1 分割と分割数を定める
定義 1.1 (分割と分割数). 正の整数nに対し、
n=λ1+λ2+⋯+λr,λ1≥λ2≥⋯≥λr≥1を満たす正の整数の組(λ1,…,λr)をnの分割といい、各λiをその項という。項を大きい順に並べることで、和の順序の違いを同じ分割とみなす。nの分割の個数をp(n)と書き、分割数という。また、項が一つも無い和を0の分割とみなしてp(0)=1と定める。
分割は、順序を区別しない和への分け方です。3+1と1+3は4の同じ分割であり、二通りとは数えません。
例 1.2 (8以下の分割数).5の分割をすべて書き出すと
5,4+1,3+2,3+1+1,2+2+1,2+1+1+1,1+1+1+1+1の7通りであるからp(5)=7である。同じように数えると、次の値が得られる。
| n |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
| p(n) |
1 |
1 |
2 |
3 |
5 |
7 |
11 |
15 |
22 |
分割を一つずつ書き出す数え方では、nが大きくなるにつれて書き出す個数が急に増えます。そこで、p(n)を一つずつ求める代わりに、すべてのnについての値を係数として一列に並べたものを、一つの対象として扱います。
2 分割数の母関数
分割を決めることは、各正の整数kについて「kを何個使うか」を決めることと同じです。kをm個使うと和にkmが加わるので、kについての選択を1+xk+x2k+⋯という級数で表し、それらをkについて掛け合わせます。
定理 2.1 (分割数の母関数). 形式的なべき級数として
n≥0∑p(n)xn=k≥1∏1−xk1が成り立つ。
証明.nを固定し、両辺のxnの係数を比べます。注意 2.2により、右辺のxnの係数は
k=1∏n(1+xk+x2k+⋯)のxnの係数と一致します。この積を展開すると、各k(1≤k≤n)についてxkmkという項を一つずつ選び、それらを掛け合わせた項
x1⋅m1+2⋅m2+⋯+n⋅mnが、0以上の整数の組(m1,…,mn)ごとにちょうど一つ現れます。したがってxnの係数は、
1⋅m1+2⋅m2+⋯+n⋅mn=nを満たす0以上の整数の組(m1,…,mn)の個数です。
一方、nの分割は、各kについて「項kが何個現れるか」をmkとすることで、そのような組と一対一に対応します。項の個数を与えれば分割が定まり、分割からは各項の個数が定まるからです。よってxnの係数はp(n)に等しくなります。▨
例 2.3 (係数を実際に読み取る).x5までの係数を求めるには、k≤5の因子をx5までで打ち切れば足りる。
(1+x+x2+x3+x4+x5)(1+x2+x4)(1+x3)(1+x4)(1+x5)を順に展開し、そのつどx6以上の項を落とすと
→ → → 1+x+2x2+2x3+3x4+3x51+x+2x2+3x3+4x4+5x51+x+2x2+3x3+5x4+6x51+x+2x2+3x3+5x4+7x5となる。係数の並び1,1,2,3,5,7は例 1.2のp(0),…,p(5)と一致する。
3 項を制限した分割の母関数
分割の項に条件を付けても、同じ考え方で母関数を作ることができます。
定義 3.1 (相異なる数への分割と奇数への分割). 正の整数nの分割のうち、項がすべて相異なるものの個数をpd(n)と書く。また、項がすべて奇数であるものの個数をpo(n)と書く。後者では、同じ奇数が何度現れてもよい。pd(0)=po(0)=1と定める。
定理 3.2 (制限した分割の母関数). 形式的なべき級数として
n≥0∑pd(n)xn=k≥1∏(1+xk),n≥0∑po(n)xn=k は奇数∏1−xk1が成り立つ。
証明. 第一の等式では、各kについて「kを使わない」か「kを一度だけ使う」かの二択なので、kに対応する因子は1+xkです。定理 2.1の証明と同じ数え方によって、xnの係数は、相異なる項からなるnの分割の個数に等しくなります。
第二の等式では、奇数kについて「kを何個使うか」を決め、偶数は使いません。よって奇数kに対応する因子だけを掛け合わせ、xnの係数は、奇数だけを項とするnの分割の個数に等しくなります。▨
4 相異なる数への分割と奇数への分割は同じ個数である
二つの母関数は、見た目には無関係です。しかし、一方を変形すると他方に一致します。
定理 4.1 (相異なる数への分割と奇数への分割). すべての0以上の整数nについてpd(n)=po(n)が成り立つ。
証明.定理 3.2の二つの母関数が、形式的なべき級数として等しいことを示します。
nを固定し、xn+1以上の項を無視して比べます。注意 2.2と同じ理由で、どちらの母関数についても、xnまでの係数はk≤nの因子だけで決まります。そこで
k=1∏n(1+xk)を考えます。各kについて(1+xk)(1−xk)=1−x2kであり、1−xkは定数項が1であるから形式的なべき級数として逆元を持ちます。よって
k=1∏n(1+xk)=∏k=1n(1−xk)∏k=1n(1−x2k)です。右辺の分子に現れる因子の指数は2,4,…,2n、分母に現れる因子の指数は1,2,…,nです。共通する因子は指数がn以下の偶数であるものなので、それらを約分すると、分子には指数がnより大きい偶数の因子だけが、分母には指数がn以下の奇数の因子だけが残ります。
分子に残る因子1−x2kは2k>nを満たすので、xn+1以上の項を無視すれば1です。したがって
k=1∏n(1+xk)≡k≤nk は奇数∏1−xk1(modxn+1)が成り立ちます。両辺のxnの係数は、定理 3.2によりそれぞれpd(n)とpo(n)です。nは任意であったから、すべてのnについてpd(n)=po(n)です。▨
例 4.2 (n=6とn=7で確かめる).n=6のとき、項が相異なる分割は
6,5+1,4+2,3+2+1の4通り、項がすべて奇数である分割は
5+1,3+3,3+1+1+1,1+1+1+1+1+1の4通りである。n=7のとき、項が相異なる分割は
7,6+1,5+2,4+3,4+2+1の5通り、項がすべて奇数である分割は
7,5+1+1,3+3+1,3+1+1+1+1,1+1+1+1+1+1+1の5通りである。どちらのnでも個数が一致する。
5 分割数の増え方