§A4.16ペル方程式と連分数

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ペル方程式は、平方数でない正整数DDに対するx2−Dy2=1x^2-Dy^2=1という整数方程式です。本記事ではD\sqrt Dの連分数から基本解を求め、基本解から非自明な正整数解の全体を構成します。

1 定義と解の合成

定義 1.1 (ペル方程式).DDを平方数でない正の整数とする。整数解(x,y)(x, y)を求める方程式

x2−Dy2=1x^2 - Dy^2 = 1

をペル方程式という。(x,y)=(±1,0)(x, y) = (\pm 1, 0)は常に解であり、これを自明解という。

DDが平方数でD=k2D=k^2と書ける場合には、

x2−Dy2=(x−ky)(x+ky)=1x^2-Dy^2=(x-ky)(x+ky)=1

となります。二つの整数の積が11になるのは両方が11、または両方が−1-1の場合だけなので、この場合には自明解しかありません。したがって、DDが平方数でないという仮定が必要です。

解の合成を記述するため、α=x+yD\alpha=x+y\sqrt Dに対してαˉ=x−yD\bar\alpha=x-y\sqrt D、N(α)=ααˉN(\alpha)=\alpha\bar\alphaとおきます。このときN(α)=x2−Dy2N(\alpha)=x^2-Dy^2です。

定理 1.2 (解の合成).DDを平方数でない正整数とする。(x1,y1)(x_1,y_1)と(x2,y2)(x_2,y_2)がともにx2−Dy2=1x^2-Dy^2=1の整数解ならば、

(x1x2+Dy1y2, x1y2+x2y1)(x_1 x_2 + D y_1 y_2,\ x_1 y_2 + x_2 y_1)

もペル方程式の解である。

証明.α1=x1+y1D\alpha_1=x_1+y_1\sqrt D、α2=x2+y2D\alpha_2=x_2+y_2\sqrt Dとおく。積を展開すると

α1α2=(x1+y1D)(x2+y2D)=(x1x2+Dy1y2)+(x1y2+x2y1)D,\alpha_1 \alpha_2 = (x_1 + y_1\sqrt D)(x_2 + y_2\sqrt D) = (x_1 x_2 + D y_1 y_2) + (x_1 y_2 + x_2 y_1)\sqrt D,

となる。共役をとると

α1α2‾=(x1x2+Dy1y2)−(x1y2+x2y1)D=(x1−y1D)(x2−y2D)=αˉ1αˉ2\overline{\alpha_1\alpha_2} = (x_1x_2+Dy_1y_2) - (x_1y_2+x_2y_1)\sqrt D = (x_1 - y_1\sqrt D)(x_2 - y_2\sqrt D) = \bar\alpha_1 \bar\alpha_2

である。したがって

N(α1α2)=α1α2⋅α1α2‾=α1α2⋅αˉ1αˉ2=(α1αˉ1)(α2αˉ2)=N(α1)N(α2).N(\alpha_1\alpha_2) = \alpha_1\alpha_2 \cdot \overline{\alpha_1\alpha_2} = \alpha_1\alpha_2 \cdot \bar\alpha_1\bar\alpha_2 = (\alpha_1\bar\alpha_1)(\alpha_2\bar\alpha_2) = N(\alpha_1) N(\alpha_2).

が成り立つ。仮定よりN(α1)=N(α2)=1N(\alpha_1)=N(\alpha_2)=1であるから、N(α1α2)=1N(\alpha_1\alpha_2)=1である。これは主張の整数の組がx2−Dy2=1x^2-Dy^2=1を満たすことを意味する。▨

非自明な正の解を一つ得ると、定理 1.2を繰り返し適用して無限個の解を作ることができます。残る問題は、最初の正の解を連分数から構成することと、その構成ですべての解を得られることを示すことです。

2 平方根の周期連分数

定理 2.1.DDを平方数でない正整数とし、a0=⌊D⌋a_0=\lfloor\sqrt D\rfloorとする。整数の組(Pk,Qk)(P_k,Q_k)と整数aka_kを

P0=0,Q0=1,ak=⌊D+PkQk⌋,P_0=0,\qquad Q_0=1,\qquad a_k=\left\lfloor\frac{\sqrt D+P_k}{Q_k}\right\rfloor,Pk+1=akQk−Pk,Qk+1=D−Pk+12QkP_{k+1}=a_kQ_k-P_k,\qquad Q_{k+1}=\frac{D-P_{k+1}^2}{Q_k}

によって定める。この計算では常に

0≤Pk<D,Qk>0,Qk∣D−Pk20\le P_k<\sqrt D,\qquad Q_k>0,\qquad Q_k\mid D-P_k^2

が成り立つ。また、(Pℓ,Qℓ)=(a0,1)(P_\ell,Q_\ell)=(a_0,1)となる最小の整数ℓ≥1\ell\ge1が存在し、

D=[a0;a1,a2,…,aℓ‾],aℓ=2a0\sqrt D=[a_0;\overline{a_1,a_2,\ldots,a_\ell}],\qquad a_\ell=2a_0

である。したがって、(Pk,Qk)=(a0,1)(P_k,Q_k)=(a_0,1)を初めて得た時点が一周期の計算の停止条件になる。

証明.P0=0P_0=0、Q0=1Q_0=1とし、表示された漸化式によって各項を順に定める。Q0Q_0はD−P02D-P_0^2を割る。Qk∣D−Pk2Q_k\mid D-P_k^2が成り立つとき、Pk+1≡−Pk(modQk)P_{k+1}\equiv-P_k\pmod{Q_k}であるから、Qk∣D−Pk+12Q_k\mid D-P_{k+1}^2である。したがってQk+1Q_{k+1}は整数である。

αk=(D+Pk)/Qk\alpha_k=(\sqrt D+P_k)/Q_kとおく。ak=⌊αk⌋a_k=\lfloor\alpha_k\rfloorとPk+1=akQk−PkP_{k+1}=a_kQ_k-P_kを用いて分母を有理化すると

1αk−ak=QkD−Pk+1=D+Pk+1Qk+1=αk+1\frac1{\alpha_k-a_k} =\frac{Q_k}{\sqrt D-P_{k+1}} =\frac{\sqrt D+P_{k+1}}{Q_{k+1}} =\alpha_{k+1}

となる。k=1k=1ではP1=a0P_1=a_0、Q1=D−a02>0Q_1=D-a_0^2>0であり、

P1−DQ1=−1D+a0\frac{P_1-\sqrt D}{Q_1}=-\frac1{\sqrt D+a_0}

は−1-1より大きく00より小さい。またα1=1/(D−a0)>1\alpha_1=1/(\sqrt D-a_0)>1である。αk>1\alpha_k>1かつ−1<(Pk−D)/Qk<0-1<(P_k-\sqrt D)/Q_k<0と仮定する。αk−ak\alpha_k-a_kは00より大きく11より小さいので、

0<D−Pk+1<Qk0<\sqrt D-P_{k+1}<Q_k

である。また(Pk−D)/Qk−ak<−1(P_k-\sqrt D)/Q_k-a_k<-1であるからD+Pk+1>Qk>0\sqrt D+P_{k+1}>Q_k>0である。よって∣Pk+1∣<D|P_{k+1}|<\sqrt Dであり、Qk+1=(D−Pk+12)/Qk>0Q_{k+1}=(D-P_{k+1}^2)/Q_k>0である。さらに

αk+1=1αk−ak>1,Pk+1−DQk+1=1(Pk−D)/Qk−ak\alpha_{k+1}=\frac1{\alpha_k-a_k}>1, \qquad \frac{P_{k+1}-\sqrt D}{Q_{k+1}} =\frac1{(P_k-\sqrt D)/Q_k-a_k}

である。右辺の分母は−1-1より小さいので

−1<Pk+1−DQk+1<0-1<\frac{P_{k+1}-\sqrt D}{Q_{k+1}}<0

となる。αk+1>1\alpha_{k+1}>1と最後の不等式を加え、Qk+1>0Q_{k+1}>0を用いるとPk+1>0P_{k+1}>0が得られる。帰納法により、主張した整数性、正値、整除関係がすべてのkkで成り立つ。

k≥1k\ge1では、整数PkP_kは0<Pk<D0<P_k<\sqrt Dを満たし、正整数QkQ_kはD−Pk2D-P_k^2の約数である。したがって、現れる組(Pk,Qk)(P_k,Q_k)の候補は有限個しかない。さらに−1<(Pk−D)/Qk-1<(P_k-\sqrt D)/Q_kからPk+Qk>DP_k+Q_k>\sqrt Dである。次の状態(P′,Q′)(P',Q')が分かれば、直前の状態の第二成分は

Q=D−(P′)2Q′Q=\frac{D-(P')^2}{Q'}

によって定まる。直前の第一成分PPはP≡−P′(modQ)P\equiv-P'\pmod QとD−Q<P<D\sqrt D-Q<P<\sqrt Dを満たす。この長さQQの区間には、同じ剰余をもつ整数は高々一つしかない。したがって、状態の移り方には逆向きにも分岐がない。有限個の状態を進む列は、最初の状態(P1,Q1)(P_1,Q_1)へ戻ってから同じ列を繰り返す。

(P1,Q1)=(a0,D−a02)(P_1,Q_1)=(a_0,D-a_0^2)の直前の状態ではQ=(D−a02)/Q1=1Q=(D-a_0^2)/Q_1=1である。またD−1<P<D\sqrt D-1<P<\sqrt Dを満たす整数はP=a0P=a_0だけである。よって、ある最小のℓ≥1\ell\ge1で(Pℓ,Qℓ)=(a0,1)(P_\ell,Q_\ell)=(a_0,1)となり、その次に(P1,Q1)(P_1,Q_1)が再び現れる。aka_kは状態から一意に定まるので、a1,…,aℓa_1,\ldots,a_\ellが繰り返される。最後にaℓ=⌊D+a0⌋=2a0a_\ell=\lfloor\sqrt D+a_0\rfloor=2a_0である。▨

定理 2.2.DDを平方数でない正整数とし、定理 2.1の周期長をℓ\ellとする。近似分数pk/qk=[a0;a1,…,ak]p_k/q_k=[a_0;a_1,\ldots,a_k]を

p−2=0,p−1=1,pk=akpk−1+pk−2,p_{-2}=0,\quad p_{-1}=1,\quad p_k=a_kp_{k-1}+p_{k-2},q−2=1,q−1=0,qk=akqk−1+qk−2q_{-2}=1,\quad q_{-1}=0,\quad q_k=a_kq_{k-1}+q_{k-2}

によって計算すると、すべてのk≥0k\ge0について

pk2−Dqk2=(−1)k+1Qk+1p_k^2-Dq_k^2=(-1)^{k+1}Q_{k+1}

が成り立つ。したがって、pk2−Dqk2=1p_k^2-Dq_k^2=1が初めて成り立つ添字は、ℓ\ellが偶数ならk=ℓ−1k=\ell-1、ℓ\ellが奇数ならk=2ℓ−1k=2\ell-1である。

証明.pk,qkp_k,q_kの漸化式から

pkqk−1−pk−1qk=(−1)k+1p_kq_{k-1}-p_{k-1}q_k=(-1)^{k+1}

が帰納的に得られる。完全商αk+1=(D+Pk+1)/Qk+1\alpha_{k+1}=(\sqrt D+P_{k+1})/Q_{k+1}を末尾に残して有限連分数を漸化式でまとめると

D=pkαk+1+pk−1qkαk+1+qk−1\sqrt D=\frac{p_k\alpha_{k+1}+p_{k-1}} {q_k\alpha_{k+1}+q_{k-1}}

となる。αk+1\alpha_{k+1}を代入し、有理数部分とD\sqrt Dの係数を比較すると

pk=Pk+1qk+Qk+1qk−1,Dqk=Pk+1pk+Qk+1pk−1p_k=P_{k+1}q_k+Q_{k+1}q_{k-1},\qquad Dq_k=P_{k+1}p_k+Q_{k+1}p_{k-1}

を得る。したがって

pk2−Dqk2=pk(pk−Pk+1qk)−Qk+1pk−1qk=Qk+1(pkqk−1−pk−1qk)=(−1)k+1Qk+1.\begin{aligned} p_k^2-Dq_k^2 &=p_k(p_k-P_{k+1}q_k)-Q_{k+1}p_{k-1}q_k\\ &=Q_{k+1}(p_kq_{k-1}-p_{k-1}q_k)\\ &=(-1)^{k+1}Q_{k+1}. \end{aligned}

Qk+1=1Q_{k+1}=1なら、定理 2.1の証明で得たD−Qk+1<Pk+1<D\sqrt D-Q_{k+1}<P_{k+1}<\sqrt DによりPk+1=a0P_{k+1}=a_0である。したがってQk+1=1Q_{k+1}=1となるのはk+1k+1がℓ\ellの正の倍数である場合に限る。(−1)k+1=1(-1)^{k+1}=1も必要なので、条件を満たす最小のk+1k+1は、ℓ\ellが偶数ならℓ\ell、ℓ\ellが奇数なら2ℓ2\ellである。

D=2D=2では(P1,Q1)=(1,1)(P_1,Q_1)=(1,1)でℓ=1\ell=1であり、指定された添字k=1k=1ではp1/q1=[1;2]=3/2p_1/q_1=[1;2]=3/2、32−2⋅22=13^2-2\cdot2^2=1となる。D=3D=3では(P1,Q1)=(1,2)(P_1,Q_1)=(1,2)、(P2,Q2)=(1,1)(P_2,Q_2)=(1,1)でℓ=2\ell=2であり、指定された添字k=1k=1ではp1/q1=[1;1]=2/1p_1/q_1=[1;1]=2/1、22−3⋅12=12^2-3\cdot1^2=1となる。二つの小さい場合でも添字は一致する。▨

以上により、周期を計算すれば非自明な正の解が得られます。次の定理では、その解が基本解であり、解を合成する方法ですべての整数解が得られることを示します。

定理 2.3 (ラグランジュの定理).DDを平方数でない正整数とする。ペル方程式は非自明な正整数解をもち、x+yD>1x+y\sqrt D>1が最小となる正整数解(x,y)(x,y)が存在する。この解を基本解と呼ぶ。定理 2.2が指定する近似分数が基本解を与える。基本解をε=x1+y1D\varepsilon=x_1+y_1\sqrt Dと書けば、すべての正整数解は

εn=xn+ynD(n=1,2,3,…)\varepsilon^n=x_n+y_n\sqrt D\qquad(n=1,2,3,\ldots)

によって尽くされる。整数解全体は(±1,0)(\pm1,0)と、n≥1n\ge1に対する(±xn,±yn)(\pm x_n,\pm y_n)であり、二つの符号は独立に選べる。

証明.定理 2.2が指定する近似分数をp/qp/qとすれば、p2−Dq2=1p^2-Dq^2=1であり、p,qp,qは正整数である。したがって非自明な正整数解が存在する。

正整数解(x,y)(x,y)に対してx2−Dy2=1x^2-Dy^2=1ならgcd⁡(x,y)=1\gcd(x,y)=1であり、

0<∣D−xy∣=1y2(D+x/y)<12y20<\left|\sqrt D-\frac{x}{y}\right| =\frac1{y^2(\sqrt D+x/y)}<\frac1{2y^2}

である。ここで、無理数θ\theta、整数cc、正整数ddについて、既約分数c/dc/dが∣θ−c/d∣<1/(2d2)|\theta-c/d|<1/(2d^2)を満たすなら、c/dc/dはθ\thetaの近似分数であることを示す。θ\thetaの近似分数をpj/qjp_j/q_jとし、qj≤dq_j\le dとなる最大のjjを取る。このときqj≤d<qj+1q_j\le d<q_{j+1}である。Q=qjQ=q_j、R=qj−1R=q_{j-1}、t=[aj+1;aj+2,…]t=[a_{j+1};a_{j+2},\ldots]、a=⌊t⌋a=\lfloor t\rfloorとおくと

θ=pjt+pj−1Qt+R,qj+1=aQ+R,\theta=\frac{p_jt+p_{j-1}}{Qt+R},\qquad q_{j+1}=aQ+R,

かつ0≤R≤Q0\le R\le Qである。連続する近似分数の行列式は±1\pm1なので、ある整数U,VU,Vが存在して

(c,d)=U(pj,Q)+V(pj−1,R)(c,d)=U(p_j,Q)+V(p_{j-1},R)

と書ける。この表示と上の分数表示から

∣θ−cd∣=∣U−Vt∣d(Qt+R)\left|\theta-\frac cd\right| =\frac{|U-Vt|}{d(Qt+R)}

を得る。

V=0V=0なら、c/dc/dが既約でd>0d>0であることからU=1U=1であり、c/d=pj/qjc/d=p_j/q_jである。V≠0V\ne0とする。V<0V<0ならd=UQ+VR≥Qd=UQ+VR\ge QからU>0U>0であり、2d∣U−Vt∣≥2Q(1+t)>Qt+R2d|U-Vt|\ge2Q(1+t)>Qt+Rである。V>0V>0かつU≤0U\le0なら2d∣U−Vt∣≥2Qt>Qt+R2d|U-Vt|\ge2Qt>Qt+Rである。

U,V>0U,V>0の場合には、d<aQ+Rd<aQ+Rから1≤U≤a−11\le U\le a-1である。2d(Vt−U)2d(Vt-U)はVVとともに増加するので、V=1V=1の場合を調べれば足りる。r=R/Qr=R/Qとおくと、必要な不等式は

2(U+r)(t−U)≥t+r2(U+r)(t-U)\ge t+r

である。左辺と右辺の差はUUについて下向きに開く二次式なので、1≤U≤a−11\le U\le a-1における最小値は端点で得られる。t=a+ft=a+f、0<f<10<f<1と書けば、U=1U=1での差は

t−2+r(2t−3)≥0,t-2+r(2t-3)\ge0,

U=a−1U=a-1での差は

a−2+(2a−3)f+r(1+2f)≥0a-2+(2a-3)f+r(1+2f)\ge0

である。したがってV≠0V\ne0のすべての場合に

∣θ−cd∣≥12d2\left|\theta-\frac cd\right|\ge\frac1{2d^2}

となる。仮定に反するのでV=0V=0であり、c/dc/dは近似分数である。

この近似判定により、ペル方程式のすべての正整数解x/yx/yはD\sqrt Dの近似分数に現れる。定理 2.2は値11を初めて与える添字を特定しているので、そこで得る解をε=x1+y1D\varepsilon=x_1+y_1\sqrt Dとすれば、x1+y1D>1x_1+y_1\sqrt D>1は正整数解の中で最小である。実際、t>1t>1に対して(t−t−1)/(2D)(t-t^{-1})/(2\sqrt D)は狭義に増加し、解ではy=(t−t−1)/(2D)y=(t-t^{-1})/(2\sqrt D)であるから、より小さい解はより小さい分母をもつ。近似分数の分母は漸化式により添字とともに増加し、指定された近似分数より小さい分母はそれより前の添字にしか現れない。したがって、そのような解は存在しない。

α=x+yD\alpha=x+y\sqrt Dを任意の正整数解とする。ε>1\varepsilon>1であり、εn≥1+n(ε−1)\varepsilon^n\ge1+n(\varepsilon-1)であるから、ある整数r≥0r\ge0が存在して

εr≤α<εr+1\varepsilon^r\le\alpha<\varepsilon^{r+1}

となる。εr=A+BD\varepsilon^r=A+B\sqrt Dと書けばε−r=A−BD\varepsilon^{-r}=A-B\sqrt Dであり、

β=αε−r=(xA−DyB)+(yA−xB)D\beta=\alpha\varepsilon^{-r} =(xA-DyB)+(yA-xB)\sqrt D

は整数係数をもち、1≤β<ε1\le\beta<\varepsilonかつββˉ=1\beta\bar\beta=1を満たす。β=X+YD\beta=X+Y\sqrt Dと書くと

X=β+β−12≥1,Y=β−β−12D≥0X=\frac{\beta+\beta^{-1}}2\ge1,\qquad Y=\frac{\beta-\beta^{-1}}{2\sqrt D}\ge0

である。β>1\beta>1なら(X,Y)(X,Y)は基本解より小さい非自明な正整数解となるので、基本解の最小性に反する。よってβ=1\beta=1であり、α=εr\alpha=\varepsilon^rである。

最後に、非自明な整数解(x,y)(x,y)ではxxとyyはともに00でない。方程式はxxとyyのそれぞれの符号を変えても保たれるので、(∣x∣,∣y∣)(|x|,|y|)に正整数解の分類を適用できる。これに自明解(±1,0)(\pm1,0)を加えると、主張した整数解全体が得られる。▨

3 具体例

例 3.1.D=2D=2では2=[1;2‾]=[1;2,2,2,…]\sqrt2=[1;\overline2]=[1;2,2,2,\ldots]である。近似分数を計算すると

[1]=1,[1;2]=1+12=32.[1] = 1,\qquad [1; 2] = 1 + \frac{1}{2} = \frac{3}{2}.

3/23/2に対応する(x,y)=(3,2)(x,y)=(3,2)について

32−2×22=9−8=13^2 - 2 \times 2^2 = 9 - 8 = 1

であるから、この組が基本解である。定理 1.2により基本解を合成すると

(3+22)2=9+122+8=17+122(3 + 2\sqrt2)^2 = 9 + 12\sqrt2 + 8 = 17 + 12\sqrt2

であるから、次の解は(x,y)=(17,12)(x,y)=(17,12)である。元の方程式へ代入すると

172−2×122=289−288=117^2 - 2 \times 12^2 = 289 - 288 = 1

となる。以後も(3+22)3,(3+22)4,…(3+2\sqrt2)^3,(3+2\sqrt2)^4,\ldotsによって解が得られる。

注意 3.2.DDが少し変わるだけで、基本解の大きさは大きく変化する。D=61D=61の基本解は

(x,y)=(1766319049, 226153980)(x, y) = (1766319049,\ 226153980)

という非常に大きな解である。フェルマーは1657年、イギリスの数学者たちへの問題の中でD=61D=61とD=109D=109を具体的に指定した。フェルマーは、これらのDDでは最小解が大きくなることを知ったうえで選んだと考えられている。DDの小さな変化によって基本解が大きく変わる現象は、連分数の周期の長さと密接に関係している。

注意 3.3. 近似分数は、分母に比べて誤差が小さい有理数近似を与える。定理 2.3により、D\sqrt Dの近似分数はx2−Dy2=1x^2-Dy^2=1の基本解を具体的に生成する。実数の近似という性質が、整数係数の方程式の全解を構成する手順につながっている。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次のペル方程式 x² − D y² == 1(D は平方数でない正整数)について答えよ。基本解とは、自明解 (±1, 0) 以外で x, y がともに最小の正の解のことである。

解法の型解は (x + y√D) のノルム 1 の元。基本解 α1\alpha1== x1 + y1√D のべき α1\alpha1ⁿ を展開すると、すべての正の解が得られる

  1. ペル方程式 x² − 2 y² == 1 の基本解は (x, y) == (3, 2) である。(3 + 2√2)² を展開して、次の解を求めよ。

    (3+22)2=x+y2⇒(x,y)=?\left(3 + 2\sqrt{2}\right)^2 = x + y\sqrt{2} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  2. ペル方程式 x² − 5 y² == 1 の基本解(自明解以外で最小の正の解)を求めよ。

    x2−5y2=1x^2 - 5 y^2 = 1
  3. ペル方程式 x² − 6 y² == 1 の基本解は (x, y) == (5, 2) である。(5 + 2√6)² を展開して、次の解を求めよ。

    (5+26)2=x+y6⇒(x,y)=?\left(5 + 2\sqrt{6}\right)^2 = x + y\sqrt{6} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  4. ペル方程式 x² − 5 y² == 1 の基本解は (x, y) == (9, 4) である。(9 + 4√5)² を展開して、次の解を求めよ。

    (9+45)2=x+y5⇒(x,y)=?\left(9 + 4\sqrt{5}\right)^2 = x + y\sqrt{5} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  5. ペル方程式 x² − 2 y² == 1 について、基本解 (3, 2) と 2 番目の解 (17, 12) が分かっている。3 番目の解を求めよ。

    (3+22)3=(3+22)(17+122)=x+y2⇒(x,y)=?\left(3 + 2\sqrt{2}\right)^3 = \left(3 + 2\sqrt{2}\right)\left(17 + 12\sqrt{2}\right) = x + y\sqrt{2} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  6. ペル方程式 x² − 8 y² == 1 について、基本解 (3, 1) と 2 番目の解 (17, 6) が分かっている。3 番目の解を求めよ。

    (3+8)3=(3+8)(17+68)=x+y8⇒(x,y)=?\left(3 + \sqrt{8}\right)^3 = \left(3 + \sqrt{8}\right)\left(17 + 6\sqrt{8}\right) = x + y\sqrt{8} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  7. ペル方程式 x² − 6 y² == 1 について、基本解 (5, 2) と 2 番目の解 (49, 20) が分かっている。3 番目の解を求めよ。

    (5+26)3=(5+26)(49+206)=x+y6⇒(x,y)=?\left(5 + 2\sqrt{6}\right)^3 = \left(5 + 2\sqrt{6}\right)\left(49 + 20\sqrt{6}\right) = x + y\sqrt{6} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  8. ペル方程式 x² − 5 y² == 1 について、基本解 (9, 4) と 2 番目の解 (161, 72) が分かっている。3 番目の解を求めよ。

    (9+45)3=(9+45)(161+725)=x+y5⇒(x,y)=?\left(9 + 4\sqrt{5}\right)^3 = \left(9 + 4\sqrt{5}\right)\left(161 + 72\sqrt{5}\right) = x + y\sqrt{5} \quad \Rightarrow \quad (x, y) = ?
  9. ペル方程式 x² − 2 y² == 1 の基本解(自明解以外で最小の正の解)を求めよ。

    x2−2y2=1x^2 - 2 y^2 = 1
  10. ペル方程式 x² − 13 y² == 1 の基本解(自明解以外で最小の正の解)を求めよ。

    x2−13y2=1x^2 - 13 y^2 = 1

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次のペル方程式 x² − D y² == 1(D は平方数でない正整数)について答えよ。基本解とは、自明解 (±1, 0) 以外で x, y がともに最小の正の解のことである。

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