1 一様最強力検定と単調尤度比
定義 1.1 (一様最強力検定). 統計モデル(Pθ)θ∈Θにおいて、Θ=Θ0⊔Θ1とし、0<α<1とする。水準αの検定φ∗が、任意の水準αの検定φと任意のθ∈Θ1に対して
Eθφ∗≥Eθφを満たすとき、φ∗を 一様最強力検定 (uniformly most powerful test)(UMP 検定)という。比較対象には、標本の任意の可測関数である無作為化検定を含める。
定義 1.2 (単調尤度比).Θ⊆Rとし、(Pθ)θ∈Θをシグマ有限測度νに関して有限値非負密度fθをもつ統計モデルとする。実数値統計量Tに対して、任意のθ1<θ2について
T(x)≤T(y)⟹fθ2(x)fθ1(y)≤fθ1(x)fθ2(y)がν⊗νに関してほとんど至る所で成り立つとき、この族はTに関して 単調尤度比 (monotone likelihood ratio) をもつという。両方の分母が正ならば、この不等式はfθ2/fθ1がTの順序に関して非減少であることを表す。積の形の定義は、密度が零となる点にも適用される。
補題 1.3.Θ⊆R上の支配された族(Pθ)が実数値統計量Tに関して単調尤度比をもつとする。任意の有界非減少 Borel 関数g:R→Rに対して、θ↦Eθg(T)は非減少である。
証明.θ1<θ2を取り、対応する密度をf1,f2と書く。各密度の積分が1であることと Fubini の定理§E9.11 定理 3.2により
Eθ2g(T)−Eθ1g(T)=21∬(g(T(y))−g(T(x)))(f2(y)f1(x)−f1(y)f2(x))dν(x)dν(y).被積分関数の絶対値は2sup∣g∣{f2(y)f1(x)+f1(y)f2(x)}以下であり、可積分である。T(x)<T(y)ならば二つの因子はともに非負であり、T(x)>T(y)ならばともに非正である。T(x)=T(y)ならば第一因子は零である。したがって積分は非負である。▨
定理 1.4 (Karlin–Rubin の定理).Θ⊆R上の支配された族(Pθ)が実数値統計量Tに関して単調尤度比をもつとする。θ0∈Θ、0<α<1とし、Θ∩(θ0,∞)=∅とする。あるc∈Rとγ∈[0,1]が存在して、検定
φ∗(x)=1{T(x)>c}+γ1{T(x)=c}はEθ0φ∗=αを満たす。この検定は
H0:θ≤θ0,H1:θ>θ0に対する水準αの UMP 検定である。また、帰無仮説をθ=θ0に限定しても、同じ片側対立に対する UMP 検定である。
証明.FをPθ0の下でのTの分布関数とし、c=inf{t:F(t)≥1−α}と置く。分布関数の右連続性と両端極限§E11.3 命題 2.2により、cは有限であり、
Pθ0(T>c)≤α≤Pθ0(T≥c)である。Pθ0(T=c)>0ならば
γ=Pθ0(T=c)α−Pθ0(T>c)とし、分母が零ならばγ=0とする。いずれの場合も帰無期待値はαである。t↦1{t>c}+γ1{t=c}は非減少なので、補題 1.3により、すべてのθ≤θ0でEθφ∗≤αである。
θ1>θ0を固定し、密度をf0,f1と書く。A={φ∗>0}、B={φ∗<1}と置くと、α>0とα<1によりPθ0(A)>0、Pθ0(B)>0である。x∈Bとy∈AならばT(x)≤T(y)なので、単調尤度比の不等式から
r(x)≤r(y),r=f0f1on {f0>0}がPθ0⊗Pθ0に関してほとんど至る所で成り立つ。したがって
esssupBr≤essinfArである。ここで本質的上限と下限はPθ0に関して取る。実際、左辺が右辺を超えれば、その間の実数qに対してB∩{r>q}とA∩{r<q}がともに正の確率をもち、積交差の不等式に反する。rはPθ0-ほとんど確実に有限であり、Aの確率は正なので、この二つの量の間に有限なk≥0を取ることができる。
x∈B∩{f0=0}に対しても、y∈A∩{f0>0}との積交差の不等式を用いると、f1(x)f0(y)≤0となる。
Fubini の定理とPθ0(A)>0により、f1=0がB∩{f0=0}上でν-ほとんど至る所で成り立つ。ゆえにf1>kf0ではφ∗=1、f1<kf0ではφ∗=0であり、§E14.15 定理 2.1の符号条件が成立する。同補題により、Eθ0φ≤αを満たす任意の検定φに対してEθ1φ∗≥Eθ1φである。検定φ∗はθ1に依存しないので、すべての片側対立について最強力である。複合帰無に対する水準αの検定もEθ0φ≤αを満たすため、結論を得る。▨
2 積分制約と不偏検定
定理 2.1 (一般化 Neyman–Pearson 補題).m∈N≥1とし、測度空間(X,A,ν)上の実可積分関数f0,f1,…,fmと実数k1,…,kmを取る。検定φ∗:X→[0,1]が、ほとんど至る所で
φ∗=1if f0>j=1∑mkjfj,φ∗=0if f0<j=1∑mkjfjを満たすとする。このとき、各jについて∫φfjdν=∫φ∗fjdνを満たす任意の検定φに対して
∫φf0dν≤∫φ∗f0dνである。さらに、kj≥0である添字では、対応する等式制約を∫φfjdν≤∫φ∗fjdνに置き換えても結論は成立する。
証明. 符号条件により
(φ∗−φ)(f0−j=1∑mkjfj)≥0がほとんど至る所で成り立つ。この積は∣f0∣+∑j∣kj∣∣fj∣に支配されるため可積分である。積分して項を移すと
∫(φ∗−φ)f0dν≥j=1∑mkj∫(φ∗−φ)fjdν≥0となる。最後の不等式は、等式制約の項が零であり、不等式制約の項の係数が非負であることによる。▨
定義 2.2 (不偏検定と類似検定). 統計モデル(Pθ)θ∈Θと分割Θ=Θ0⊔Θ1、0<α<1を取る。水準αの検定φがすべてのθ∈Θ1でEθφ≥αを満たすとき、φを水準αの 不偏検定 (unbiased test) という。任意の水準αの不偏検定と比較して、すべての対立母数で検出力が最大である不偏検定を、一様最強力不偏検定 (uniformly most powerful unbiased test)(UMPU 検定)という。また、すべてのθ∈Θ0でEθφ=αを満たす検定を、帰無族に対するサイズαの 類似検定 (similar test) という。
補題 2.3.fη=hexp{ηT−A(η)}を自然母数空間H上の一径数指数型分布族とする。任意の検定φの検出力βφ(η)=Eηφはint(H)で微分可能であり、
βφ′(η)=Eη(Tφ)−EηTEηφを満たす。J⊆H、η0∈int(J)、0<α<1とすると、H0:η=η0対H1:η∈J∖{η0}の任意の水準αの不偏検定は
Eη0φ=α,Eη0(Tφ)=αEη0Tを満たす。
証明.§E14.5 命題 5.7を有界関数φと定数関数1に適用する。非正規化積分の商を微分し、A′(η)=EηTを用いると、表示した微分公式を得る。必要な一次積率の絶対可積分性も同命題が与える。不偏検定については、η=η0でβφ(η)≥αである。η0はJの内点なので、連続性からβφ(η0)≥αとなり、水準条件から等号が成り立つ。ゆえにβφはη0で極小値を取り、βφ′(η0)=0である。微分公式を用いれば第二制約を得る。▨
3 両側検定の境界と一様最強力不偏性
補題 3.1.PをR上の確率測度とし、∫∣t∣dP(t)<∞、0<α<1とする。Pが一点に集中しないならば、有限なc1≤c2と Borel 関数a:R→[0,1]が存在して、
a(t)=1(c1<t<c2),a(t)=0(t<c1 または t>c2)かつ
∫adP=1−α,∫ta(t)dP(t)=(1−α)∫tdP(t)を満たす。端点でのaの値は[0,1]内で選ぶ。c1=c2の場合も許す。
証明.FをPの分布関数とし、0<v<1に対してQ(v)=inf{t:F(t)≥v}と置く。§E11.3 命題 2.2によりQ(v)は有限で非減少であり、Q(v)≤tとv≤F(t)は同値である。したがって一様分布に従うV∈(0,1)についてP(Q(V)≤t)=F(t)であり、§E11.3 定理 2.3によりQ(V)の分布はPである。特にQ∈L1(0,1)であり、∫01Q(v)dv=∫tdP(t)である。
m=1−αとし、0≤s≤αに対して
I(s)=∫ss+mQ(v)dvと置く。sj→sならば、積分区間の指示関数は端点以外で収束し、被積分関数は∣Q∣に支配される。優収束定理§E9.7 定理 3.2によりIは連続である。また
m∫01Q−I(0)=∫0m∫m1(Q(w)−Q(v))dwdv>0.非負の被積分関数の積分が零ならば、下側区間のほとんどすべての値と上側区間のほとんどすべての値が等しくなり、Qはほとんど至る所定数となる。これはPが一点に集中しないという仮定に反するので、不等号は厳密である。同じ理由で
I(α)−m∫01Q=∫0α∫α1(Q(w)−Q(v))dwdv>0.中間値の定理により、あるs∈(0,α)がI(s)=m∫01Qを満たす。
c1=Q(s)、c2=Q(s+m)と置く。s,s+m∈(0,1)なので、両端点は有限である。c1<c2のとき、開区間(c1,c2)でa=1、閉区間[c1,c2]の外でa=0とする。t=c1,c2に原子があれば
a(t)=P({t})∣(F(t−),F(t)]∩[s,s+m]∣とし、原子がなければa(t)=0とする。ここで∣⋅∣は区間の長さである。c1=c2=cのときはQ(v)=cがs<v<s+mで成り立つので、P({c})≥mである。この場合にはa(c)=m/P({c})、t=cでa(t)=0とする。
いずれの場合も、分位順位の区間(s,s+m)をQで写した測度はa(t)P(dt)である。実際、c1<t<c2を満たす値の逆像はこの順位区間に含まれ、t<c1またはt>c2の逆像は含まれない。原子{t}の逆像の長さはF(t)−F(t−)であり、区間との共通部分の長さが上の分子である。原子でない端点の逆像は長さ零である。よって全質量はm、一次積率はI(s)=m∫tdP(t)となる。▨
補題 3.2.PをR上の確率測度とし、∫∣t∣dP(t)<∞とする。c1≤c2を有限な実数とし、ψ∗:R→[0,1]はt<c1またはt>c2で1、c1<t<c2で0であるとする。δ=0かつ∫eδtdP(t)<∞ならば、
∫ψdP=∫ψ∗dP,∫tψ(t)dP(t)=∫tψ∗(t)dP(t)を満たす任意の Borel 関数ψ:R→[0,1]に対して
∫eδtψ(t)dP(t)≤∫eδtψ∗(t)dP(t)である。同じ結論は、任意の確率空間上の実可積分変数Tと検定φについて、ψ(T)をφに置き換えても成立する。
証明.c1<c2のとき、L(t)=a+btを(c1,eδc1)と(c2,eδc2)を通る直線とする。関数r(t)=eδtはr′′(t)=δ2eδt>0を満たす。そのためr−Lは[c1,c2]上で非正であり、区間の外では非負である。後者は、r′が増加するため区間の外の割線の傾きが[c1,c2]の割線の傾きを同じ向きに比較することから従う。c1=c2=cの場合は、接線L(t)=eδc{1+δ(t−c)}を取ればr−L≥0、r(c)−L(c)=0となる。いずれの場合も、定理 2.1を目的関数eδtと制約関数1,tに適用することができる。一般の確率空間上では目的関数をeδT、制約関数を1,Tとする。同じ符号不等式が各標本点で成立するので、同補題が結論を与える。▨
定理 3.3.fη=hexp{ηT−A(η)}を一径数指数型分布族とし、母数集合Jの内点η0と0<α<1を取る。H0:η=η0対H1:η∈J∖{η0}に対して、水準αの UMPU 検定が存在する。Tが帰無分布の下で一点に集中しないならば、有限なc1≤c2と境界での無作為化を選び、
φ∗(x)=1(T(x)<c1 または T(x)>c2),φ∗(x)=0(c1<T(x)<c2)かつ
Eη0φ∗=α,Eη0(Tφ∗)=αEη0Tを満たす検定を取ることができる。この形で二つの制約を満たすどの検定も、同じ二制約を満たす任意の検定と比較して、すべての対立母数で検出力が最大であり、UMPU である。Tが一点に集中する場合には、定数検定φ∗=αが UMPU である。
証明.§E14.5 命題 5.7によりEη0∣T∣<∞である。Tの帰無分布が一点に集中しない場合、補題 3.1の受容関数aに対してφ∗=1−a(T)と置くと、表示した形と二つの制約を得る。
任意のη∈J∖{η0}を取り、δ=η−η0と置く。密度比は
dPη0dPη=exp{δT−A(η)+A(η0)}であるから、Eη0eδT<∞である。二つの制約を満たす任意の検定φに補題 3.2を適用し、正の定数e−A(η)+A(η0)を掛けると
Eηφ∗≥Eηφを得る。定数検定φ=αも二つの制約を満たすので、Eηφ∗≥αである。したがってφ∗は不偏である。任意の不偏競合は補題 2.3により二つの制約を満たすため、φ∗は UMPU である。
T=t0がPη0-ほとんど確実に成り立つ場合、密度比は定数であり、その期待値が1であることから、すべてのη∈JでPη=Pη0となる。水準αの検定の検出力は全母数でα以下であるから、定数検定αが結論を満たす。▨
例 3.4.X∼Bin(2,p)、0<p<1とし、p=1/2対p=1/2を水準α=1/4で検定する。密度は(x2)exp{ηx−2log(1+eη)}、η=log(p/(1−p))∈Rである。帰無分布は0,1,2にそれぞれ確率1/4,1/2,1/4を与え、帰無平均は1である。
φ∗(0)=21,φ∗(1)=0,φ∗(2)=21とすると、E1/2φ∗=1/4、E1/2(Xφ∗)=1/4である。よって定理 3.3により UMPU である。検出力は
21{(1−p)2+p2}=41+(p−21)2となる。二つの端の原子での無作為化が、サイズと一次積率の両制約を同時に満たしている。
4 類似検定と Neyman 構造
定義 4.1 (Neyman 構造). 統計モデルの帰無族(Pθ)θ∈Θ0と、その族に対する十分統計量S、検定φ、0<α<1を取る。すべてのθ∈Θ0について
Eθ[φ∣S]=αPθ-ほとんど確実にが成り立つとき、φはSに関してサイズαの Neyman 構造 (Neyman structure) をもつという。
定理 4.2. 帰無族(Pθ)θ∈Θ0に対してSが十分かつ有界完備であるとする。0<α<1に対して、検定φがサイズαの類似検定であることと、Sに関してサイズαの Neyman 構造をもつことは同値である。
証明. 十分性により、すべての帰無母数に共通な、Sの終域で可測な関数gを取り、g(S)=Eθ[φ∣S]と書く。gを[0,1]へ切断しても各母数の条件付き期待値の版は変わらない。類似性を仮定すると、条件付き期待値の期待値保存により、すべてのθ∈Θ0でEθ[g(S)−α]=0である。g−αは有界なので、有界完備性からg(S)=αが各Pθ-ほとんど確実に成り立つ。逆に、この条件付き等式の期待値を取ればEθφ=αとなり、類似性を得る。▨
5 未知分散の正規平均
補題 5.1.n≥2、σ2>0とし、Y1,…,YnをN(0,σ2)からの独立同分布標本とする。
T=i=1∑nYi,U=i=1∑nYi2,W=nUTと置き、U=0ではW=0と定める。このときU∼Gamma(n/2,1/(2σ2))であり、WとUは独立である。Wの密度は
q(w)=B(1/2,(n−1)/2)(1−w2)(n−3)/21(−1,1)(w)である。特にこの密度は母分散に依存せず、原点について対称で、(−1,1)上で正である。
証明.Yˉ=T/nとし、Z=nYˉ/σ、B=∑i(Yi−Yˉ)2/σ2と置く。§E14.3 定理 4.1により、Z∼N(0,1)とB∼χn−12は独立である。標準正規密度の対称性から、任意の Borel 集合D⊆(0,∞)について
P(Z>0,Z2∈D)=P(Z<0,Z2∈D)=21P(Z2∈D)となる。したがってε=signZはZ2と独立であり、ε=1,−1を等確率で取る。ZとBの独立性も用いると、εは(Z2,B)と独立である。
§E14.3 補題 2.1と§E14.3 定理 1.5により、
R=Z2+BZ2∼Beta(21,2n−1),V=Z2+B∼Gamma(2n,21)は独立である。さらにεは(R,V)と独立であるから、W=εRはU=σ2Vと独立である。
Gamma 密度に変数変換u=σ2vを施すと、Uの表示した分布を得る。
Beta 密度とr=w2、dr=2∣w∣dwを用い、各符号の確率1/2を掛けると、Wの密度は表示したqになる。▨
補題 5.2.n≥2、μ0∈R、0<α<1とし、X1,…,XnはN(μ,σ2)からの独立同分布標本で、(μ,σ2)∈R×(0,∞)とする。
T=i∑(Xi−μ0),U=i∑(Xi−μ0)2と置く。H0:μ=μ0対H1:μ=μ0の任意の水準αの不偏検定φは、すべてのσ2>0に対して
Eμ0,σ2[φ∣U]=α,Eμ0,σ2[Tφ∣U]=0をほとんど確実に満たす。
証明.Yi=Xi−μ0とすると、標本の密度は
fη,τ(y)=exp{ηT+τU−A(η,τ)},η=σ2μ−μ0,τ=−2σ21<0と書くことができる。平方完成による正規化定数は
A(η,τ)=2nlog−τπ−4τnη2であり、任意のη∈Rとτ<0で有限である。τを固定すると一径数指数型分布族であり、帰無母数はη=0である。補題 2.3により、不偏検定は全τ<0で
E0,τφ=α,E0,τ(Tφ)=0を満たす。第二式ではE0,τT=0を用いた。
帰無密度はexp{τU−A(0,τ)}であるから、因子分解定理§E14.5 定理 3.1によりUは帰無族に対して十分である。補題 5.1により、その分布族は固定 shapen/2と全正 rate をもつ Gamma 族である。この Gamma 族へ、§E14.10 定理 4.1を標本サイズ1、t(u)=u、h(u)=un/2−11(0,∞)(u)、J=(−∞,0)として適用すると、Uの完備性を得る。特に有界完備であるため、類似性と定理 4.2から第一の条件付き等式を得る。
また∣Tφ∣≤∣T∣≤nUであり、§E14.3 命題 1.3により、これはすべての帰無母数で可積分である。§E14.5 命題 3.3により、母数によらない有限値可測関数bを取り、b(U)=E0,τ[Tφ∣U]と書くことができる。条件付き期待値の絶対値評価からE0,τ∣b(U)∣≤E0,τ∣Tφ∣<∞であり、期待値保存からE0,τb(U)=0である。
Gamma 族の完備性をbに適用すると、第二の条件付き等式を得る。▨
定理 5.3.n≥2、0<α<1、μ0∈Rとし、X1,…,XnをN(μ,σ2)からの独立同分布標本とする。母分散σ2>0は未知である。
Xˉ=n1i∑Xi,S2=n−11i∑(Xi−Xˉ)2とし、qtn−1(1−α/2)を自由度n−1のt分布の1−α/2分位点とする。検定
φ∗(X)=1{Sn(Xˉ−μ0)>qtn−1(1−α/2)}は、H0:μ=μ0対H1:μ=μ0に対する水準αの UMPU 検定である。S=0となる標本上ではφ∗=0と定める。
証明.Yi=Xi−μ0、T=∑iYi、U=∑iYi2とし、自然母数(η,τ)∈R×(−∞,0)を補題 5.2の証明のように取る。この正規族の密度表示と因子分解定理§E14.5 定理 3.1により、(T,U)は十分統計量である。任意の検定φは有界であるから、§E14.5 命題 3.3により、母数によらない Borel 関数gで
g(T,U)=Eη,τ[φ∣T,U],0≤g≤1がすべての(η,τ)についてほとんど確実に成り立つように取ることができる。従ってEη,τg(T,U)=Eη,τφである。以下、基準測度をQ=P0,−1/2とする。
補題 5.1の密度をqと書き、u>0に対して
qu(t)=nu1q(nut)と置く。帰無ではW=T/nUとUが独立なので、qu(t)dtはTのU=uにおける条件付き分布を与える。すなわち、任意の非負 Borel 関数bに対して、積分公式
EQb(T,U)=∫0∞∫Rb(t,u)qu(t)dtQU(du)が成立する。独立な(W,U)に Tonelli の定理§E9.11 定理 2.3を適用し、内側でt=nuwと変数変換すればこの等式を得る。特にquは(−nu,nu)に支持をもち、原点について対称である。
Mu(η)=∫eηtqu(t)dtと置くと、0<Mu(η)<∞である。測度変更の補題§E14.5 補題 2.2により、対立母数を含む任意の(η,τ)で
Eη,τ[g(T,U)∣U=u]=Mu(η)∫g(t,u)eηtqu(t)dtがPη,τのUの分布についてほとんど至る所で成り立つ。実際、条件付き分子と分母に共通な正因子exp{(τ+1/2)u−A(η,τ)+A(0,−1/2)}が相殺される。分子・分母の可測性は上の反復積分公式から従い、分母は正かつ有限である。したがって条件付き族は、各u>0でqu(t)dtを基準とする自然母数空間Rの指数型分布族である。
密度qの対称性と正値性から、∫∣w∣>kq(w)dw=αを満たすk∈(0,1)が一意に存在する。ψu∗(t)=1{∣t∣>knu}と置くと
∫ψu∗qu=α,∫tψu∗(t)qu(t)dt=0=α∫tqu(t)dtである。ゆえに定理 3.3により、この条件付き族においてψu∗は不偏であり、各η=0での検出力は、二つの制約を満たすすべての関数の検出力以上である。
競合φを水準αの不偏検定とする。補題 5.2と塔の性質により、帰無基準測度の下で
∫g(t,u)qu(t)dt=α,∫tg(t,u)qu(t)dt=0がQU-ほとんど至る所で成り立つ。第二式には、Tφの可積分性とTが(T,U)可測であることを用いる。全Pη,τはQと同値なので、そのUの分布もQUと同値である。したがって各対立母数で、ほとんどすべてのuについて
Eη,τ[ψU∗(T)∣U=u]≥Eη,τ[φ∣U=u]であり、Uについて積分すれば無条件の検出力の比較を得る。また条件付き族の不偏性から、ψU∗(T)自身の対立での検出力はα以上であり、帰無でのサイズはαである。
最後に、U>0かつS>0となる確率1の集合上で
Sn(Xˉ−μ0)=1−W2n−1W,W=nUTである。右辺の絶対値は∣W∣∈[0,1)に関して狭義増加である。§E14.3 定理 4.3と§E14.3 命題 2.4により、その帰無での両側確率αの閾値はqtn−1(1−α/2)である。従ってψU∗(T)は、零集合上を除いて主張のφ∗に等しく、UMPU である。▨
6 検定と最精密な信頼集合
定義 6.1 (信頼集合と一様最精密性). 統計モデル(Pθ)θ∈Θ、0<α<1と、各ϑ∈Θについて可測な関数cϑ:X→[0,1]を取る。標本と独立なV∼Unif(0,1)を用いて
C(X,V)={ϑ∈Θ:V≤cϑ(X)}と定める。すべてのθ∈Θで
Pθ(θ∈C)=Eθcθ≥1−αならば、Cを信頼水準1−αの 信頼集合 (confidence set) という。ここで確率は独立な無作為化変数も含めて取る。
各候補母数ϑに対して集合Aϑ⊆Θ∖{ϑ}を指定する。同じ信頼水準をもつ任意の信頼集合Dと、任意のθ∈Aϑに対して
Pθ(ϑ∈C)≤Pθ(ϑ∈D)が成り立つとき、Cはこの比較範囲で 一様最精密 (uniformly most accurate) であるという。特にAϑ=Θ∖{ϑ}ならば、すべての誤った候補母数の包含確率を同時に最小にする。
定理 6.2. 統計モデル(Pθ)θ∈Θと0<α<1を取り、各ϑ∈Θに対してAϑ⊆Θ∖{ϑ}を指定する。各検定φϑが、単純帰無θ=ϑと対立θ∈Aϑに対する水準αの UMP 検定ならば、cϑ=1−φϑによる信頼集合は、信頼水準1−αをもち、指定した比較範囲で一様最精密である。
証明.cϑ=1−φϑと置くと、Eϑcϑ=1−Eϑφϑ≥1−αなので、信頼水準の条件が成り立つ。競合する信頼集合Dの包含関数をdϑとすると、1−dϑは帰無θ=ϑの下で期待値がα以下の検定である。
UMP 性により、θ∈Aϑに対して
Eθφϑ≥Eθ(1−dϑ)となる。両辺を1から引けばPθ(ϑ∈C)≤Pθ(ϑ∈D)を得る。▨
例 6.3.n≥2、σ2>0とし、X1,…,XnをN(μ,σ2)からの独立同分布標本とする。ここではσ2は既知とする。Φを標準正規分布関数とする。μ1<μ2に対する標本密度の比は
exp{σ2μ2−μ1i∑Xi−2σ2n(μ22−μ12)}であり、標本和に関して増加する。§E14.3 定理 4.1の標本平均の分布と定理 1.4により、各ϑ∈Rに対して
φϑ(X)=1{Xˉ>ϑ+Φ−1(1−α)σ/n}はμ=ϑ対μ>ϑの UMP 検定である。これらの検定を反転すると、定理 6.2により
C(X)=[Xˉ−Φ−1(1−α)nσ,∞)は信頼水準1−αをもち、真の母平均μより小さい任意の候補ϑ<μについて、その候補を含む確率を同時に最小にする。比較対象は、同じ信頼水準をもつすべての信頼集合である。