§E11.12確率変数の収束概念

最終更新

確率変数列の極限には、標本点ごとの値を追う収束、例外事象の確率を追う収束、分布だけを追う収束、および平均的な誤差を追う収束がある。これらの収束は同じ強さではない。どの収束を仮定し、どの収束を結論とするかを区別しなければ、極限定理の主張を正しく読むことができない。

本記事では、ほとんど確実な収束、確率収束、分布収束、およびLpL^p収束を定義する。次に、LpL^p収束から確率収束、ほとんど確実な収束から確率収束、確率収束から分布収束への含意を証明する。最後に、逆向きの含意に対する反例と、それぞれの意味での極限の一意性を示す。

1 四つの収束概念

以下では、(Ω,F,P)(\Omega,\mathcal F,P)を確率空間とし、X,X1,X2,…X,X_1,X_2,\ldotsをこの確率空間上の実数値確率変数とする。XnX_nとXXの分布関数を、それぞれFnF_nとFFで表す。

定義 1.1.

P({ω∈Ω∣lim⁡n→∞Xn(ω)=X(ω)})=1P\bigl(\{\omega\in\Omega\mid \lim_{n\to\infty}X_n(\omega)=X(\omega)\}\bigr)=1

が成り立つとき、XnX_nはXXにほとんど確実に収束する (converge almost surely) といい、Xn→a.s.XX_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}Xと書く。

定義 1.2. すべてのε>0\varepsilon>0に対して

P(∣Xn−X∣>ε)⟶0P(|X_n-X|>\varepsilon)\longrightarrow0

が成り立つとき、XnX_nはXXに確率収束する (converge in probability) といい、Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xと書く。

定義 1.3.FFのすべての連続点x∈Rx\in\mathbb Rにおいて

Fn(x)⟶F(x)F_n(x)\longrightarrow F(x)

が成り立つとき、XnX_nはXXに分布収束する (converge in distribution) といい、Xn⇒XX_n\Rightarrow Xと書く。

分布収束の定義では、FFの不連続点における収束を要求しない。例えば定数確率変数へ分布収束する場合、極限分布関数はその定数で跳躍するため、その点における分布関数の値は収束を判定する条件に含まれない。

定義 1.4.1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、Xn,X∈Lp(P)X_n,X\in L^p(P)とする。

∥Xn−X∥p=(E[∣Xn−X∣p])1/p⟶0\|X_n-X\|_p=\bigl(E[|X_n-X|^p]\bigr)^{1/p}\longrightarrow0

が成り立つとき、XnX_nはXXにLpL^p収束する (LpL^pconvergence) という。

p=∞p=\inftyの場合には、Xn,X∈L∞(P)X_n,X\in L^\infty(P)かつ∥Xn−X∥∞→0\|X_n-X\|_\infty\to0であることをL∞L^\infty収束 (L∞L^\inftyconvergence) という。

例 1.5 (すべての収束が同時に成り立つ列).XXを任意の有界確率変数とし、Xn=X+1/nX_n=X+1/nと置く。このとき、すべてのω∈Ω\omega\in\Omegaに対してXn(ω)→X(ω)X_n(\omega)\to X(\omega)であり、任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して

∥Xn−X∥p=1n\|X_n-X\|_p=\frac1n

である。したがって、後で証明する含意によって、四つの収束がすべて成り立つ。

2 収束概念の含意

三つの含意は、それぞれ異なる評価によって得られる。LpL^p収束には Markov の不等式を、ほとんど確実な収束には指示関数と優収束定理を用いる。確率収束から分布収束を導く際には、XnX_nとXXの差が小さい事象上で二つの分布関数を挟む。

定理 2.1.XnX_nとXXを実数値確率変数とする。

  1. 1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して、Xn→XX_n\to XがLpL^pで成り立つならば、Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xである。
  2. Xn→a.s.XX_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}Xならば、Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xである。
  3. Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xならば、Xn⇒XX_n\Rightarrow Xである。

証明.(1)を示す。最初に1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、ε>0\varepsilon>0を固定する。非負確率変数∣Xn−X∣p|X_n-X|^pに Markov の不等式§E11.4 定理 3.1を適用すると、

P(∣Xn−X∣>ε)=P(∣Xn−X∣p>εp)≤E[∣Xn−X∣p]εp=∥Xn−X∥ppεpP(|X_n-X|>\varepsilon) =P(|X_n-X|^p>\varepsilon^p) \leq\frac{E[|X_n-X|^p]}{\varepsilon^p} =\frac{\|X_n-X\|_p^p}{\varepsilon^p}

を得る。LpL^p収束の仮定により右辺は00に収束する。p=∞p=\inftyの場合には、∥Xn−X∥∞<ε\|X_n-X\|_\infty<\varepsilonとなるすべてのnnについてP(∣Xn−X∣>ε)=0P(|X_n-X|>\varepsilon)=0である。したがって、第一の含意が成り立つ。

(2)を示す。次に、Xn→a.s.XX_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}Xとする。ε>0\varepsilon>0を固定し、

In=1{∣Xn−X∣>ε}I_n=\mathbf 1_{\{|X_n-X|>\varepsilon\}}

と置く。確率1の集合上でXn(ω)→X(ω)X_n(\omega)\to X(\omega)であるため、その集合上でIn(ω)→0I_n(\omega)\to0である。また、0≤In≤10\leq I_n\leq1であり、定数関数11は確率測度PPに関して可積分である。優収束定理§E9.7 定理 3.2を適用すると、

P(∣Xn−X∣>ε)=E[In]⟶0P(|X_n-X|>\varepsilon)=E[I_n]\longrightarrow0

を得る。この確率の極限が、ほとんど確実な収束から確率収束への第二の含意を与える。

(3)を示す。最後に、Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xとし、FFの連続点xxを固定する。任意のδ>0\delta>0に対して

{X≤x−δ}⊆{Xn≤x}∪{∣Xn−X∣>δ}\{X\leq x-\delta\} \subseteq \{X_n\leq x\}\cup\{|X_n-X|>\delta\}

および

{Xn≤x}⊆{X≤x+δ}∪{∣Xn−X∣>δ}\{X_n\leq x\} \subseteq \{X\leq x+\delta\}\cup\{|X_n-X|>\delta\}

が成り立つ。したがって、

F(x−δ)−P(∣Xn−X∣>δ)≤Fn(x)≤F(x+δ)+P(∣Xn−X∣>δ)F(x-\delta)-P(|X_n-X|>\delta) \leq F_n(x) \leq F(x+\delta)+P(|X_n-X|>\delta)

である。n→∞n\to\inftyとすると、確率収束の仮定から

F(x−δ)≤lim inf⁡n→∞Fn(x)≤lim sup⁡n→∞Fn(x)≤F(x+δ)F(x-\delta) \leq\liminf_{n\to\infty}F_n(x) \leq\limsup_{n\to\infty}F_n(x) \leq F(x+\delta)

を得る。δ↓0\delta\downarrow0とする。分布関数の右連続性§E11.3 命題 2.2とxxにおける連続性により、両端はF(x)F(x)に収束する。ゆえにFn(x)→F(x)F_n(x)\to F(x)であり、Xn⇒XX_n\Rightarrow Xが成り立つ。▨

この定理の関係は、有限のppについて

Lp 収束⟹確率収束⟹分布収束,ほとんど確実な収束⟹確率収束L^p\text{ 収束}\Longrightarrow\text{確率収束}\Longrightarrow\text{分布収束}, \qquad \text{ほとんど確実な収束}\Longrightarrow\text{確率収束}

とまとめられる。LpL^p収束とほとんど確実な収束の間には、有限のppについて一般の含意関係はない。

3 逆向きの含意が成立しない例

各反例では、どの確率空間と確率変数列を用いるかを明示する。収束しないという結論は、確率またはLpL^pノルムを直接計算して確認する。

例 3.1 (確率収束してもほとんど確実に収束しない列).Ω=[0,1)\Omega=[0,1)に Lebesgue 確率測度を入れる。m≥0m\geq0と0≤k<2m0\leq k<2^mに対して

Im,k=[k2m,k+12m),X2m+k=1Im,kI_{m,k}=\left[\frac{k}{2^m},\frac{k+1}{2^m}\right), \qquad X_{2^m+k}=\mathbf 1_{I_{m,k}}

と定める。2m≤n<2m+12^m\leq n<2^{m+1}ならばP(Xn=1)=2−mP(X_n=1)=2^{-m}であるため、Xn→P0X_n\xrightarrow{P}0である。

一方、各mmについて(Im,k)0≤k<2m(I_{m,k})_{0\leq k<2^m}は[0,1)[0,1)の分割である。したがって、各ω∈[0,1)\omega\in[0,1)について、2m≤n<2m+12^m\leq n<2^{m+1}の範囲にXn(ω)=1X_n(\omega)=1となるnnがちょうど一つある。m≥1m\geq1の各範囲にはXn(ω)=0X_n(\omega)=0となるnnもあるため、(Xn(ω))(X_n(\omega))はどのω\omegaでも収束しない。よって、XnX_nは00にほとんど確実には収束しない。

さらに、1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して

∥Xn∥p=P(Xn=1)1/p=2−m/p⟶0\|X_n\|_p=P(X_n=1)^{1/p}=2^{-m/p}\longrightarrow0

である。この例は、有限のppに対するLpL^p収束からほとんど確実な収束も一般には導かれないことを示す。

例 3.2 (ほとんど確実に収束してもLpL^p収束しない列).Ω=(0,1]\Omega=(0,1]に Lebesgue 確率測度を入れ、1≤p<∞1\leq p<\inftyを固定して

Xn=n1/p1(0,1/n]X_n=n^{1/p}\mathbf 1_{(0,1/n]}

と置く。各ω>0\omega>0について、十分大きなnnではω>1/n\omega>1/nとなるため、Xn(ω)=0X_n(\omega)=0である。したがってXn→a.s.0X_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}0であり、特にXn→P0X_n\xrightarrow{P}0である。しかし、

∥Xn∥pp=E[∣Xn∣p]=n P((0,1/n])=1\|X_n\|_p^p=E[|X_n|^p]=n\,P((0,1/n])=1

であるから、LpL^p収束は成り立たない。

p=∞p=\inftyについてはYn=1(0,1/n]Y_n=\mathbf 1_{(0,1/n]}と置けば、Yn→0Y_n\to0はほとんど確実かつ確率的に成り立つが、∥Yn∥∞=1\|Y_n\|_\infty=1である。したがって、確率収束からLpL^p収束への逆向きの含意は、1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyのいずれについても一般には成立しない。

例 3.3 (分布収束しても確率収束しない列).Ω={−1,1}\Omega=\{-1,1\}に各点の確率が1/21/2である確率測度を入れ、X(ω)=ωX(\omega)=\omega、Xn=−XX_n=-Xと置く。XnX_nとXXは同じ分布をもつため、すべてのnnについてFn=FF_n=Fであり、Xn⇒XX_n\Rightarrow Xである。しかし、

P(∣Xn−X∣>1)=1P(|X_n-X|>1)=1

であるから、XnX_nはXXに確率収束しない。分布収束は確率変数の同時の配置を忘れ、各変数の分布だけを比較するため、この相違が生じる。

4 極限の一意性

ほとんど確実な収束、確率収束、およびLpL^p収束の極限は、ほとんど至る所で一意である。分布収束では、極限確率変数そのものではなく、その分布が一意に定まる。この結論を分布関数から導くため、分布関数の不連続点について準備する。

補題 4.1. 分布関数FFの不連続点全体は高々可算である。

証明.FFは非減少かつ右連続である。F(x−)=sup⁡y<xF(y)F(x-)=\sup_{y<x}F(y)と置くと、xxが不連続点であることとF(x−)<F(x)F(x-)<F(x)であることは同値である。各不連続点xxに対し、開区間(F(x−),F(x))(F(x-),F(x))に含まれる最初の有理数を、有理数の固定した列挙から選んでqxq_xとする。

x<yx<yならばF(x)≤F(y−)F(x)\leq F(y-)であるため、区間(F(x−),F(x))(F(x-),F(x))と(F(y−),F(y))(F(y-),F(y))は交わらない。したがってx↦qxx\mapsto q_xは有理数全体への単射である。有理数全体は可算であるから、FFの不連続点全体も高々可算である。▨

定理 4.2. 次が成り立つ。

  1. Xn→a.s.XX_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}XかつXn→a.s.YX_n\xrightarrow{\mathrm{a.s.}}Yならば、X=YX=Yがほとんど至る所で成り立つ。
  2. Xn→PXX_n\xrightarrow{P}XかつXn→PYX_n\xrightarrow{P}Yならば、X=YX=Yがほとんど至る所で成り立つ。
  3. Xn→XX_n\to XかつXn→YX_n\to Yが同じLpL^pで成り立つならば、X=YX=Yがほとんど至る所で成り立つ。
  4. Xn⇒XX_n\Rightarrow XかつXn⇒YX_n\Rightarrow Yならば、XXとYYの分布は等しい。

証明.(1)を示す。Xn(ω)→X(ω)X_n(\omega)\to X(\omega)となる確率1の集合と、Xn(ω)→Y(ω)X_n(\omega)\to Y(\omega)となる確率1の集合との共通部分も確率1である。その共通部分上では実数列の極限の一意性によりX(ω)=Y(ω)X(\omega)=Y(\omega)である。

(2)を示す。任意のε>0\varepsilon>0に対して三角不等式から

P(∣X−Y∣>ε)≤P(∣X−Xn∣>ε/2)+P(∣Xn−Y∣>ε/2)P(|X-Y|>\varepsilon) \leq P(|X-X_n|>\varepsilon/2)+P(|X_n-Y|>\varepsilon/2)

を得る。n→∞n\to\inftyとすると右辺は00に収束するため、P(∣X−Y∣>ε)=0P(|X-Y|>\varepsilon)=0である。{∣X−Y∣>0}=⋃m≥1{∣X−Y∣>1/m}\{|X-Y|>0\}=\bigcup_{m\geq1}\{|X-Y|>1/m\}であるから、可算劣加法性によりP(X≠Y)=0P(X\ne Y)=0となる。

(3)を示す。既に証明した定理 2.1 (1)と(2)から従う。

(4)を示す。XXとYYの分布関数をそれぞれFFとGGとする。補題 4.1により、FFとGGの不連続点の和集合DDは高々可算である。x∉Dx\notin Dならば、分布収束の定義から

F(x)=lim⁡n→∞Fn(x)=G(x)F(x)=\lim_{n\to\infty}F_n(x)=G(x)

である。R∖D\mathbb R\setminus Dは稠密であるため、任意のx∈Rx\in\mathbb Rに対してxk>xx_k>x、xk↓xx_k\downarrow x、xk∉Dx_k\notin Dを満たす列を取ることができる。分布関数の右連続性から

F(x)=lim⁡k→∞F(xk)=lim⁡k→∞G(xk)=G(x)F(x)=\lim_{k\to\infty}F(x_k) =\lim_{k\to\infty}G(x_k)=G(x)

を得る。したがってF=GF=Gであり、分布関数による分布の一意性§E11.3 定理 2.3により、XXとYYの分布は等しい。▨

注意 4.3 (分布極限の一意性が意味すること). 分布収束の極限は分布として一意であるが、同じ確率空間上の確率変数としてほとんど至る所で一意とは限らない。例 3.3のXXと−X-Xは異なる確率変数であるが、同じ分布をもつ。

5 演習

問題 5.1.

  1. Xn→PXX_n\xrightarrow{P}Xとし、a,b∈Ra,b\in\mathbb Rとする。定義だけを用いて、aXn+b→PaX+baX_n+b\xrightarrow{P}aX+bを証明せよ。
  2. 例 3.1について、Xn⇒0X_n\Rightarrow0が分布関数の定義からも成り立つことを確認せよ。また、lim sup⁡n{Xn=1}=Ω\limsup_n\{X_n=1\}=\Omegaであることを示せ。
  3. Xn⇒cX_n\Rightarrow cとし、ccを定数とする。任意のε>0\varepsilon>0に対して分布関数をc−εc-\varepsilonとc+εc+\varepsilonで評価し、Xn→PcX_n\xrightarrow{P}cを証明せよ。

参考文献

  1. Patrick Billingsley, Convergence of Probability Measures, 2nd ed., Wiley Series in Probability and Statistics: Probability and Statistics Section, Wiley, New York, 1999.実数上の分布収束と分布関数による特徴づけを参考にした。
  2. Achim Klenke, Probability Theory, 3rd ed., Universitext, Springer, 2020.確率変数列の収束概念と含意関係を参考にした。
  3. Olav Kallenberg, Foundations of Modern Probability, 3rd ed., Probability Theory and Stochastic Modelling, Springer, Cham, 2021.確率収束、分布収束、および部分列に関する標準的な定式化を参考にした。

前提記事