§E14.8Bayes 推測

最終更新

コインを十回投げて七回表が出たとき、標本比率は表の出る確率の推定値を与える。しかし、一つの推定値だけでは、未知の確率にどの程度の不確実性が残るか、次の一回で表が出る確率をどのように評価するかを同時に表すことができない。Bayes 推測では、観測前の不確実性を事前分布で表し、観測によって得た尤度と組み合わせて事後分布へ更新する。

事後分布を中心に推定と予測を同じ確率モデルの中で扱う方法は、不確実性を伴う統計的推測の最も基本的な枠組みの一つである。本記事では、Bayes 推測の基本的な考え方と代表的な応用について解説する。

1 事前分布と事後分布

定義 1.1.(Θ,T,ν)(\Theta,\mathcal T,\nu)と(X,A,μ)(\mathcal X,\mathcal A,\mu)をシグマ有限測度空間とする。関数f:X×Θ→[0,∞)f:\mathcal X\times\Theta\to[0,\infty)は共同可測であり、各θ∈Θ\theta\in\Thetaについて

∫Xf(x∣θ) μ(dx)=1\int_{\mathcal X}f(x\mid\theta)\,\mu(dx)=1

を満たすとする。また、π:Θ→[0,∞)\pi:\Theta\to[0,\infty)は可測であり、∫Θπ dν=1\int_\Theta\pi\,d\nu=1を満たすとする。

確率測度Π(dθ)=π(θ)ν(dθ)\Pi(d\theta)=\pi(\theta)\nu(d\theta)を母数θ\thetaの 事前分布 (prior distribution) という。θ\thetaを与えたときの観測XXの条件付き密度をf(x∣θ)f(x\mid\theta)とする。観測値xxを固定した関数θ↦f(x∣θ)\theta\mapsto f(x\mid\theta)は§E14.4 定義 1.1の尤度である。X=xX=xを観測した後のθ\thetaの条件付き分布を 事後分布 (posterior distribution) という。

さらに、将来の観測X~\widetilde Xがθ\thetaを与えたもとでXXと条件付き独立であるとする。X=xX=xを観測した後のX~\widetilde Xの条件付き分布を 事後予測分布 (posterior predictive distribution) という。

この定式化は、μ\muとν\nuに計数測度を選べば離散モデルを含み、Lebesgue 測度を選べば通常の連続密度モデルを含む。事前分布を確率測度と仮定することにより、以下では improper prior を扱わない。

定理 1.2.定義 1.1の仮定のもとで

m(x)=∫Θf(x∣θ)π(θ) ν(dθ)m(x)=\int_\Theta f(x\mid\theta)\pi(\theta)\,\nu(d\theta)

とおく。このときmmはXXの周辺密度である。0<m(x)<∞0<m(x)<\inftyを満たすxxに対して、事後分布はν\nuに関する密度

π(θ∣x)=f(x∣θ)π(θ)m(x)\pi(\theta\mid x) =\frac{f(x\mid\theta)\pi(\theta)}{m(x)}

をもつ。m(x)=0m(x)=0またはm(x)=∞m(x)=\inftyであるxxではπ(θ∣x)=π(θ)\pi(\theta\mid x)=\pi(\theta)と補完すると、x↦π( ⋅∣x)νx\mapsto\pi(\,\cdot\mid x)\nuはすべてのxxで定義された確率核となる。

さらに、任意のB∈AB\in\mathcal AとC∈TC\in\mathcal Tに対して

∫B{∫Cπ(θ∣x) ν(dθ)}m(x) μ(dx)=∫C{∫Bf(x∣θ) μ(dx)}π(θ) ν(dθ)\int_B\left\{\int_C\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)\right\}m(x)\,\mu(dx) =\int_C\left\{\int_B f(x\mid\theta)\,\mu(dx)\right\}\pi(\theta)\,\nu(d\theta)

が成り立つ。したがって、表示した確率核は事前予測分布に関してほとんどすべてのxxでθ\thetaの条件付き分布を与える。

証明. 共同可測な非負関数f(x∣θ)π(θ)f(x\mid\theta)\pi(\theta)に Tonelli の定理を適用すると、mmは可測であり、

∫Xm(x) μ(dx)=∫Θ{∫Xf(x∣θ) μ(dx)}π(θ) ν(dθ)=1\int_{\mathcal X}m(x)\,\mu(dx) =\int_\Theta\left\{\int_{\mathcal X}f(x\mid\theta)\,\mu(dx)\right\}\pi(\theta)\,\nu(d\theta) =1

を満たす。したがってmmは周辺密度であり、m(x)=∞m(x)=\inftyとなる集合はμ\mu零集合である。また、m(x)=0m(x)=0またはm(x)=∞m(x)=\inftyとなる集合の事前予測確率は零である。

0<m(x)<∞0<m(x)<\inftyならば、π(θ∣x)\pi(\theta\mid x)は非負可測であり、そのν\nu積分は11である。例外集合では proper な事前密度π\piで補完したので、すべてのxxについて確率密度を得る。共同可測性から、この補完後の関数(x,θ)↦π(θ∣x)(x,\theta)\mapsto\pi(\theta\mid x)も共同可測である。

最後に、事前予測測度で零である例外集合を除けば

π(θ∣x)m(x)=f(x∣θ)π(θ)\pi(\theta\mid x)m(x)=f(x\mid\theta)\pi(\theta)

である。両辺をB×CB\times C上で積分し、Tonelli の定理を適用すると、主張した条件付き積分等式を得る。▨

観測値xxを固定すると、分母m(x)m(x)はθ\thetaに依存しない。したがって事後密度を母数の関数として比較するときには

π(θ∣x)∝f(x∣θ)π(θ)\pi(\theta\mid x)\propto f(x\mid\theta)\pi(\theta)

と書くことができる。この比例式を確率密度として用いるためには、分母が正かつ有限であることを別に確認する必要がある。

2 事後予測分布

命題 2.1.定義 1.1の仮定に加え、(X~,A~,μ~)(\widetilde{\mathcal X},\widetilde{\mathcal A},\widetilde\mu)をシグマ有限測度空間とし、将来値X~\widetilde Xのθ\thetaを与えた条件付き密度f~(x~∣θ)\widetilde f(\widetilde x\mid\theta)は共同可測であるとする。XXとX~\widetilde Xがθ\thetaを与えたもとで条件付き独立であるならば、X=xX=xを観測した後のX~\widetilde Xの事後予測密度は、事前予測に関してほとんどすべてのxxについて

p(x~∣x)=∫Θf~(x~∣θ)π(θ∣x) ν(dθ)p(\widetilde x\mid x) =\int_\Theta \widetilde f(\widetilde x\mid\theta)\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)

である。

証明. 右辺は非負かつx~\widetilde xの可測関数である。Tonelli の定理により

∫X~p(x~∣x) μ~(dx~)=∫Θ{∫X~f~(x~∣θ) μ~(dx~)}π(θ∣x) ν(dθ)=1\int_{\widetilde{\mathcal X}}p(\widetilde x\mid x)\,\widetilde\mu(d\widetilde x) =\int_\Theta\left\{\int_{\widetilde{\mathcal X}}\widetilde f(\widetilde x\mid\theta)\,\widetilde\mu(d\widetilde x)\right\}\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta) =1

である。条件付き独立性により、θ\thetaを与えた(X,X~)(X,\widetilde X)の同時密度はf(x∣θ)f~(x~∣θ)f(x\mid\theta)\widetilde f(\widetilde x\mid\theta)である。0<m(x)<∞0<m(x)<\inftyならば定理 1.2の事後密度の式から

m(x)p(x~∣x)=∫Θf(x∣θ)f~(x~∣θ)π(θ) ν(dθ)m(x)p(\widetilde x\mid x) =\int_\Theta f(x\mid\theta)\widetilde f(\widetilde x\mid\theta)\pi(\theta)\,\nu(d\theta)

を得る。両辺を観測値と将来値の可測集合上で積分し、Tonelli の定理を適用すると、右辺は(X,X~)(X,\widetilde X)の同時確率を与える。例外集合の事前予測確率は零であるから、表示した混合密度は事前予測に関してほとんどすべてのxxで条件付き密度を与える。▨

3 事後損失と Bayes 推定量

定義 3.1.定義 1.1の統計モデルを考え、(A,G)(\mathsf A,\mathcal G)を可測な行動空間、τ:Θ→A\tau:\Theta\to\mathsf Aを可測な推定対象とする。L:Θ×A→[0,∞]L:\Theta\times\mathsf A\to[0,\infty]を共同可測な損失関数とし、可測な推定量δ:X→A\delta:\mathcal X\to\mathsf Aの固定母数リスクを§E14.6 定義 1.2の意味でRθ(δ)R_\theta(\delta)とする。

決定則δ\deltaの Bayes 平均リスク (Bayes risk) を

rΠ(δ)=∫ΘRθ(δ) Π(dθ)r_\Pi(\delta)=\int_\Theta R_\theta(\delta)\,\Pi(d\theta)

で定める。すべての可測な決定則の中で Bayes 平均リスクを最小にする決定則を Bayes 推定量 (Bayes estimator) という。また、観測値xxにおける 事後平均損失 (posterior expected loss) を

rx(a)=∫ΘL(θ,a)π(θ∣x) ν(dθ)r_x(a)=\int_\Theta L(\theta,a)\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)

で定める。

定理 3.2.定義 3.1の仮定のもとで、任意の可測な決定則δ\deltaに対して

rΠ(δ)=∫Xrx(δ(x))m(x) μ(dx)r_\Pi(\delta)=\int_{\mathcal X}r_x(\delta(x))m(x)\,\mu(dx)

が成り立つ。可測な決定則δ∗\delta^*が存在し、事前予測に関してほとんどすべてのxxで

rx(δ∗(x))≤rx(a)(a∈A)r_x(\delta^*(x))\leq r_x(a)\qquad(a\in\mathsf A)

を満たすならば、δ∗\delta^*は Bayes 推定量である。

証明. 損失、密度および決定則の共同可測性により、以下の被積分関数は非負可測である。Tonelli の定理と定理 1.2を順に用いると

rΠ(δ)=∫Θ∫XL(θ,δ(x))f(x∣θ) μ(dx)π(θ) ν(dθ)=∫X∫ΘL(θ,δ(x))π(θ∣x) ν(dθ)m(x) μ(dx)=∫Xrx(δ(x))m(x) μ(dx)\begin{aligned} r_\Pi(\delta) &=\int_\Theta\int_{\mathcal X}L(\theta,\delta(x))f(x\mid\theta)\,\mu(dx)\pi(\theta)\,\nu(d\theta)\\ &=\int_{\mathcal X}\int_\Theta L(\theta,\delta(x))\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)m(x)\,\mu(dx)\\ &=\int_{\mathcal X}r_x(\delta(x))m(x)\,\mu(dx) \end{aligned}

を得る。点ごとの最小性から、任意の可測な決定則δ\deltaに対してrx(δ∗(x))≤rx(δ(x))r_x(\delta^*(x))\leq r_x(\delta(x))が事前予測に関してほとんど確実に成り立つ。この不等式を積分するとrΠ(δ∗)≤rΠ(δ)r_\Pi(\delta^*)\leq r_\Pi(\delta)を得る。▨

定理は、点ごとの最小化解から可測な決定則を選ぶことができるとは主張していない。Bayes 推定量をこの方法で構成するときには、最小化解の存在と選択の可測性を確認する必要がある。

命題 3.3.Θ⊆R\Theta\subseteq\Rとし、行動空間をR\R、損失をL(θ,a)=(θ−a)2L(\theta,a)=(\theta-a)^2とする。固定した観測値xxにおいて事後二次積率が有限であるならば、事後平均

μx=∫Θθπ(θ∣x) ν(dθ)\mu_x=\int_\Theta\theta\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)

は事後平均損失を一意に最小にし、任意のa∈Ra\in\Rに対して

rx(a)=rx(μx)+(a−μx)2r_x(a)=r_x(\mu_x)+(a-\mu_x)^2

が成り立つ。すべてのxxで事後二次積率が有限であるならば、x↦μxx\mapsto\mu_xは可測であり、定理 3.2によって Bayes 推定量を与える。

証明. 事後二次積率の有限性から事後平均も有限である。恒等式

θ−a=(θ−μx)+(μx−a)\theta-a=(\theta-\mu_x)+(\mu_x-a)

を二乗して事後分布について積分すると、交差項は

2(μx−a)∫Θ(θ−μx)π(θ∣x) ν(dθ)=02(\mu_x-a)\int_\Theta(\theta-\mu_x)\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta)=0

となる。したがって表示した分解を得る。(a−μx)2(a-\mu_x)^2はa=μxa=\mu_xのとき、かつそのときに限って零であるため、最小点は一意である。最後に、可測な確率核に対する非負関数の積分は可測であり、正負部分を用いれば有限な事後平均x↦μxx\mapsto\mu_xも可測である。▨

例 3.4 (同じ事後分布に対する損失の比較). 未知の状態をθ∈{0,1}\theta\in\{0,1\}、観測後に選ぶ行動をa∈{0,1}a\in\{0,1\}とし、ある観測値xxに対して

P(θ=1∣x)=35,P(θ=0∣x)=25P(\theta=1\mid x)=\frac35, \qquad P(\theta=0\mid x)=\frac25

を得たとする。将来の観測値を予測する問題ではなく、行動aaを未知の状態θ\thetaと比較する決定問題を考える。

誤った行動の損失をともに11とする、すなわちL(0,1)=L(1,0)=1L(0,1)=L(1,0)=1、L(0,0)=L(1,1)=0L(0,0)=L(1,1)=0とすると、事後平均損失は

rx(0)=35,rx(1)=25r_x(0)=\frac35, \qquad r_x(1)=\frac25

であるから、行動a=1a=1を選ぶ。一方、偽陽性に相当するL(0,1)L(0,1)を22、偽陰性に相当するL(1,0)L(1,0)を11とすると、

rx(0)=35,rx(1)=2⋅25=45r_x(0)=\frac35, \qquad r_x(1)=2\cdot\frac25=\frac45

となるから、同じ事後分布に対して行動a=0a=0を選ぶ。Bayes 決定は事後分布だけでなく、各行動の損失にも依存する。

4 共役事前分布

定義 4.1. 尤度の族に対し、事前分布の族P\mathcal Pが 共役 (conjugate prior) であるとは、Π∈P\Pi\in\mathcal Pならば、0<m(x)<∞0<m(x)<\inftyを満たす各観測値xxに対する事後分布も同じ族P\mathcal Pに属することをいう。

命題 4.2. 次の三つの事前分布族は共役であり、事後分布は以下のように更新される。

  1. n∈N≥0n\in\N、X∣θ∼Bin(n,θ)X\mid\theta\sim\mathrm{Bin}(n,\theta)、θ∼Beta⁡(a,b)\theta\sim\operatorname{Beta}(a,b)、a,b>0a,b>0ならば、x∈{0,…,n}x\in\{0,\ldots,n\}のもとで θ∣x∼Beta⁡(a+x,b+n−x),E[θ∣x]=a+xa+b+n\theta\mid x\sim\operatorname{Beta}(a+x,b+n-x), \qquad E[\theta\mid x]=\frac{a+x}{a+b+n} である。
  2. n∈N≥1n\in\NN、X1,…,Xn∣μX_1,\ldots,X_n\mid\muが独立にN(μ,σ2)N(\mu,\sigma^2)に従い、σ2>0\sigma^2>0が既知であるとする。μ∼N(μ0,τ2)\mu\sim N(\mu_0,\tau^2)、τ2>0\tau^2>0ならば、 μ∣x∼N(μn,vn),vn=(1τ2+nσ2)−1,μn=vn(μ0τ2+nx‾σ2).\mu\mid x\sim N(\mu_n,v_n),\qquad v_n=\left(\frac1{\tau^2}+\frac n{\sigma^2}\right)^{-1},\qquad \mu_n=v_n\left(\frac{\mu_0}{\tau^2}+\frac{n\overline x}{\sigma^2}\right).
  3. n∈N≥1n\in\NN、X1,…,Xn∣λX_1,\ldots,X_n\mid\lambdaが独立にPois⁡(λ)\operatorname{Pois}(\lambda)に従い、λ∼Gamma⁡(a,b)\lambda\sim\operatorname{Gamma}(a,b)、a,b>0a,b>0とする。Gamma 分布の第二母数を rate とすると、 λ∣x∼Gamma⁡(a+∑i=1nxi,b+n).\lambda\mid x\sim\operatorname{Gamma}\left(a+\sum_{i=1}^nx_i,b+n\right).

証明.(1)を示す。x∈{0,…,n}x\in\{0,\ldots,n\}における二項尤度と Beta 事前密度の積は

(nx)θx(1−θ)n−xθa−1(1−θ)b−1B(a,b)=(nx)B(a,b)θa+x−1(1−θ)b+n−x−1\binom nx\theta^x(1-\theta)^{n-x}\frac{\theta^{a-1}(1-\theta)^{b-1}}{B(a,b)} =\frac{\binom nx}{B(a,b)}\theta^{a+x-1}(1-\theta)^{b+n-x-1}

である。a+x>0a+x>0かつb+n−x>0b+n-x>0であり、§E14.3 定義 1.2によって正規化するとBeta⁡(a+x,b+n−x)\operatorname{Beta}(a+x,b+n-x)の密度を得る。さらに、§E14.3 命題 1.4をq=1q=1として適用すると、事後平均は(a+x)/(a+b+n)(a+x)/(a+b+n)となる。

(2)を示す。μ\muに依存しない正因子を除く事後密度の核の対数は

−12σ2∑i=1n(xi−μ)2−(μ−μ0)22τ2.-\frac1{2\sigma^2}\sum_{i=1}^n(x_i-\mu)^2-\frac{(\mu-\mu_0)^2}{2\tau^2}.

∑i(xi−μ)2=∑i(xi−x‾)2+n(μ−x‾)2\sum_i(x_i-\mu)^2=\sum_i(x_i-\overline x)^2+n(\mu-\overline x)^2を代入し、μ\muについて平方完成すると、この式はμ\muに依存しない項を除いて

−12vn(μ−μn)2-\frac1{2v_n}(\mu-\mu_n)^2

となる。vn>0v_n>0であるから正規化することができ、表示した正規事後分布を得る。

(3)を示す。s=∑i=1nxis=\sum_{i=1}^nx_iとおく。Poisson 尤度と shapeaa、ratebbの Gamma 事前密度の積は、λ\lambdaに依存しない正因子を除いて

e−nλλsλa−1e−bλ=λa+s−1e−(b+n)λe^{-n\lambda}\lambda^s\lambda^{a-1}e^{-b\lambda} =\lambda^{a+s-1}e^{-(b+n)\lambda}

である。a+s>0a+s>0かつb+n>0b+n>0であり、§E14.3 定義 1.1によって正規化するとGamma⁡(a+s,b+n)\operatorname{Gamma}(a+s,b+n)の密度を得る。▨

5 信用集合と信用区間

定義 5.1.0<α<10<\alpha<1とする。観測値xxを固定し、C∈TC\in\mathcal Tが

P(θ∈C∣x)=∫Cπ(θ∣x) ν(dθ)≥1−αP(\theta\in C\mid x) =\int_C\pi(\theta\mid x)\,\nu(d\theta) \geq1-\alpha

を満たすとき、CCを 水準1−α1-\alphaの信用集合 (credible set at level 1-alpha) という。Θ⊆R\Theta\subseteq\Rであり、CCが区間であるとき、CCを 水準1−α1-\alphaの信用区間 (credible interval at level 1-alpha) という。

実数値の連続な事後分布では、下側確率と上側確率をそれぞれα/2\alpha/2とする等裾信用区間を選ぶことができる。事後密度の高い点を優先して集める最高事後密度集合も選択肢になるが、密度の平坦な部分や複数の峰がある場合には、最高事後密度集合が一意に定まるとは限らず、区間になるとも限らない。

信用集合の確率は、観測後の事後分布において計算する。母数を固定して標本を反復したときの被覆確率は別の量であり、信用集合の定義だけから頻度論的な被覆保証は従わない。

例 5.2 (信用区間の被覆確率が零になる場合).θ∼Beta⁡(1,1)\theta\sim\operatorname{Beta}(1,1)とし、θ\thetaのもとで一回の観測X∼Bernoulli⁡(θ)X\sim\operatorname{Bernoulli}(\theta)を行う。この分布はBin⁡(1,θ)\operatorname{Bin}(1,\theta)であるから、命題 4.2により、X=0X=0のときの事後分布はBeta⁡(1,2)\operatorname{Beta}(1,2)である。その累積分布関数は1−(1−t)21-(1-t)^2であるため、等裾95%95\%信用区間は

C0=[1−0.975,1−0.025]≈[0.012579,0.841886]C_0=[1-\sqrt{0.975},1-\sqrt{0.025}] \approx[0.012579,0.841886]

となる。X=1X=1のときの事後分布はBeta⁡(2,1)\operatorname{Beta}(2,1)であり、その累積分布関数はt2t^2であるから、等裾95%95\%信用区間は

C1=[0.025,0.975]≈[0.158114,0.987421]C_1=[\sqrt{0.025},\sqrt{0.975}] \approx[0.158114,0.987421]

となる。

真の母数をθ∗=0.01\theta_*=0.01に固定すると、θ∗\theta_*はC0C_0にもC1C_1にも属さない。観測値は00または11のいずれかであるため、反復標本抽出における被覆確率は

Pθ∗(θ∗∈CX)=0P_{\theta_*}(\theta_*\in C_X)=0

である。この例では、各観測後の区間が事後確率0.950.95をもつ一方で、固定した真の母数に対する頻度論的被覆確率は00になる。

例 5.3 (コイン投げの事後更新). コインが表を出す確率をθ\thetaとし、事前分布をBeta⁡(2,2)\operatorname{Beta}(2,2)とする。この事前分布の平均は1/2=0.51/2=0.5である。コインをn=10n=10回投げて表をx=7x=7回観測すると、命題 4.2により

θ∣x∼Beta⁡(2+7,2+10−7)=Beta⁡(9,5)\theta\mid x\sim\operatorname{Beta}(2+7,2+10-7)=\operatorname{Beta}(9,5)

となる。

事後平均は

E[θ∣x]=99+5=914≈0.6429E[\theta\mid x]=\frac9{9+5}=\frac9{14}\approx0.6429

であり、標本比率7/10=0.77/10=0.7と事前平均1/21/2の間にある。§E14.3 命題 1.4により、事後分散と標準偏差は

Var⁡(θ∣x)=9⋅5142⋅15=452940=0.015306…,sd⁡(θ∣x)≈0.12372\operatorname{Var}(\theta\mid x) =\frac{9\cdot5}{14^2\cdot15} =\frac{45}{2940} =0.015306\ldots, \qquad \operatorname{sd}(\theta\mid x)\approx0.12372

である。

次の一回の結果をX~∈{0,1}\widetilde X\in\{0,1\}とし、表を11と表す。命題 2.1により

P(X~=1∣x)=∫01θπ(θ∣x) dθ=E[θ∣x]=914≈0.6429P(\widetilde X=1\mid x) =\int_0^1\theta\pi(\theta\mid x)\,d\theta =E[\theta\mid x] =\frac9{14}\approx0.6429

である。

Beta⁡(9,5)\operatorname{Beta}(9,5)分布の0.0250.025分位点と0.9750.975分位点を累積分布関数の数値的反転によって求めると、それぞれおよそ

0.385738338…,0.861420661…0.385738338\ldots, \qquad 0.861420661\ldots

となる。したがって等裾95%95\%信用区間は[0.385738338,0.861420661][0.385738338,0.861420661]であり、小数第3位まででは[0.386,0.861][0.386,0.861]である。

6 事後正規近似への展望

注意 6.1 (Bernstein–von Mises の定理). 有限次元の十分に正則な統計モデルでは、適切な局所条件を満たす事前分布のもとで、標本サイズを増やすと事後分布を最尤推定量の近くの正規分布で近似することができる。極限の共分散は Fisher 情報行列の逆行列によって記述される。この結果は事後分布の有限標本での形を保証しない。

定理の精密な正則条件、局所漸近正規性との関係、および証明は、後続単元「数理統計 II」の「漸近統計理論と局所漸近正規性」で扱う。

参考文献

  1. Morris H. DeGroot and Mark J. Schervish, Probability and Statistics, 4th ed., Addison-Wesley, Boston, 2012.事後分布、事後予測分布、共役事前分布、Bayes 推定量および信用集合の標準的な定式化を参考にした。
  2. A. W. van der Vaart, Asymptotic Statistics, Cambridge University Press, 1998.Bernstein–von Mises の定理の精密な扱いを後続単元へ委ねるため、事後正規近似の位置づけを参考にした。

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