1 y=sinxとy=cosx
定理 1.1.sinxとcosxの定義域はR、値域は[−1,1]である。さらに、すべての実数xについて
sin(−x)=−sinx,cos(−x)=cosx,sin(x+2π)=sinx,cos(x+2π)=cosxが成り立つ。したがって、正弦は奇関数、余弦は偶関数であり、いずれの基本周期も2πである。
証明. 実数xに対応する単位円上の点(cosx,sinx)を固定する。実数xが動くとこの点は単位円全体を動くので、二つの座標がとる値の範囲はいずれも[−1,1]である。また、逆向きに角xだけ回転した点は(cosx,−sinx)であるから、sin(−x)=−sinxとcos(−x)=cosxが成り立つ。一周にあたる2πだけ回転しても点は変わらないため、2πは正弦と余弦の周期である。
正弦の正の周期をTとすると、sinT=sin0=0であるからT=nπを満たす正の整数nが存在する。nが奇数ならばsin(π/2+T)=−1となり、周期の条件sin(π/2+T)=sin(π/2)=1に反する。したがってnは偶数であり、正弦の最小の正の周期は2πである。余弦の正の周期をTとすると、cosT=cos0=1であるからT=2nπを満たす正の整数nが存在する。ゆえに余弦の最小の正の周期も2πである。▨
横軸は弧度法で測った角x、縦軸は関数の値yです。表示範囲は−6.5≤x≤6.5に限られており、その外側は描かれていません。範囲外の形は図から断定せず、周期性から判断します。
二つのグラフは、形が同じで位置だけが違います。実際、
cosx=sin(x+2π)
なので、y=cosxはy=sinxをx方向に−2πだけ平行移動したものです。したがって、両者のグラフの形は共通です。
2 y=tanx
定理 2.1.tanx=cosxsinxの定義域は
R∖{2π+nπn∈Z}であり、値域はRである。正接は奇関数であり、基本周期はπである。直線x=2π+nπ(n∈Z)は垂直漸近線である。
証明.cosx=0を満たす実数xを固定し、tanx=sinx/cosxを用いる。分母が0になるのはx=π/2+nπ(n∈Z)のときであるから、定義域は主張の集合である。任意の実数yに対して、単位円上の点
(1+y21,1+y2y)に対応する角をxとすればtanx=yとなるので、値域はRである。sin(−x)=−sinxとcos(−x)=cosxからtan(−x)=−tanxが成り立つ。
角を半周動かすと正弦と余弦の符号が同時に反転するから、定義域のすべてのxについてtan(x+π)=tanxが成り立つ。さらに、正接の正の周期をTとすると、tanT=tan0=0であるからT=nπを満たす正の整数nが存在する。したがって正接の最小の正の周期はπである。xがπ/2+nπに近づくとき、∣sinx∣は1に近づき、∣cosx∣は0に近づくので、∣tanx∣はいくらでも大きくなる。ゆえにx=π/2+nπは垂直漸近線である。▨
横軸は弧度法で測った角x、縦軸はtanxの値です。グラフが途切れて見える位置はx=π/2+nπであり、そこに点があるのではなく関数が定義されていない点です。縦の表示範囲を−4≤y≤4に切っているため、漸近線の近くの様子は図では途中までしか見えません。
3 周期とは何か
ここまで「2πごと」「πごと」と言ってきたものを、定義として書いておきます。
定義 3.1 (周期と基本周期). 定義域がDである関数fについて、正の数Tが周期であるとは、すべての実数xについて
x∈D⟺x+T∈D
が成り立ち、さらにx∈Dならばf(x+T)=f(x)が成り立つことである。定義域についての条件はD+T=Dとも書く。正の周期のうち最小のものが存在するとき、その周期を基本周期という。
sinとcosの基本周期は2π、tanの基本周期はπです。4πもsinの周期ではありますが、最小ではないので基本周期ではありません。単に「周期」と言うときは、ふつう基本周期を指します。
係数がつくと周期は変わります。
b=0のとき、y=sinbxの基本周期は∣b∣2πです。
証明.Tをy=sinbxの正の周期とすると、すべての実数uについてsin(u+bT)=sinuが成り立つ。したがって∣b∣Tは正弦の正の周期であり、∣b∣Tは2πの正の整数倍である。ゆえに正の周期の最小値はT=2π/∣b∣である。実際、このTに対してb(x+T)−bxは2πまたは−2πとなるので、sin(b(x+T))=sinbxがすべての実数xについて成り立つ。▨
振幅・周期・位相をまとめて扱う枠組みはグラフ変換の一般論で整理します。
4 グラフから何が読めるか
グラフの形が頭に入っていると、次のような判断が計算なしでできます。
- 方程式の解の個数。sinx=kの解は、y=sinxのグラフと直線y=kの交点です。任意の実数aに対して、半開区間[a,a+2π)では、∣k∣>1なら解はなく、∣k∣=1なら解は1個、∣k∣<1なら解は2個あります。
- 増減。y=sinxは[−2π,2π]で増加、[2π,23π]で減少します。この繰り返しです。
- 不等式の解の範囲。sinx>kを満たすxは、交点で区切られた区間として読めます。
三角関数を含む方程式・不等式を実際に解く手順は「三角関数を含む方程式・不等式」で扱います。
6 演習
- y=sinx、y=cosx、y=tanxについて、定義域、値域、基本周期、偶関数か奇関数かを表にまとめよ。
- y=cosxがy=sinxの平行移動であることを、加法定理を使わずに単位円上の点の座標から説明せよ。
- y=tan2xの基本周期と、定義されないxをすべて求めよ。
- 0≤x<2πの範囲でcosx=31の解が何個あるかを、グラフから答えよ。またtanx=100の解が何個あるかも答えよ。
証明 (演習の解答).
- sinxの定義域はR、値域は[−1,1]、基本周期は2πであり、奇関数である。cosxの定義域はR、値域は[−1,1]、基本周期は2πであり、偶関数である。tanxの定義域はR∖{π/2+nπ∣n∈Z}、値域はR、基本周期はπであり、奇関数である。
- 単位円上で角xに対応する点を反時計回りにπ/2だけ回転すると、もとの点のx座標が移動後の点のy座標になる。したがってcosx=sin(x+π/2)であり、y=cosxはy=sinxをx方向に−π/2だけ平行移動したグラフである。
- tan2xの基本周期Tは、2T=πを満たす最小の正の数であるからπ/2である。定義されない点は2x=π/2+nπ、すなわちx=π/4+nπ/2(n∈Z)である。これらの点を除いた定義域は、T=π/2の移動で保たれる。
- 0≤x<2πにおいて、直線y=1/3は余弦のグラフと2点で交わるので、cosx=1/3の解は2個である。同じ区間には正接の基本周期が2回含まれ、各周期で正接は実数の値を1回ずつとるので、tanx=100の解も2個である。
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閑話休題:「三角」関数がなぜ波になるのか 三角比はもともと直角三角形の辺の比として、測量や天文の計算のために作られたものでした。角を入れると比が返ってくる、という表であって、波とは何の関係もありません。
それが波の形になるのは、定義を単位円へ移したときです。円周上を一定の速さで回る点のy座標を、時間の関数として記録すると、それがそのままsinのグラフになります。円運動する点の一方の座標を時間の関数として取り出すと、周期的な振動が得られます。