§C3.6二平方和定理

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本記事は、奇素数ppが二つの平方数の和として表されるのは、ppを44で割った余りが11である場合に限る、という主張を示します。 素数を44で割った余りという、平方数とは無関係に見える量が、平方数の和として表されるかどうかを完全に決めている点が、この定理の内容です。本記事が示すのは表示が存在することであり、表示が何通りあるかは扱いません。

証明に用いる道具は、平方剰余とルジャンドル記号で扱うオイラーの規準と、無限降下法で扱う降下の議論の二つです。本記事は、これらを導入し直さずに用います。以下、平方数は00を含み、aaとbbは整数の範囲で動きます。

1 小さい素数で確かめる

まず、小さい素数について、二つの平方数の和として表すことができるかどうかを実際に調べます。

例 1.1 (4343以下の素数を二つの平方数の和として表す).4343以下の各素数ppについて、p=a2+b2p = a^2 + b^2を満たす00以上の整数aa、bbを探すと、次の結果が得られる。

pp ppを44で割った余り 表示
22 22 12+121^2 + 1^2
33 33 無い
55 11 12+221^2 + 2^2
77 33 無い
1111 33 無い
1313 11 22+322^2 + 3^2
1717 11 12+421^2 + 4^2
1919 33 無い
2323 33 無い
2929 11 22+522^2 + 5^2
3131 33 無い
3737 11 12+621^2 + 6^2
4141 11 42+524^2 + 5^2
4343 33 無い

余りが11である素数はすべて表示を持ち、余りが33である素数はどれも表示を持ちません。唯一の偶素数22は12+121^2 + 1^2と表され、これは別に扱います。この表から、「奇素数ppが二つの平方数の和として表されることとp≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とは同値である」という主張を、証明すべき対象として立てます。上の計算は予想を立てる手段であって、すべての素数についての証明ではありません。

二つの向きの難しさは対称ではありません。余りが33の場合に表示が無いことは、法44で考えるだけで一度に片づきます。余りが11の場合に表示があることは、表示そのものを構成する必要があるので、道具を要します。

2 余りが33である場合に表示が無いこと

否定の側は、素数に限らず一般の正の整数について成り立ちます。

定理 2.1 (44で割った余りが33である数).nnを正の整数とし、n≡3(mod4)n \equiv 3 \pmod 4とする。このとき、n=a2+b2n = a^2 + b^2を満たす整数aa、bbは存在しない。

証明. 整数aaについて、aaが偶数ならa2≡0(mod4)a^2 \equiv 0 \pmod 4、aaが奇数ならa=2k+1a = 2k+1と書いてa2=4k(k+1)+1≡1(mod4)a^2 = 4k(k+1) + 1 \equiv 1 \pmod 4です。したがって、平方数を44で割った余りは00か11のいずれかです。

よってa2+b2a^2 + b^2を44で割った余りは、0+00 + 0、0+10 + 1、1+01 + 0、1+11 + 1の四通りから00、11、22のいずれかになり、33にはなりません。▨

奇素数を44で割った余りは11か33のいずれかです。したがって定理 2.1により、余りが33である奇素数は表示を持ちません。残るのは、余りが11である奇素数が必ず表示を持つことです。

3 出発点を作る:−1-1が平方剰余になる素数

表示p=a2+b2p = a^2 + b^2を直接に探す代わりに、まず法ppでの関係式を作ります。p=a2+b2p = a^2 + b^2が成り立てばa2≡−b2(modp)a^2 \equiv -b^2 \pmod pであり、bbがppで割り切れないとき(ab−1)2≡−1(modp)(ab^{-1})^2 \equiv -1 \pmod pとなります。つまり、表示があれば−1-1は法ppの平方剰余です。証明は、この必要条件を出発点として逆向きに進みます。

定理 3.1 (−1-1が平方剰余になる条件).ppを奇素数とする。x2≡−1(modp)x^2 \equiv -1 \pmod pを満たす整数xxが存在することと、p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とは同値である。

証明. オイラーの規準により、ppで割り切れない整数ccについて、ccが法ppの平方剰余であることとc(p−1)/2≡1(modp)c^{(p-1)/2} \equiv 1 \pmod pとは同値であり、平方剰余でないこととc(p−1)/2≡−1(modp)c^{(p-1)/2} \equiv -1 \pmod pとは同値です。c=−1c = -1とすると

(−1)(p−1)/2(-1)^{(p-1)/2}

の値は、(p−1)/2(p-1)/2が偶数のとき11、奇数のとき−1-1です。ppは奇数なので、(p−1)/2(p-1)/2が偶数であることとp≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とは同値です。ppが奇素数であるから1≢−1(modp)1 \not\equiv -1 \pmod pであり、二つの値は区別されます。よって、−1-1が法ppの平方剰余であることとp≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とは同値です。▨

4 平方数の和どうしの積

降下の段階で、二つの表示から新しい表示を作る必要があります。そのための等式を先に用意します。

公式 4.1 (二つの平方数の和どうしの積). 任意の整数aa、bb、cc、ddについて

(a2+b2)(c2+d2)=(ac+bd)2+(ad−bc)2(a^2 + b^2)(c^2 + d^2) = (ac + bd)^2 + (ad - bc)^2

が成り立つ。

証明. 右辺を展開すると

(ac+bd)2+(ad−bc)2=a2c2+2abcd+b2d2+a2d2−2abcd+b2c2(ac + bd)^2 + (ad - bc)^2 = a^2c^2 + 2abcd + b^2d^2 + a^2d^2 - 2abcd + b^2c^2

となり、2abcd2abcdが打ち消し合って

a2c2+b2d2+a2d2+b2c2=(a2+b2)(c2+d2)a^2c^2 + b^2d^2 + a^2d^2 + b^2c^2 = (a^2 + b^2)(c^2 + d^2)

を得ます。▨

5 二平方和定理

定理 5.1 (二平方和定理).ppを奇素数とする。p=a2+b2p = a^2 + b^2を満たす整数aa、bbが存在することと、p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とは同値である。なおp=2p = 2については2=12+122 = 1^2 + 1^2が成り立つ。

一方の向きはすでに済んでいます。p=a2+b2p = a^2 + b^2と表されるなら、定理 2.1によりp≢3(mod4)p \not\equiv 3 \pmod 4であり、ppは奇数なのでp≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4です。以下では逆の向きを示します。方針は、ppの倍数が二つの平方数の和として表されることをまず確かめ、その倍率を無限降下法によって11まで下げることです。

証明 (p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4ならば表示があること).p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4とします。

第一段:ppの小さい倍数についての表示を作ります。定理 3.1により、x2≡−1(modp)x^2 \equiv -1 \pmod pを満たす整数xxが存在します。xxを法ppで合同な整数へ取り替えて、∣x∣≤(p−1)/2\lvert x \rvert \le (p-1)/2を満たすようにすることができます。このときx2+12x^2 + 1^2はppで割り切れるので、x2+1=mpx^2 + 1 = mpを満たす正の整数mmがあります。さらに

mp=x2+1≤(p−1)24+1<p2mp = x^2 + 1 \le \frac{(p-1)^2}{4} + 1 < p^2

であるから1≤m<p1 \le m < pです。したがって、集合

S={ m:1≤m<p, mp が二つの平方数の和として表される }S = \{\, m : 1 \le m < p,\ mp \text{ が二つの平方数の和として表される} \,\}

は空ではありません。SSの最小の要素をMMとします。以下、M=1M = 1を示します。

第二段:M>1M > 1と仮定して、より小さい要素を作ります。M>1M > 1と仮定し、a2+b2=Mpa^2 + b^2 = Mpを満たす整数aa、bbを取ります。各整数は法MMで−M/2-M/2より大きくM/2M/2以下の整数と合同なので、

u≡a(modM),v≡b(modM),∣u∣≤M2,∣v∣≤M2u \equiv a \pmod M, \qquad v \equiv b \pmod M, \qquad \lvert u \rvert \le \frac{M}{2}, \qquad \lvert v \rvert \le \frac{M}{2}

を満たす整数uu、vvを取ることができます。すると

u2+v2≡a2+b2=Mp≡0(modM)u^2 + v^2 \equiv a^2 + b^2 = Mp \equiv 0 \pmod M

であるから、u2+v2=Mru^2 + v^2 = Mrを満たす00以上の整数rrがあります。さらに

Mr=u2+v2≤M24+M24=M22Mr = u^2 + v^2 \le \frac{M^2}{4} + \frac{M^2}{4} = \frac{M^2}{2}

であるからr≤M/2<Mr \le M/2 < Mです。

第三段:r=0r = 0の場合を排除します。r=0r = 0とするとu2+v2=0u^2 + v^2 = 0であり、u=v=0u = v = 0です。するとMMはaaとbbの両方を割り切るので、M2M^2はa2+b2=Mpa^2 + b^2 = Mpを割り切り、MMはppを割り切ります。しかし1<M<p1 < M < pであり、ppは素数なので、これは矛盾です。よって1≤r<M1 \le r < Mです。

第四段:降下を実行します。公式 4.1を(a,b)(a, b)と(u,v)(u, v)に適用すると

(a2+b2)(u2+v2)=(au+bv)2+(av−bu)2(a^2 + b^2)(u^2 + v^2) = (au + bv)^2 + (av - bu)^2

であり、左辺はMp⋅Mr=M2prMp \cdot Mr = M^2 prです。ここで、u≡au \equiv aかつv≡b(modM)v \equiv b \pmod Mより

au+bv≡a2+b2≡0(modM),av−bu≡ab−ba=0(modM)au + bv \equiv a^2 + b^2 \equiv 0 \pmod M, \qquad av - bu \equiv ab - ba = 0 \pmod M

であるから、A=(au+bv)/MA = (au + bv)/MとB=(av−bu)/MB = (av - bu)/Mはどちらも整数です。両辺をM2M^2で割ると

A2+B2=prA^2 + B^2 = pr

を得ます。1≤r<M<p1 \le r < M < pであるからr∈Sr \in Sであり、これはMMがSSの最小の要素であることに矛盾します。

したがってM=1M = 1であり、ppは二つの平方数の和として表されます。▨

6 素数であるという仮定が必要であること

定理 5.1は素数についての主張です。44で割った余りだけで判定することができるのは素数に限られ、一般の正の整数へそのまま広げることはできません。

注意 6.1 (余りが11でも表示を持たない合成数がある).2121は21≡1(mod4)21 \equiv 1 \pmod 4を満たすが、二つの平方数の和として表されない。21=a2+b221 = a^2 + b^2とするとa2≤21a^2 \le 21より∣a∣≤4\lvert a \rvert \le 4であり、21−a221 - a^2が21,20,17,12,521, 20, 17, 12, 5のいずれかになるが、どれも平方数ではないからである。3333、5757、6969も同様に、44で割った余りが11でありながら表示を持たない。

本記事は、素数が二つの平方数の和として表されるかどうかを扱うものであり、一般の正の整数についての判定は扱いません。

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