でも独立とは限らない).XXが{−1,0,1}\{-1,0,1\}の各点を確率1/31/3でとり、Y=X2Y=X^2とする。このとき、

E[X]=0,E[Y]=23,E[XY]=E[X3]=0.E[X]=0, \qquad E[Y]=\frac23, \qquad E[XY]=E[X^3]=0.

したがって、Cov⁡(X,Y)=0\operatorname{Cov}(X,Y)=0である。一方、

P(X=0,Y=0)=13,P(X=0)P(Y=0)=19P(X=0,Y=0)=\frac13, \qquad P(X=0)P(Y=0)=\frac19

である。積の公式が成り立たないため、XXとYYは独立ではない。

4 演習

問題 4.1 (補事象を含む積の公式). 事象A,BA,Bが独立であるとする。Ω∖A\Omega\setminus AとBBも独立であることを証明せよ。

解答.

A∩BA\cap Bと(Ω∖A)∩B(\Omega\setminus A)\cap Bは互いに交わらず、和集合はBBである。したがって、

P((Ω∖A)∩B)=P(B)−P(A∩B)=P(B)−P(A)P(B)=P(Ω∖A)P(B).\begin{aligned} P((\Omega\setminus A)\cap B) &=P(B)-P(A\cap B)\\ &=P(B)-P(A)P(B)\\ &=P(\Omega\setminus A)P(B). \end{aligned}

ゆえに、Ω∖A\Omega\setminus AとBBは独立である。▨

問題 4.2.

  1. 例 1.3について、AA、BB、CCのうち一つだけを補事象へ置き換えた三事象が、二つずつ独立であるが相互独立ではないことを、すべての共通部分を計算して示せ。
  2. X1,X2,X3X_1,X_2,X_3が相互独立で、各変数が可積分であるとする。Tonelli の定理でX1X2X3X_1X_2X_3の可積分性を先に確認し、その後に Fubini の定理を反復してE[X1X2X3]=∏r=13E[Xr]E[X_1X_2X_3]=\prod_{r=1}^{3}E[X_r]を証明せよ。
  3. 例 3.3について、(X,Y)(X,Y)の同時確率質量関数と二つの周辺確率質量関数を表にし、同時確率質量関数が周辺確率質量関数の積に一致しないすべての点を求めよ。

5 扱う範囲の境界と次の記事

本記事の積分布による特徴づけは有限個の確率変数を対象とし、無限積測度による独立な無限列の構成は扱わない。本単元後半の記事「Borel–Cantelli の補題と零一法則」は、独立な事象列に対する第二 Borel–Cantelli の補題と、独立なシグマ加法族の末尾事象に対する Kolmogorov の零一法則を証明する。同じ章の記事「大数の法則」と「中心極限定理」は、独立で同一の分布に従う確率変数列について、各記事に明示する可積分性または分散の仮定の下で、大数の法則と中心極限定理をそれぞれ証明する。次の記事では、像測度を出発点として確率変数の変換を扱い、微分可能な写像に対する密度変換公式を導く。

参考文献

  1. Achim Klenke, Probability Theory, 3rd ed., Universitext, Springer, 2020.独立な事象族と確率変数族、および積分布による特徴づけを参考にした。
  2. Patrick Billingsley, Probability and Measure, Anniversary Edition, Wiley, 2012, originally published 1995.独立性と期待値の積への分解を参考にした。

前提記事