1 四つの収束概念
以下では、(Ω,F,P)を確率空間とし、X,X1,X2,…をこの確率空間上の実数値確率変数とする。XnとXの分布関数を、それぞれFnとFで表す。
定義 1.1.
P({ω∈Ω∣n→∞limXn(ω)=X(ω)})=1が成り立つとき、XnはXにほとんど確実に収束する (converge almost surely) といい、Xna.s.Xと書く。
定義 1.2. すべてのε>0に対して
P(∣Xn−X∣>ε)⟶0が成り立つとき、XnはXに確率収束する (converge in probability) といい、XnPXと書く。
定義 1.3.Fのすべての連続点x∈Rにおいて
Fn(x)⟶F(x)が成り立つとき、XnはXに分布収束する (converge in distribution) といい、Xn⇒Xと書く。
分布収束の定義では、Fの不連続点における収束を要求しない。例えば定数確率変数へ分布収束する場合、極限分布関数はその定数で跳躍するため、その点における分布関数の値は収束を判定する条件に含まれない。
定義 1.4.1≤p<∞とし、Xn,X∈Lp(P)とする。
∥Xn−X∥p=(E[∣Xn−X∣p])1/p⟶0が成り立つとき、XnはXにLp収束する (Lpconvergence) という。
p=∞の場合には、Xn,X∈L∞(P)かつ∥Xn−X∥∞→0であることをL∞収束 (L∞convergence) という。
例 1.5 (すべての収束が同時に成り立つ列).Xを任意の有界確率変数とし、Xn=X+1/nと置く。このとき、すべてのω∈Ωに対してXn(ω)→X(ω)であり、任意の1≤p≤∞に対して
∥Xn−X∥p=n1である。したがって、後で証明する含意によって、四つの収束がすべて成り立つ。
2 収束概念の含意
三つの含意は、それぞれ異なる評価によって得られる。Lp収束には Markov の不等式を、ほとんど確実な収束には指示関数と優収束定理を用いる。確率収束から分布収束を導く際には、XnとXの差が小さい事象上で二つの分布関数を挟む。
定理 2.1.XnとXを実数値確率変数とする。
- 1≤p≤∞に対して、Xn→XがLpで成り立つならば、XnPXである。
- Xna.s.Xならば、XnPXである。
- XnPXならば、Xn⇒Xである。
証明.(1)を示す。最初に1≤p<∞とし、ε>0を固定する。非負確率変数∣Xn−X∣pに
Markov の不等式§E11.4 定理 3.1を適用すると、
P(∣Xn−X∣>ε)=P(∣Xn−X∣p>εp)≤εpE[∣Xn−X∣p]=εp∥Xn−X∥ppを得る。Lp収束の仮定により右辺は0に収束する。p=∞の場合には、∥Xn−X∥∞<εとなるすべてのnについてP(∣Xn−X∣>ε)=0である。したがって、第一の含意が成り立つ。
(2)を示す。次に、Xna.s.Xとする。ε>0を固定し、
In=1{∣Xn−X∣>ε}と置く。確率1の集合上でXn(ω)→X(ω)であるため、その集合上でIn(ω)→0である。また、0≤In≤1であり、定数関数1は確率測度Pに関して可積分である。優収束定理§E9.7 定理 3.2を適用すると、
P(∣Xn−X∣>ε)=E[In]⟶0を得る。この確率の極限が、ほとんど確実な収束から確率収束への第二の含意を与える。
(3)を示す。最後に、XnPXとし、Fの連続点xを固定する。任意のδ>0に対して
{X≤x−δ}⊆{Xn≤x}∪{∣Xn−X∣>δ}および
{Xn≤x}⊆{X≤x+δ}∪{∣Xn−X∣>δ}が成り立つ。したがって、
F(x−δ)−P(∣Xn−X∣>δ)≤Fn(x)≤F(x+δ)+P(∣Xn−X∣>δ)である。n→∞とすると、確率収束の仮定から
F(x−δ)≤n→∞liminfFn(x)≤n→∞limsupFn(x)≤F(x+δ)を得る。δ↓0とする。分布関数の右連続性§E11.3 命題 2.2とxにおける連続性により、両端はF(x)に収束する。ゆえにFn(x)→F(x)であり、Xn⇒Xが成り立つ。▨
この定理の関係は、有限のpについて
Lp 収束⟹確率収束⟹分布収束,ほとんど確実な収束⟹確率収束
とまとめられる。Lp収束とほとんど確実な収束の間には、有限のpについて一般の含意関係はない。
3 逆向きの含意が成立しない例
各反例では、どの確率空間と確率変数列を用いるかを明示する。収束しないという結論は、確率またはLpノルムを直接計算して確認する。
例 3.1 (確率収束してもほとんど確実に収束しない列).Ω=[0,1)に Lebesgue 確率測度を入れる。m≥0と0≤k<2mに対して
Im,k=[2mk,2mk+1),X2m+k=1Im,kと定める。2m≤n<2m+1ならばP(Xn=1)=2−mであるため、XnP0である。
一方、各mについて(Im,k)0≤k<2mは[0,1)の分割である。したがって、各ω∈[0,1)について、2m≤n<2m+1の範囲にXn(ω)=1となるnがちょうど一つある。m≥1の各範囲にはXn(ω)=0となるnもあるため、(Xn(ω))はどのωでも収束しない。よって、Xnは0にほとんど確実には収束しない。
さらに、1≤p<∞に対して
∥Xn∥p=P(Xn=1)1/p=2−m/p⟶0である。この例は、有限のpに対するLp収束からほとんど確実な収束も一般には導かれないことを示す。
例 3.2 (ほとんど確実に収束してもLp収束しない列).Ω=(0,1]に Lebesgue 確率測度を入れ、1≤p<∞を固定して
Xn=n1/p1(0,1/n]と置く。各ω>0について、十分大きなnではω>1/nとなるため、Xn(ω)=0である。したがってXna.s.0であり、特にXnP0である。しかし、
∥Xn∥pp=E[∣Xn∣p]=nP((0,1/n])=1であるから、Lp収束は成り立たない。
p=∞についてはYn=1(0,1/n]と置けば、Yn→0はほとんど確実かつ確率的に成り立つが、∥Yn∥∞=1である。したがって、確率収束からLp収束への逆向きの含意は、1≤p≤∞のいずれについても一般には成立しない。
例 3.3 (分布収束しても確率収束しない列).Ω={−1,1}に各点の確率が1/2である確率測度を入れ、X(ω)=ω、Xn=−Xと置く。XnとXは同じ分布をもつため、すべてのnについてFn=Fであり、Xn⇒Xである。しかし、
P(∣Xn−X∣>1)=1であるから、XnはXに確率収束しない。分布収束は確率変数の同時の配置を忘れ、各変数の分布だけを比較するため、この相違が生じる。
4 極限の一意性
ほとんど確実な収束、確率収束、およびLp収束の極限は、ほとんど至る所で一意である。分布収束では、極限確率変数そのものではなく、その分布が一意に定まる。この結論を分布関数から導くため、分布関数の不連続点について準備する。
補題 4.1. 分布関数Fの不連続点全体は高々可算である。
証明.Fは非減少かつ右連続である。F(x−)=supy<xF(y)と置くと、xが不連続点であることとF(x−)<F(x)であることは同値である。各不連続点xに対し、開区間(F(x−),F(x))に含まれる最初の有理数を、有理数の固定した列挙から選んでqxとする。
x<yならばF(x)≤F(y−)であるため、区間(F(x−),F(x))と(F(y−),F(y))は交わらない。したがってx↦qxは有理数全体への単射である。有理数全体は可算であるから、Fの不連続点全体も高々可算である。▨
定理 4.2. 次が成り立つ。
- Xna.s.XかつXna.s.Yならば、X=Yがほとんど至る所で成り立つ。
- XnPXかつXnPYならば、X=Yがほとんど至る所で成り立つ。
- Xn→XかつXn→Yが同じLpで成り立つならば、X=Yがほとんど至る所で成り立つ。
- Xn⇒XかつXn⇒Yならば、XとYの分布は等しい。
証明.(1)を示す。Xn(ω)→X(ω)となる確率1の集合と、Xn(ω)→Y(ω)となる確率1の集合との共通部分も確率1である。その共通部分上では実数列の極限の一意性によりX(ω)=Y(ω)である。
(2)を示す。任意のε>0に対して三角不等式から
P(∣X−Y∣>ε)≤P(∣X−Xn∣>ε/2)+P(∣Xn−Y∣>ε/2)を得る。n→∞とすると右辺は0に収束するため、P(∣X−Y∣>ε)=0である。{∣X−Y∣>0}=⋃m≥1{∣X−Y∣>1/m}であるから、可算劣加法性によりP(X=Y)=0となる。
(3)を示す。既に証明した定理 2.1 (1)と(2)から従う。
(4)を示す。XとYの分布関数をそれぞれFとGとする。補題 4.1により、FとGの不連続点の和集合Dは高々可算である。x∈/Dならば、分布収束の定義から
F(x)=n→∞limFn(x)=G(x)である。R∖Dは稠密であるため、任意のx∈Rに対してxk>x、xk↓x、xk∈/Dを満たす列を取ることができる。分布関数の右連続性から
F(x)=k→∞limF(xk)=k→∞limG(xk)=G(x)を得る。したがってF=Gであり、分布関数による分布の一意性§E11.3 定理 2.3により、XとYの分布は等しい。▨
5 演習
問題 5.1.
- XnPXとし、a,b∈Rとする。定義だけを用いて、aXn+bPaX+bを証明せよ。
- 例 3.1について、Xn⇒0が分布関数の定義からも成り立つことを確認せよ。また、limsupn{Xn=1}=Ωであることを示せ。
- Xn⇒cとし、cを定数とする。任意のε>0に対して分布関数をc−εとc+εで評価し、XnPcを証明せよ。