§C3.1ピタゴラス数の一般解

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ピタゴラス数の一般解では、a2+b2=c2a^2+b^2=c^2を満たし、aaとbbが互いに素である正の整数の三つ組を、条件を満たす二つの整数から作る形で重複なく表します。

1 小さい場合を書き出す

まず、条件を満たす組をいくつか手で探します。

例 1.1 (三辺が整数である直角三角形).a2+b2=c2a^2 + b^2 = c^2を満たす正の整数の組には、次のものがある。

(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17),(7,24,25),(20,21,29),(9,40,41)(3,4,5),\quad (5,12,13),\quad (8,15,17),\quad (7,24,25),\quad (20,21,29),\quad (9,40,41)

いずれの組でも、aaとbbの最大公約数は11であり、aaとbbの一方だけが偶数であり、ccは奇数である。

これらの組には、次の規則が現れています。(3,4,5)(3,4,5)ではc+a=8c + a = 8、c−a=2c - a = 2であり、半分にすると4=224 = 2^2と1=121 = 1^2という平方数になります。(5,12,13)(5,12,13)でa=5a = 5を奇数の側に取ると、c+a2=9=32\frac{c+a}{2} = 9 = 3^2、c−a2=4=22\frac{c-a}{2} = 4 = 2^2です。(20,21,29)(20,21,29)でa=21a = 21とすると、c+a2=25=52\frac{c+a}{2} = 25 = 5^2、c−a2=4=22\frac{c-a}{2} = 4 = 2^2です。

そこで、c+a2\frac{c+a}{2}とc−a2\frac{c-a}{2}がつねに平方数になるのではないか、と予想することができます。それをm2m^2とn2n^2と置けば、c=m2+n2c = m^2 + n^2、a=m2−n2a = m^2 - n^2となり、残るbbもmmとnnで書くことができます。以下では、この予想を証明すべき主張として書き下し、証明します。上の計算による確認は予想を立てるための手段であって、すべての場合についての証明ではありません。

2 調べる対象を、互いに素な組に絞る

定義 2.1 (ピタゴラス数と原始ピタゴラス数).a2+b2=c2a^2 + b^2 = c^2を満たす正の整数の組(a,b,c)(a,b,c)をピタゴラス数という。さらにgcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b) = 1であるとき、(a,b,c)(a,b,c)を原始ピタゴラス数という。

原始でない組は、原始な組を整数倍したものとして得られます。したがって、原始な組をすべて求めれば、ピタゴラス数の全体が分かります。

注意 2.2 (原始な組を求めれば足りる).(a,b,c)(a,b,c)をピタゴラス数とし、d=gcd⁡(a,b)d = \gcd(a,b)とおく。a=da′a = d a'、b=db′b = d b'と書くとc2=d2(a′2+b′2)c^2 = d^2(a'^2 + b'^2)であるからd2d^2はc2c^2を割り切り、素因数分解の一意性によりddはccを割り切る。c=dc′c = d c'とおくと(a′,b′,c′)(a', b', c')は原始ピタゴラス数である。逆に、原始ピタゴラス数の各成分を同じ正の整数倍したものはピタゴラス数である。

また、gcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b) = 1ならばgcd⁡(a,c)=1\gcd(a,c) = 1かつgcd⁡(b,c)=1\gcd(b,c) = 1である。実際、aaとccを割り切る素数ppがあれば、b2=c2−a2b^2 = c^2 - a^2よりp∣b2p \mid b^2であり、ppが素数であることからp∣bp \mid bとなってgcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b) = 1に反する。bbとccについても同様である。

3 素因数分解の一意性から得る道具

一般解を導く議論の中心になるのは、次の主張です。

定理 3.1 (互いに素な二数の積が平方数である場合).uu、vvを正の整数とし、gcd⁡(u,v)=1\gcd(u,v) = 1とする。積uvuvが平方数であれば、uuとvvはそれぞれ平方数である。

証明. 素数ppを取り、uuとvvの素因数分解におけるppの指数を、それぞれeeとffとする。uvuvが平方数であるから、素因数分解の一意性によりe+fe+fは偶数である。gcd⁡(u,v)=1\gcd(u,v)=1であるから、eeとffの少なくとも一方は00である。したがって、eeとffはともに偶数である。任意の素数について同じことが成り立つので、uuとvvの素因数分解に現れるすべての指数は偶数である。よってuuとvvはそれぞれ平方数である。▨

4 偶奇による絞り込み

次に、原始ピタゴラス数の三つの成分の偶奇が完全に決まることを示します。

定理 4.1 (原始ピタゴラス数の偶奇).(a,b,c)(a,b,c)を原始ピタゴラス数とする。このときaaとbbの一方は偶数、他方は奇数であり、ccは奇数である。

証明.aaとbbがともに偶数であるとすると、22がgcd⁡(a,b)\gcd(a,b)を割り切るので、gcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b)=1に反する。

aaとbbがともに奇数であると仮定する。奇数2k+12k+1の平方は4k2+4k+14k^2+4k+1であるから、奇数の平方は44を法として11と合同である。したがってc2=a2+b2≡1+1=2(mod4)c^2=a^2+b^2\equiv1+1=2\pmod 4となる。一方、整数の平方を44で割った余りは00または11である。c2c^2の二つの合同関係は両立しないので、aaとbbがともに奇数であるという仮定を棄却する。

よってaaとbbの一方は偶数であり、他方は奇数である。するとc2=a2+b2c^2=a^2+b^2は奇数であり、ccも奇数である。▨

この定理により、原始ピタゴラス数では偶数である成分がちょうど一つに定まります。以下では、記述を一つに定めるために、bbを偶数の側とします。

5 一般解

偶数である成分をbbとすると、原始ピタゴラス数は次の定理で尽くされます。

定理 5.1 (原始ピタゴラス数の一般解).(a,b,c)(a,b,c)を、bbが偶数である原始ピタゴラス数とする。このとき、次の三つをすべて満たす整数mm、nnがただ一組存在して、a=m2−n2a = m^2 - n^2、b=2mnb = 2mn、c=m2+n2c = m^2 + n^2が成り立つ。

  1. m>n>0m > n > 0
  2. gcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n) = 1
  3. mmとnnの偶奇が異なる

逆に、1 から 3 をすべて満たす整数mm、nnに対してa=m2−n2a = m^2 - n^2、b=2mnb = 2mn、c=m2+n2c = m^2 + n^2と定めると、(a,b,c)(a,b,c)はbbが偶数である原始ピタゴラス数である。

証明 (この形に限ること).定理 4.1よりaaとccは奇数である。b=2b′b=2b'とおく。b2=c2−a2=(c−a)(c+a)b^2 = c^2 - a^2 = (c-a)(c+a)であり、ccとaaがともに奇数であるからc−ac-aとc+ac+aはともに偶数である。両辺を44で割ると

b′2=c−a2⋅c+a2b'^2 = \frac{c-a}{2} \cdot \frac{c+a}{2}

を得る。c2=a2+b2>a2c^2=a^2+b^2>a^2かつa,c>0a,c>0であるからc>ac>aであり、c−a2\frac{c-a}{2}とc+a2\frac{c+a}{2}はともに正の整数である。

c−a2\frac{c-a}{2}とc+a2\frac{c+a}{2}に共通の素因数ppがあると仮定する。ppは二数の和ccと差aaをともに割り切るので、gcd⁡(a,c)=1\gcd(a,c)=1に反する。したがって、この二数は互いに素である。

したがって定理 3.1により、正の整数m,nm,nが存在して

c+a2=m2,c−a2=n2\frac{c+a}{2} = m^2, \qquad \frac{c-a}{2} = n^2

となる。これらを足し引きするとc=m2+n2c=m^2+n^2、a=m2−n2a=m^2-n^2を得る。またb′2=m2n2b'^2=m^2n^2とb′>0b'>0からb′=mnb'=mn、すなわちb=2mnb=2mnを得る。

a>0a>0よりm2>n2m^2>n^2であり、m,n>0m,n>0であるからm>n>0m>n>0である。mmとnnの共通の素因数はm2=c+a2m^2=\frac{c+a}{2}とn2=c−a2n^2=\frac{c-a}{2}の共通の素因数になるが、この二数は互いに素である。よってgcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n)=1である。さらにc=m2+n2c=m^2+n^2は奇数であるから、mmとnnの偶奇は異なる。

m2=c+a2m^2=\frac{c+a}{2}とn2=c−a2n^2=\frac{c-a}{2}は(a,c)(a,c)から定まり、m,nm,nは正の整数であるから、mmとnnはそれぞれ一意に定まる。▨

証明 (この形が条件を満たすこと). 条件 1 から 3 を満たす整数m,nm,nを取り、a=m2−n2a=m^2-n^2、b=2mnb=2mn、c=m2+n2c=m^2+n^2と定める。条件 1 よりa,b,c>0a,b,c>0である。展開すると

a2+b2=(m2−n2)2+4m2n2=m4+2m2n2+n4=(m2+n2)2=c2a^2 + b^2 = (m^2-n^2)^2 + 4m^2n^2 = m^4 + 2m^2n^2 + n^4 = (m^2+n^2)^2 = c^2

であるから、(a,b,c)(a,b,c)はピタゴラス数であり、b=2mnb=2mnは偶数である。

条件 3 よりa=m2−n2a=m^2-n^2は奇数である。aaとbbをともに割り切る素数ppがあると仮定する。ppは奇数であり、p∣b=2mnp\mid b=2mnであるから、ppはmmまたはnnを割り切る。p∣mp\mid mならば、p∣a=m2−n2p\mid a=m^2-n^2よりp∣n2p\mid n^2、したがってp∣np\mid nとなり、gcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n)=1に反する。p∣np\mid nの場合も同様にp∣mp\mid mとなり、gcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n)=1に反する。よってaaとbbに共通の素因数は無く、gcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b)=1である。▨

例 5.2 (小さいmm、nnから得られる組). 条件 1 から 3 を満たすmm、nnに対して(a,b,c)=(m2−n2, 2mn, m2+n2)(a,b,c) = (m^2-n^2,\ 2mn,\ m^2+n^2)を計算すると、次のようになる。

mm nn aa bb cc
22 11 33 44 55
33 22 55 1212 1313
44 11 1515 88 1717
44 33 77 2424 2525
55 22 2121 2020 2929
55 44 99 4040 4141

例 1.1に挙げた六つの組が、aaとbbの順序の違いを除いて、すべてこの表に現れる。

6 三つの条件は、どれも外すことができない

定理 5.1の条件 1 から 3 は、どれか一つを外すと結論が成り立たなくなります。

例 6.1 (条件を一つ外した場合). 条件 1 を外してm=nm = nとするとa=m2−n2=0a = m^2 - n^2 = 0となり、正の整数の組にならない。n=0n = 0とするとb=2mn=0b = 2mn = 0となり、やはり正の整数の組にならない。

条件 2 を外し、m=6m = 6、n=3n = 3とする。この二数は偶奇が異なるので条件 3 は満たすが、gcd⁡(6,3)=3\gcd(6,3) = 3である。このとき(a,b,c)=(27,36,45)(a,b,c) = (27, 36, 45)であり、gcd⁡(27,36)=9\gcd(27,36) = 9であるから、原始ピタゴラス数ではない。

条件 3 を外し、m=3m = 3、n=1n = 1とする。この二数はgcd⁡(3,1)=1\gcd(3,1) = 1を満たすので条件 2 は満たすが、ともに奇数である。このとき(a,b,c)=(8,6,10)(a,b,c) = (8, 6, 10)であり、gcd⁡(8,6)=2\gcd(8,6) = 2であるから、原始ピタゴラス数ではない。

条件 2 と条件 3 は、証明のうち「この形が条件を満たすこと」のgcd⁡(a,b)=1\gcd(a,b) = 1を示す部分で使われました。条件 2 を使ったのはppがmmとnnの両方を割り切ることを矛盾とした箇所であり、条件 3 を使ったのはaaが奇数であることを導いた箇所です。上の二つの例は、その二つの推論がそれぞれ成立しない場合にあたります。

注意 6.2 (この一般解が使われる場面).定理 5.1は、フェルマーの最終定理n=4n = 4 の証明の中で、無限降下法によって解をより小さい解へ移す段階で用いられる。

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