1 小さい数で確かめる
例 1.1 (15以下の正の整数を四つの平方数の和として表す).15以下の各正の整数について、四つの平方数の和としての表示を一つずつ挙げると、次のようになる。項の数を四つに揃えるため、必要に応じて02を補う。
| n |
表示 |
0でない項の最小個数 |
| 1 |
1+0+0+0 |
1 |
| 2 |
1+1+0+0 |
2 |
| 3 |
1+1+1+0 |
3 |
| 4 |
4+0+0+0 |
1 |
| 5 |
4+1+0+0 |
2 |
| 6 |
4+1+1+0 |
3 |
| 7 |
4+1+1+1 |
4 |
| 8 |
4+4+0+0 |
2 |
| 9 |
9+0+0+0 |
1 |
| 10 |
9+1+0+0 |
2 |
| 11 |
9+1+1+0 |
3 |
| 12 |
4+4+4+0 |
3 |
| 13 |
9+4+0+0 |
2 |
| 14 |
9+4+1+0 |
3 |
| 15 |
9+4+1+1 |
4 |
7と15では、0でない項が四つ必要です。したがって、三つの平方数では足りない正の整数があり、四つという個数を減らすことはできません。上の計算は予想を立てる手段であって、すべての正の整数についての証明ではありません。
証明は二段に分かれます。第一段では、四つの平方数の和どうしの積がまた四つの平方数の和になるという等式を用意し、一般の正の整数の場合を素数の場合へ帰着させます。第二段では、素数の場合を無限降下法で示します。
2 四つの平方数の和どうしの積
証明. 両辺を展開し、平方の項と交差項とを分けて比べます。
左辺を展開すると、1≤i,j≤4を動く16個の項ai2bj2の和です。
右辺の各ck2を展開すると、平方の項として4個ずつ、合わせて16個の項が現れます。c12からは(i,j)が(1,1),(2,2),(3,3),(4,4)のもの、c22からは(1,2),(2,1),(3,4),(4,3)のもの、c32からは(1,3),(3,1),(4,2),(2,4)のもの、c42からは(1,4),(4,1),(2,3),(3,2)のものが出ます。符号は平方によって消えるので、16通りの(i,j)がちょうど一度ずつ現れ、左辺と一致します。
残るのは交差項です。交差項はいずれも2aiajbkbl(i=j)の形をしているので、aiajの組ごとにまとめます。a1a2を含む交差項は、c12から+2a1a2b1b2、c22から−2a1a2b1b2、c32から−2a1a2b3b4、c42から+2a1a2b3b4が出るので、合計は0です。他の五つの組についても同様に、二つずつが符号だけ異なる形で現れて打ち消し合います。
| aiaj |
打ち消し合う組 |
打ち消し合う組 |
| a1a2 |
c12の+b1b2とc22の−b1b2 |
c32の−b3b4とc42の+b3b4 |
| a1a3 |
c12の+b1b3とc32の−b1b3 |
c22の+b2b4とc42の−b2b4 |
| a1a4 |
c12の+b1b4とc42の−b1b4 |
c22の−b2b3とc32の+b2b3 |
| a2a3 |
c12の+b2b3とc42の−b2b3 |
c22の−b1b4とc32の+b1b4 |
| a2a4 |
c12の+b2b4とc32の−b2b4 |
c22の+b1b3とc42の−b1b3 |
| a3a4 |
c12の+b3b4とc22の−b3b4 |
c32の−b1b2とc42の+b1b2 |
各行の四つの項は係数2aiajを共有し、二つずつが符号だけ異なるので、和は0です。したがって交差項の総和は0であり、両辺は一致します。▨
例 2.2 (等式を数で確かめる).(a1,a2,a3,a4)=(1,2,3,4)、(b1,b2,b3,b4)=(4,3,2,1)とすると、左辺は30×30=900である。一方
c1=4+6+6+4=20,c2=3−8+3−8=−10,c3=2−12+12−2=0,c4=1−16+4−9=−20であり、202+(−10)2+02+(−20)2=400+100+0+400=900となって一致する。
3 素数の場合へ帰着させる
定理 3.1 (素数の場合に帰着すること). すべての素数が四つの平方数の和として表されるならば、すべての正の整数が四つの平方数の和として表される。
証明.n=1のときは1=12+02+02+02です。n≥2のときは、素因数分解によってnを素数の積として書きます。各素因数は仮定によって四つの平方数の和として表されるので、公式 2.1を素因数の個数から1を引いた回数だけ順に適用すると、積nもまた四つの平方数の和として表されます。▨
2=12+12+02+02であるから、残るのは奇素数の場合です。
4 奇素数の倍数についての表示を作る
降下を始めるには、出発点となる表示が要ります。二平方和定理では−1が平方剰余であることを用いましたが、四つの平方数を使うと、平方剰余の理論を用いずに出発点を作ることができます。
定理 4.1 (出発点となる合同式).pを奇素数とする。このとき、0≤x≤(p−1)/2と0≤y≤(p−1)/2を満たす整数x、yで
x2+y2+1≡0(modp)を満たすものが存在する。
証明.A={x2modp:0≤x≤(p−1)/2}とB={(−1−y2)modp:0≤y≤(p−1)/2}を、法pの剰余の集合として考えます。
まずAの要素の個数を数えます。0≤x<x′≤(p−1)/2についてx2≡x′2(modp)とすると、pは(x′−x)(x′+x)を割り切ります。pは素数であり、0<x′−x≤(p−1)/2<pかつ0<x′+x≤p−1<pであるから、pはどちらの因数も割り切ることができず、矛盾です。よってAの要素は相異なり、Aの要素の個数は(p+1)/2です。同じ理由でBの要素の個数も(p+1)/2です。
法pの剰余は全部でp個です。AとBが共通の要素を持たないとすると、A∪Bの要素の個数は(p+1)/2+(p+1)/2=p+1となり、pを超えます。これは不合理なので、AとBは共通の要素を持ちます。すなわち、x2≡−1−y2(modp)を満たすx、yが上の範囲に存在します。▨
この段では、法pの剰余を箱とみなして二つの集合を振り分けており、鳩の巣原理と同じ数え方を用いています。
5 素数の場合を降下で示す
定理 5.1 (奇素数の場合).pを奇素数とする。このときp=x12+x22+x32+x42を満たす整数x1,x2,x3,x4が存在する。
証明の骨格は二平方和定理と同じです。まずpの倍数mpについての表示を作り、その倍率mを最小に取ります。次に、最小の倍率が1より大きいと仮定すると、より小さい倍率についての表示が得られることを示して矛盾を導きます。
証明. 第一段:pの小さい倍数についての表示を作ります。定理 4.1により、0≤x,y≤(p−1)/2でx2+y2+12+02がpで割り切れるものがあります。この値をmpとおくと
mp=x2+y2+1≤2⋅4(p−1)2+1<p2であり、mp>0であるから1≤m<pです。したがって、集合
S={m:1≤m<p, mp が四つの平方数の和として表される}は空ではありません。Sの最小の要素をMとし、x12+x22+x32+x42=Mpを満たす整数x1,x2,x3,x4を取ります。以下、M=1を示します。
第二段:Mが偶数である場合を排除します。Mが偶数であるとします。Mpは偶数なので、x1,x2,x3,x4のうち奇数であるものの個数は偶数です。そこで番号を付け替えて、x1≡x2(mod2)かつx3≡x4(mod2)となるようにすることができます。すると
2x1+x2,2x1−x2,2x3+x4,2x3−x4はいずれも整数であり、その平方の和は
4(x1+x2)2+(x1−x2)2+(x3+x4)2+(x3−x4)2=42(x12+x22+x32+x42)=2Mpです。Mが偶数であるからM/2は1以上M未満の整数であり、M/2∈SとなってMの最小性に矛盾します。よってMは奇数です。
第三段:M>1と仮定して、より小さい要素を作ります。Mを奇数とし、M>1と仮定します。Mが奇数であるから、各iについて
yi≡xi(modM),∣yi∣<2Mを満たす整数yiを取ることができます。すると
y12+y22+y32+y42≡x12+x22+x32+x42=Mp≡0(modM)であるから、y12+y22+y32+y42=Mrを満たす0以上の整数rがあります。さらに
Mr=y12+y22+y32+y42<4⋅4M2=M2であるから0≤r<Mです。
第四段:r=0の場合を排除します。r=0とすると、すべてのyiが0であり、Mはすべてのxiを割り切ります。するとM2はx12+x22+x32+x42=Mpを割り切るので、Mはpを割り切ります。しかし1<M<pであり、pは素数なので、これは矛盾です。よって1≤r<Mです。
第五段:降下を実行します。公式 2.1を(x1,x2,x3,x4)と(y1,y2,y3,y4)に適用すると、左辺はMp⋅Mr=M2prです。右辺に現れる四つの値をc1,c2,c3,c4とすると、yi≡xi(modM)より
c1c2c3c4≡x12+x22+x32+x42≡0(modM),≡x1x2−x2x1+x3x4−x4x3=0(modM),≡x1x3−x3x1+x4x2−x2x4=0(modM),≡x1x4−x4x1+x2x3−x3x2=0(modM)が成り立ちます。したがってzi=ci/Mはすべて整数であり、両辺をM2で割ると
z12+z22+z32+z42=prを得ます。1≤r<M<pであるからr∈Sであり、MがSの最小の要素であることに矛盾します。
第二段と第三段を合わせるとM=1であり、pは四つの平方数の和として表されます。▨
6 四平方和定理
定理 6.1 (四平方和定理). すべての正の整数は、四つの平方数の和として表される。
証明.2=12+12+02+02であり、奇素数については定理 5.1が表示を与えます。したがってすべての素数が四つの平方数の和として表され、定理 3.1によってすべての正の整数が四つの平方数の和として表されます。▨
7 二平方和定理との違い