§C3.7四平方和定理

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本記事は、どの正の整数も四つの平方数の和として表される、という主張を示します。二平方和定理では、表すことができる素数が44で割った余りによって選ばれていました。平方数を四つに増やすと、そのような選別が消え、例外の無い主張になる点が、この定理の内容です。本記事が示すのは表示が存在することであり、表示が何通りあるかは扱いません。

証明に用いる道具は、無限降下法で扱う降下の議論です。本記事は、これを導入し直さずに用います。以下、平方数は00を含み、1=12+02+02+021 = 1^2 + 0^2 + 0^2 + 0^2のように、00を補って四つに揃えます。

1 小さい数で確かめる

例 1.1 (1515以下の正の整数を四つの平方数の和として表す).1515以下の各正の整数について、四つの平方数の和としての表示を一つずつ挙げると、次のようになる。項の数を四つに揃えるため、必要に応じて020^2を補う。

nn 表示 00でない項の最小個数
11 1+0+0+01 + 0 + 0 + 0 11
22 1+1+0+01 + 1 + 0 + 0 22
33 1+1+1+01 + 1 + 1 + 0 33
44 4+0+0+04 + 0 + 0 + 0 11
55 4+1+0+04 + 1 + 0 + 0 22
66 4+1+1+04 + 1 + 1 + 0 33
77 4+1+1+14 + 1 + 1 + 1 44
88 4+4+0+04 + 4 + 0 + 0 22
99 9+0+0+09 + 0 + 0 + 0 11
1010 9+1+0+09 + 1 + 0 + 0 22
1111 9+1+1+09 + 1 + 1 + 0 33
1212 4+4+4+04 + 4 + 4 + 0 33
1313 9+4+0+09 + 4 + 0 + 0 22
1414 9+4+1+09 + 4 + 1 + 0 33
1515 9+4+1+19 + 4 + 1 + 1 44

77と1515では、00でない項が四つ必要です。したがって、三つの平方数では足りない正の整数があり、四つという個数を減らすことはできません。上の計算は予想を立てる手段であって、すべての正の整数についての証明ではありません。

証明は二段に分かれます。第一段では、四つの平方数の和どうしの積がまた四つの平方数の和になるという等式を用意し、一般の正の整数の場合を素数の場合へ帰着させます。第二段では、素数の場合を無限降下法で示します。

2 四つの平方数の和どうしの積

公式 2.1 (四つの平方数の和どうしの積). 任意の整数a1,a2,a3,a4,b1,b2,b3,b4a_1, a_2, a_3, a_4, b_1, b_2, b_3, b_4について

(a12+a22+a32+a42)(b12+b22+b32+b42)=c12+c22+c32+c42(a_1^2 + a_2^2 + a_3^2 + a_4^2)(b_1^2 + b_2^2 + b_3^2 + b_4^2) = c_1^2 + c_2^2 + c_3^2 + c_4^2

が成り立つ。ただし

c1=a1b1+a2b2+a3b3+a4b4,c2=a1b2−a2b1+a3b4−a4b3,c3=a1b3−a3b1+a4b2−a2b4,c4=a1b4−a4b1+a2b3−a3b2\begin{aligned} c_1 &= a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3 b_3 + a_4 b_4, \\ c_2 &= a_1 b_2 - a_2 b_1 + a_3 b_4 - a_4 b_3, \\ c_3 &= a_1 b_3 - a_3 b_1 + a_4 b_2 - a_2 b_4, \\ c_4 &= a_1 b_4 - a_4 b_1 + a_2 b_3 - a_3 b_2 \end{aligned}

とする。

証明. 両辺を展開し、平方の項と交差項とを分けて比べます。

左辺を展開すると、1≤i,j≤41 \le i, j \le 4を動く1616個の項ai2bj2a_i^2 b_j^2の和です。

右辺の各ck2c_k^2を展開すると、平方の項として44個ずつ、合わせて1616個の項が現れます。c12c_1^2からは(i,j)(i,j)が(1,1),(2,2),(3,3),(4,4)(1,1), (2,2), (3,3), (4,4)のもの、c22c_2^2からは(1,2),(2,1),(3,4),(4,3)(1,2), (2,1), (3,4), (4,3)のもの、c32c_3^2からは(1,3),(3,1),(4,2),(2,4)(1,3), (3,1), (4,2), (2,4)のもの、c42c_4^2からは(1,4),(4,1),(2,3),(3,2)(1,4), (4,1), (2,3), (3,2)のものが出ます。符号は平方によって消えるので、1616通りの(i,j)(i,j)がちょうど一度ずつ現れ、左辺と一致します。

残るのは交差項です。交差項はいずれも2aiajbkbl2 a_i a_j b_k b_l(i≠ji \ne j)の形をしているので、aiaja_i a_jの組ごとにまとめます。a1a2a_1 a_2を含む交差項は、c12c_1^2から+2a1a2b1b2+2a_1a_2b_1b_2、c22c_2^2から−2a1a2b1b2-2a_1a_2b_1b_2、c32c_3^2から−2a1a2b3b4-2a_1a_2b_3b_4、c42c_4^2から+2a1a2b3b4+2a_1a_2b_3b_4が出るので、合計は00です。他の五つの組についても同様に、二つずつが符号だけ異なる形で現れて打ち消し合います。

aiaja_i a_j 打ち消し合う組 打ち消し合う組
a1a2a_1 a_2 c12c_1^2の+b1b2+b_1b_2とc22c_2^2の−b1b2-b_1b_2 c32c_3^2の−b3b4-b_3b_4とc42c_4^2の+b3b4+b_3b_4
a1a3a_1 a_3 c12c_1^2の+b1b3+b_1b_3とc32c_3^2の−b1b3-b_1b_3 c22c_2^2の+b2b4+b_2b_4とc42c_4^2の−b2b4-b_2b_4
a1a4a_1 a_4 c12c_1^2の+b1b4+b_1b_4とc42c_4^2の−b1b4-b_1b_4 c22c_2^2の−b2b3-b_2b_3とc32c_3^2の+b2b3+b_2b_3
a2a3a_2 a_3 c12c_1^2の+b2b3+b_2b_3とc42c_4^2の−b2b3-b_2b_3 c22c_2^2の−b1b4-b_1b_4とc32c_3^2の+b1b4+b_1b_4
a2a4a_2 a_4 c12c_1^2の+b2b4+b_2b_4とc32c_3^2の−b2b4-b_2b_4 c22c_2^2の+b1b3+b_1b_3とc42c_4^2の−b1b3-b_1b_3
a3a4a_3 a_4 c12c_1^2の+b3b4+b_3b_4とc22c_2^2の−b3b4-b_3b_4 c32c_3^2の−b1b2-b_1b_2とc42c_4^2の+b1b2+b_1b_2

各行の四つの項は係数2aiaj2a_ia_jを共有し、二つずつが符号だけ異なるので、和は00です。したがって交差項の総和は00であり、両辺は一致します。▨

例 2.2 (等式を数で確かめる).(a1,a2,a3,a4)=(1,2,3,4)(a_1, a_2, a_3, a_4) = (1, 2, 3, 4)、(b1,b2,b3,b4)=(4,3,2,1)(b_1, b_2, b_3, b_4) = (4, 3, 2, 1)とすると、左辺は30×30=90030 \times 30 = 900である。一方

c1=4+6+6+4=20,c2=3−8+3−8=−10,c3=2−12+12−2=0,c4=1−16+4−9=−20c_1 = 4 + 6 + 6 + 4 = 20, \quad c_2 = 3 - 8 + 3 - 8 = -10, \quad c_3 = 2 - 12 + 12 - 2 = 0, \quad c_4 = 1 - 16 + 4 - 9 = -20

であり、202+(−10)2+02+(−20)2=400+100+0+400=90020^2 + (-10)^2 + 0^2 + (-20)^2 = 400 + 100 + 0 + 400 = 900となって一致する。

3 素数の場合へ帰着させる

定理 3.1 (素数の場合に帰着すること). すべての素数が四つの平方数の和として表されるならば、すべての正の整数が四つの平方数の和として表される。

証明.n=1n = 1のときは1=12+02+02+021 = 1^2 + 0^2 + 0^2 + 0^2です。n≥2n \ge 2のときは、素因数分解によってnnを素数の積として書きます。各素因数は仮定によって四つの平方数の和として表されるので、公式 2.1を素因数の個数から11を引いた回数だけ順に適用すると、積nnもまた四つの平方数の和として表されます。▨

2=12+12+02+022 = 1^2 + 1^2 + 0^2 + 0^2であるから、残るのは奇素数の場合です。

4 奇素数の倍数についての表示を作る

降下を始めるには、出発点となる表示が要ります。二平方和定理では−1-1が平方剰余であることを用いましたが、四つの平方数を使うと、平方剰余の理論を用いずに出発点を作ることができます。

定理 4.1 (出発点となる合同式).ppを奇素数とする。このとき、0≤x≤(p−1)/20 \le x \le (p-1)/2と0≤y≤(p−1)/20 \le y \le (p-1)/2を満たす整数xx、yyで

x2+y2+1≡0(modp)x^2 + y^2 + 1 \equiv 0 \pmod p

を満たすものが存在する。

証明.A={ x2 mod p:0≤x≤(p−1)/2 }A = \{\, x^2 \bmod p : 0 \le x \le (p-1)/2 \,\}とB={ (−1−y2) mod p:0≤y≤(p−1)/2 }B = \{\, (-1 - y^2) \bmod p : 0 \le y \le (p-1)/2 \,\}を、法ppの剰余の集合として考えます。

まずAAの要素の個数を数えます。0≤x<x′≤(p−1)/20 \le x < x' \le (p-1)/2についてx2≡x′2(modp)x^2 \equiv x'^2 \pmod pとすると、ppは(x′−x)(x′+x)(x' - x)(x' + x)を割り切ります。ppは素数であり、0<x′−x≤(p−1)/2<p0 < x' - x \le (p-1)/2 < pかつ0<x′+x≤p−1<p0 < x' + x \le p - 1 < pであるから、ppはどちらの因数も割り切ることができず、矛盾です。よってAAの要素は相異なり、AAの要素の個数は(p+1)/2(p+1)/2です。同じ理由でBBの要素の個数も(p+1)/2(p+1)/2です。

法ppの剰余は全部でpp個です。AAとBBが共通の要素を持たないとすると、A∪BA \cup Bの要素の個数は(p+1)/2+(p+1)/2=p+1(p+1)/2 + (p+1)/2 = p + 1となり、ppを超えます。これは不合理なので、AAとBBは共通の要素を持ちます。すなわち、x2≡−1−y2(modp)x^2 \equiv -1 - y^2 \pmod pを満たすxx、yyが上の範囲に存在します。▨

この段では、法ppの剰余を箱とみなして二つの集合を振り分けており、鳩の巣原理と同じ数え方を用いています。

5 素数の場合を降下で示す

定理 5.1 (奇素数の場合).ppを奇素数とする。このときp=x12+x22+x32+x42p = x_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2を満たす整数x1,x2,x3,x4x_1, x_2, x_3, x_4が存在する。

証明の骨格は二平方和定理と同じです。まずppの倍数mpmpについての表示を作り、その倍率mmを最小に取ります。次に、最小の倍率が11より大きいと仮定すると、より小さい倍率についての表示が得られることを示して矛盾を導きます。

証明. 第一段:ppの小さい倍数についての表示を作ります。定理 4.1により、0≤x,y≤(p−1)/20 \le x, y \le (p-1)/2でx2+y2+12+02x^2 + y^2 + 1^2 + 0^2がppで割り切れるものがあります。この値をmpmpとおくと

mp=x2+y2+1≤2⋅(p−1)24+1<p2mp = x^2 + y^2 + 1 \le 2 \cdot \frac{(p-1)^2}{4} + 1 < p^2

であり、mp>0mp > 0であるから1≤m<p1 \le m < pです。したがって、集合

S={ m:1≤m<p, mp が四つの平方数の和として表される }S = \{\, m : 1 \le m < p,\ mp \text{ が四つの平方数の和として表される} \,\}

は空ではありません。SSの最小の要素をMMとし、x12+x22+x32+x42=Mpx_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2 = Mpを満たす整数x1,x2,x3,x4x_1, x_2, x_3, x_4を取ります。以下、M=1M = 1を示します。

第二段:MMが偶数である場合を排除します。MMが偶数であるとします。MpMpは偶数なので、x1,x2,x3,x4x_1, x_2, x_3, x_4のうち奇数であるものの個数は偶数です。そこで番号を付け替えて、x1≡x2(mod2)x_1 \equiv x_2 \pmod 2かつx3≡x4(mod2)x_3 \equiv x_4 \pmod 2となるようにすることができます。すると

x1+x22,x1−x22,x3+x42,x3−x42\frac{x_1 + x_2}{2}, \quad \frac{x_1 - x_2}{2}, \quad \frac{x_3 + x_4}{2}, \quad \frac{x_3 - x_4}{2}

はいずれも整数であり、その平方の和は

(x1+x2)2+(x1−x2)2+(x3+x4)2+(x3−x4)24=2(x12+x22+x32+x42)4=Mp2\frac{(x_1+x_2)^2 + (x_1-x_2)^2 + (x_3+x_4)^2 + (x_3-x_4)^2}{4} = \frac{2(x_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2)}{4} = \frac{Mp}{2}

です。MMが偶数であるからM/2M/2は11以上MM未満の整数であり、M/2∈SM/2 \in SとなってMMの最小性に矛盾します。よってMMは奇数です。

第三段:M>1M > 1と仮定して、より小さい要素を作ります。MMを奇数とし、M>1M > 1と仮定します。MMが奇数であるから、各iiについて

yi≡xi(modM),∣yi∣<M2y_i \equiv x_i \pmod M, \qquad \lvert y_i \rvert < \frac{M}{2}

を満たす整数yiy_iを取ることができます。すると

y12+y22+y32+y42≡x12+x22+x32+x42=Mp≡0(modM)y_1^2 + y_2^2 + y_3^2 + y_4^2 \equiv x_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2 = Mp \equiv 0 \pmod M

であるから、y12+y22+y32+y42=Mry_1^2 + y_2^2 + y_3^2 + y_4^2 = Mrを満たす00以上の整数rrがあります。さらに

Mr=y12+y22+y32+y42<4⋅M24=M2Mr = y_1^2 + y_2^2 + y_3^2 + y_4^2 < 4 \cdot \frac{M^2}{4} = M^2

であるから0≤r<M0 \le r < Mです。

第四段:r=0r = 0の場合を排除します。r=0r = 0とすると、すべてのyiy_iが00であり、MMはすべてのxix_iを割り切ります。するとM2M^2はx12+x22+x32+x42=Mpx_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2 = Mpを割り切るので、MMはppを割り切ります。しかし1<M<p1 < M < pであり、ppは素数なので、これは矛盾です。よって1≤r<M1 \le r < Mです。

第五段:降下を実行します。公式 2.1を(x1,x2,x3,x4)(x_1, x_2, x_3, x_4)と(y1,y2,y3,y4)(y_1, y_2, y_3, y_4)に適用すると、左辺はMp⋅Mr=M2prMp \cdot Mr = M^2 prです。右辺に現れる四つの値をc1,c2,c3,c4c_1, c_2, c_3, c_4とすると、yi≡xi(modM)y_i \equiv x_i \pmod Mより

c1≡x12+x22+x32+x42≡0(modM),c2≡x1x2−x2x1+x3x4−x4x3=0(modM),c3≡x1x3−x3x1+x4x2−x2x4=0(modM),c4≡x1x4−x4x1+x2x3−x3x2=0(modM)\begin{aligned} c_1 &\equiv x_1^2 + x_2^2 + x_3^2 + x_4^2 \equiv 0 \pmod M, \\ c_2 &\equiv x_1 x_2 - x_2 x_1 + x_3 x_4 - x_4 x_3 = 0 \pmod M, \\ c_3 &\equiv x_1 x_3 - x_3 x_1 + x_4 x_2 - x_2 x_4 = 0 \pmod M, \\ c_4 &\equiv x_1 x_4 - x_4 x_1 + x_2 x_3 - x_3 x_2 = 0 \pmod M \end{aligned}

が成り立ちます。したがってzi=ci/Mz_i = c_i / Mはすべて整数であり、両辺をM2M^2で割ると

z12+z22+z32+z42=prz_1^2 + z_2^2 + z_3^2 + z_4^2 = pr

を得ます。1≤r<M<p1 \le r < M < pであるからr∈Sr \in Sであり、MMがSSの最小の要素であることに矛盾します。

第二段と第三段を合わせるとM=1M = 1であり、ppは四つの平方数の和として表されます。▨

6 四平方和定理

定理 6.1 (四平方和定理). すべての正の整数は、四つの平方数の和として表される。

証明.2=12+12+02+022 = 1^2 + 1^2 + 0^2 + 0^2であり、奇素数については定理 5.1が表示を与えます。したがってすべての素数が四つの平方数の和として表され、定理 3.1によってすべての正の整数が四つの平方数の和として表されます。▨

7 二平方和定理との違い

注意 7.1 (平方剰余を用いない点). 二平方和定理では、出発点となる合同式x2≡−1(modp)x^2 \equiv -1 \pmod pの存在がp≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4の場合に限られ、そのために平方剰余の理論を用いた。四平方和定理では、定理 4.1が示すとおり、x2+y2+1≡0(modp)x^2 + y^2 + 1 \equiv 0 \pmod pを満たすxx、yyはどの奇素数についても存在する。条件が付かないのは、動かすことのできる変数がxxとyyの二つあるためであり、剰余の個数を数えるだけで存在が従う。この違いが、四平方和定理に例外が現れない理由である。

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