§B2.12三角関数の微分 II

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「三角関数の微分 I」では、正弦と余弦の導関数を、定義にしたがって差の商の極限として求めました。本記事は、残る正接の導関数を、正弦と余弦の商とみて商の微分法から求めます。tan⁡x=sin⁡xcos⁡x\tan x = \dfrac{\sin x}{\cos x}はcos⁡x=0\cos x = 0となるxxでは定義されないので、これらのxxを定義域から除いたうえで扱います。続いて、合成関数の微分法と組み合わせて三角関数を含む式の導関数を計算し、導関数の符号から増減を調べて極値を求めます。

本記事では、角をすべて弧度法で測ります。

1 正接の導関数

定理 1.1 (正接の導関数). 角を弧度法で測る。nnを整数としてx≠π2+nπx \ne \dfrac{\pi}{2} + n\piを満たすすべての実数xxについて、tan⁡\tanは微分可能であり

(tan⁡x)′=1cos⁡2x(\tan x)' = \frac{1}{\cos^{2}x}

が成り立つ。この値は1+tan⁡2x1 + \tan^{2}xにも等しい。

証明.cos⁡x=0\cos x = 0となるのはx=π2+nπx = \dfrac{\pi}{2} + n\pi(nnは整数)のときであり、これらの点はπ\piの間隔で並んでいます。したがって、x≠π2+nπx \ne \dfrac{\pi}{2}+n\piであれば、xxを含み、これらの点を一つも含まない開区間をとることができます。その開区間のすべての点でcos⁡\cosの値は00でないので、tan⁡x=sin⁡xcos⁡x\tan x = \dfrac{\sin x}{\cos x}が定義されます。

「積・商・合成関数の微分」の§B2.10 定理 3.1と、§B2.11 定理 3.1により

(tan⁡x)′=(sin⁡x)′cos⁡x−sin⁡x (cos⁡x)′cos⁡2x=cos⁡x⋅cos⁡x−sin⁡x⋅(−sin⁡x)cos⁡2x=cos⁡2x+sin⁡2xcos⁡2x(\tan x)' = \frac{(\sin x)'\cos x - \sin x\,(\cos x)'}{\cos^{2}x} = \frac{\cos x\cdot\cos x - \sin x\cdot(-\sin x)}{\cos^{2}x} = \frac{\cos^{2}x + \sin^{2}x}{\cos^{2}x}

です。sin⁡2x+cos⁡2x=1\sin^{2}x + \cos^{2}x = 1であるから、右辺は1cos⁡2x\dfrac{1}{\cos^{2}x}に等しくなります。また、cos⁡2x+sin⁡2xcos⁡2x=1+tan⁡2x\dfrac{\cos^{2}x+\sin^{2}x}{\cos^{2}x} = 1 + \tan^{2}xでもあります。▨

注意 1.2 (狭義単調増加であるのは各区間の上である).定理 1.1の値1cos⁡2x\dfrac{1}{\cos^{2}x}は、定義域のすべての点で正である。したがってtan⁡\tanは、定義域を分ける各区間

(−π2+nπ, π2+nπ)(n は整数)\left(-\frac{\pi}{2}+n\pi,\ \frac{\pi}{2}+n\pi\right) \qquad (n \text{ は整数})

のそれぞれの上で狭義単調増加である。これを「定義域全体で狭義単調増加である」と述べることはできない。実際、π4<3π4\dfrac{\pi}{4} < \dfrac{3\pi}{4}であるのにtan⁡π4=1>−1=tan⁡3π4\tan\dfrac{\pi}{4} = 1 > -1 = \tan\dfrac{3\pi}{4}である。二つの角は別の区間に属しており、その間に定義されない点π2\dfrac{\pi}{2}がある。

2 三角関数を含む式の導関数

三角関数と多項式を組み合わせた式は、積の微分法、商の微分法、合成関数の微分法を§B2.11 定理 3.1と定理 1.1に組み合わせて微分します。よく現れる形を先にまとめます。

公式 2.1 (角が1次式である場合と累乗の場合).aa、bbを定数とする。すべての実数xxについて

(sin⁡(ax+b))′=acos⁡(ax+b),(cos⁡(ax+b))′=−asin⁡(ax+b)\bigl(\sin(ax+b)\bigr)' = a\cos(ax+b), \qquad \bigl(\cos(ax+b)\bigr)' = -a\sin(ax+b)

が成り立つ。また、nnを11以上の整数とすると、すべての実数xxについて

(sin⁡nx)′=nsin⁡ n−1x cos⁡x,(cos⁡nx)′=−ncos⁡ n−1x sin⁡x\bigl(\sin^{n}x\bigr)' = n\sin^{\,n-1}x\,\cos x, \qquad \bigl(\cos^{n}x\bigr)' = -n\cos^{\,n-1}x\,\sin x

が成り立つ。

証明. 第一の組は、外側をsin⁡\sin、内側をax+bax+bとみて§B2.10 定理 4.1を用いると、(ax+b)′=a(ax+b)' = aであるからcos⁡(ax+b)⋅a\cos(ax+b)\cdot aとなります。余弦についても同様です。

第二の組は、外側をtnt^{n}、内側をsin⁡x\sin xとみて§B2.10 定理 4.1と§B2.10 定理 5.1を用いると、nsin⁡ n−1x⋅(sin⁡x)′=nsin⁡ n−1xcos⁡xn\sin^{\,n-1}x\cdot(\sin x)' = n\sin^{\,n-1}x\cos xとなります。余弦についても同様で、(cos⁡x)′=−sin⁡x(\cos x)' = -\sin xから負号が付きます。▨

例 2.2 (三角関数を含む式を微分する). 次の4つの関数の導関数を求める。

(1)(1)y=sin⁡3xy = \sin 3xとする。公式 2.1により、すべての実数xxについてy′=3cos⁡3xy' = 3\cos 3xである。

(2)(2)y=cos⁡2xy = \cos^{2}xとする。公式 2.1により、すべての実数xxについてy′=−2cos⁡xsin⁡xy' = -2\cos x\sin xである。倍角の公式によってy′=−sin⁡2xy' = -\sin 2xとも書くことができる。

(3)(3)x≠π2+nπx \ne \dfrac{\pi}{2}+n\pi(nnは整数)とし、y=xtan⁡xy = x\tan xとする。§B2.10 定理 2.1と定理 1.1により

y′=1⋅tan⁡x+x⋅1cos⁡2x=tan⁡x+xcos⁡2xy' = 1\cdot\tan x + x\cdot\frac{1}{\cos^{2}x} = \tan x + \frac{x}{\cos^{2}x}

である。

(4)(4)x≠π+2nπx \ne \pi + 2n\pi(nnは整数)とし、y=sin⁡x1+cos⁡xy = \dfrac{\sin x}{1+\cos x}とする。この範囲ではcos⁡x≠−1\cos x \ne -1であるから1+cos⁡x>01 + \cos x > 0であり、§B2.10 定理 3.1を用いることができて

y′=cos⁡x (1+cos⁡x)−sin⁡x (−sin⁡x)(1+cos⁡x)2=cos⁡x+cos⁡2x+sin⁡2x(1+cos⁡x)2=1+cos⁡x(1+cos⁡x)2=11+cos⁡xy' = \frac{\cos x\,(1+\cos x) - \sin x\,(-\sin x)}{(1+\cos x)^{2}} = \frac{\cos x + \cos^{2}x + \sin^{2}x}{(1+\cos x)^{2}} = \frac{1+\cos x}{(1+\cos x)^{2}} = \frac{1}{1+\cos x}

である。

3 増減を調べて極値を求める

導関数の符号から関数の増減を判定する方法は「多項式の微分と接線・増減・極値」で扱いました。三角関数を含む式でも手順は同じで、導関数を求め、それが00になるxxを求め、その前後での符号を調べます。

注意 3.1 (増減の判定について認めて用いること). 区間の上で導関数がつねに正であればその区間で関数が増加する、という判定は、平均値の定理から従う。本記事はこの判定法を認めて用い、平均値の定理の証明は「ε-論法と基礎解析」が与える。

三角関数は周期をもつので、同じ形の極値が繰り返し現れます。したがって、極値を求めるときには調べるxxの範囲を先に定めます。

例 3.2 (sin⁡x+cos⁡x\sin x + \cos xの増減と極値).0≤x≤2π0 \le x \le 2\piの範囲でf(x)=sin⁡x+cos⁡xf(x) = \sin x + \cos xの増減を調べる。§B2.11 定理 3.1によりf′(x)=cos⁡x−sin⁡xf'(x) = \cos x - \sin xである。

0≤x≤2π0 \le x \le 2\piでf′(x)=0f'(x) = 0となるのはcos⁡x=sin⁡x\cos x = \sin xのときであり、x=π4x = \dfrac{\pi}{4}とx=5π4x = \dfrac{5\pi}{4}である。cos⁡x>sin⁡x\cos x > \sin xとなるのは0≤x<π40 \le x < \dfrac{\pi}{4}と5π4<x≤2π\dfrac{5\pi}{4} < x \le 2\piの範囲であり、cos⁡x<sin⁡x\cos x < \sin xとなるのはπ4<x<5π4\dfrac{\pi}{4} < x < \dfrac{5\pi}{4}の範囲である。増減は次のようになる。

xx 00 ⋯\cdots π4\dfrac{\pi}{4} ⋯\cdots 5π4\dfrac{5\pi}{4} ⋯\cdots 2π2\pi
f′(x)f'(x) ++ 00 −- 00 ++
f(x)f(x) 11 増加 2\sqrt2 減少 −2-\sqrt2 増加 11

よってffはx=π4x = \dfrac{\pi}{4}で極大値2\sqrt2をとり、x=5π4x = \dfrac{5\pi}{4}で極小値−2-\sqrt2をとる。両端の値はf(0)=f(2π)=1f(0) = f(2\pi) = 1であるから、この範囲での最大値は2\sqrt2、最小値は−2-\sqrt2である。

三角関数の合成によってf(x)=2 sin⁡(x+π4)f(x) = \sqrt2\,\sin\left(x+\dfrac{\pi}{4}\right)と書き直すことができ、値の範囲が−2≤f(x)≤2-\sqrt2 \le f(x) \le \sqrt2であることと、最大値をとるxxがx+π4=π2x + \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{\pi}{2}すなわちx=π4x = \dfrac{\pi}{4}であることが確かめられる。

例 3.3 (導関数が00でも極値とは限らない).0≤x≤2π0 \le x \le 2\piの範囲でf(x)=sin⁡x (1+cos⁡x)f(x) = \sin x\,(1+\cos x)の増減を調べる。§B2.10 定理 2.1と§B2.11 定理 3.1により

f′(x)=cos⁡x (1+cos⁡x)+sin⁡x (−sin⁡x)=cos⁡x+cos⁡2x−sin⁡2x=2cos⁡2x+cos⁡x−1f'(x) = \cos x\,(1+\cos x) + \sin x\,(-\sin x) = \cos x + \cos^{2}x - \sin^{2}x = 2\cos^{2}x + \cos x - 1

であり、cos⁡x\cos xについての2次式として因数分解するとf′(x)=(2cos⁡x−1)(cos⁡x+1)f'(x) = (2\cos x - 1)(\cos x + 1)である。

0≤x≤2π0 \le x \le 2\piでf′(x)=0f'(x) = 0となるのは、cos⁡x=12\cos x = \dfrac12すなわちx=π3, 5π3x = \dfrac{\pi}{3},\ \dfrac{5\pi}{3}の場合と、cos⁡x=−1\cos x = -1すなわちx=πx = \piの場合である。すべてのxxについてcos⁡x+1≥0\cos x + 1 \ge 0であり、等号が成り立つのはx=πx = \piだけであるから、x≠πx \ne \piではf′(x)f'(x)の符号は2cos⁡x−12\cos x - 1の符号と一致する。増減は次のようになる。

xx 00 ⋯\cdots π3\dfrac{\pi}{3} ⋯\cdots π\pi ⋯\cdots 5π3\dfrac{5\pi}{3} ⋯\cdots 2π2\pi
f′(x)f'(x) ++ 00 −- 00 −- 00 ++
f(x)f(x) 00 増加 334\dfrac{3\sqrt3}{4} 減少 00 減少 −334-\dfrac{3\sqrt3}{4} 増加 00

x=πx = \piではf′(π)=0f'(\pi) = 0であるが、その前後でf′f'の符号は負のまま変わらない。したがってx=πx = \piは極値をとる点ではない。極大値はx=π3x = \dfrac{\pi}{3}における334\dfrac{3\sqrt3}{4}、極小値はx=5π3x = \dfrac{5\pi}{3}における−334-\dfrac{3\sqrt3}{4}である。

5 演習

  1. 商の微分法を用いて(tan⁡x)′=1/cos⁡2x(\tan x)'=1/\cos^2xを導き、定義域を明記しなさい。
  2. 合成関数の微分法を用いて(sin⁡3x)′(\sin 3x)'を求め、係数33が現れる理由を説明しなさい。

証明 (演習の要点). 1 ではtan⁡x=sin⁡x/cos⁡x\tan x=\sin x/\cos xとして商の微分法を適用し、sin⁡2x+cos⁡2x=1\sin^2x+\cos^2x=1を用いる。定義域はx≠π/2+nπx\ne\pi/2+n\piです。2 では外側を正弦、内側を3x3xとして、cos⁡3x⋅3=3cos⁡3x\cos3x\cdot3=3\cos3xを得る。▨

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