1 どの法で考えるか
法を選ぶ基準は、その法で式が簡単になることです。法を大きく取れば、そのぶん多くの情報を含みますが、含まれる情報を取り出せるとは限りません。目安は次の3つです。
- 累乗が消える法。pが素数でp∤aならap−1≡1(modp)です。フェルマーの小定理により指数をp−1ごとに整理できます。
- 余りの種類が少ない法。 平方数の余りは、法4では0,1、法8では0,1,4、法3では0,1だけです。「平方数である」という条件を少数の場合分けに翻訳できます。
- 互いに素な法へ分解する。 「30で割り切れる」は「2、3、5のそれぞれで割り切れる」と同値です。合成数を法とする主張を素因数ごとの主張へ分け、それぞれを簡単な法で処理します。
例 1.1 (n5−nの整除). 任意の整数nについて30∣n5−nである。30=2⋅3⋅5と分解し、n5−n=n(n4−1)を法2、法3、法5で調べる。
- 法2。nが偶数なら2∣nである。nが奇数ならn4も奇数なので、2∣n4−1である。
- 法3。n≡0(mod3)なら3∣nである。n≡±1(mod3)ならn2≡1(mod3)であるから、3∣n4−1である。
- 法5。5∣nなら5∣n5−nである。5∤nなら、5が素数であるからフェルマーの小定理を適用でき、n4≡1(mod5)である。
したがって、n5−nは2、3、5のそれぞれで割り切れる。2,3,5はどの二つも互いに素であるから、30∣n5−nである。
法を30に取ると、nの余りを30通り調べることになります。素数ごとに分ければ、各法について高々5通りを調べれば足ります。したがって、法を大きく取るほど処理が簡単になるとは限りません。
例 1.2 (平方数の法4における余り). 任意の整数xに対してx2≡0または1(mod4)であり、x2≡2(mod4)とはならない。xが偶数ならx=2kと書けるのでx2=4k2≡0(mod4)である。xが奇数ならx=2k+1と書けるので
x2=4k(k+1)+1≡1(mod4)である。二つの場合で整数を尽くすので、結論を得る。
この判定は、方程式を満たす整数の偶奇を定めるために使うことができます。偶奇を定めた後で、素因数の指数や無限降下の議論へ進みます。
例 1.3 (素数の平方の法24における余り).p>3を素数とする。pは奇数なのでp=2k+1と書け、p2−1=4k(k+1)である。k(k+1)は連続する二整数の積なので偶数であり、8∣p2−1、すなわちp2≡1(mod8)である。
また、p>3は素数なので3∤pである。したがってp≡±1(mod3)であり、p2≡1(mod3)である。8と3は互いに素であり、8∣p2−1と3∣p2−1がともに成り立つので、24∣p2−1である。よってp2≡1(mod24)である。
法24を直接扱えば、pの余りを一つずつ調べることになります。法8と法3に分けると、奇数であることと3の倍数でないことを別々に利用できます。
2 どの素数の指数に着目するか
平方数や累乗を含む問題では、素数pごとに指数vp(n)を比べます。ここでvp(n)は、正整数nを割り切るpのべきの最大の指数です。素因数分解の一意性から、vp(ab)=vp(a)+vp(b)が成り立ちます。また、正整数nが平方数であることは、すべての素数pについてvp(n)が偶数であることと同値です。したがって、積についての条件を素数ごとの指数の条件へ移すことができます。
次の補題は、この指数の比較をまとめたものです。
補題 2.1 (互いに素な積が平方数). 互いに素な正整数u,vの積uvが平方数なら、uとvはそれぞれ平方数である。
証明. 素数pを任意に取る。uとvは互いに素なので、vp(u)とvp(v)の少なくとも一方は0である。一方、uvは平方数であるから
vp(u)+vp(v)=vp(uv)は偶数である。したがってvp(u)とvp(v)はともに偶数である。これはすべての素数pで成り立つので、uとvはそれぞれ平方数である。▨
互いに素という仮定は必要です。実際、2×8=16は平方数ですが、2も8も平方数ではありません。共通因子がある場合には、最大公約数を分離してから補題を適用します。
3 どの量を最小にするか
正整数の空でない集合には最小元があります。したがって、解が存在すると仮定し、ある正整数値が最小となる解から、同じ条件を満たしてその値がさらに小さい解を作れば、最小性に反します。
標準形は次のとおりです。
- 正整数解があると仮定します。
- その中でzなどの正整数値が最小となる解を選びます。
- 偶奇、最大公約数、合同式から構造を取り出します。
- 同じ条件を満たし、選んだ値がより小さい正整数解を構成します。
- 最小性に反することを示します。
無限に小さくなる解があると述べるだけでは、降下の証明にはなりません。最小の解から一段小さい正整数解を構成することが必要です。降下法の一般的な形は 無限降下法 で扱います。ここでは、斜辺、最大の変数、分母、補助変数などのうち、どの正整数値を最小にするかという選択に注目します。
例 3.1 (x2=2y2に対する降下).x2=2y2を満たす正整数解が存在すると仮定し、その中からxが最小となる解(x,y)を取る。x2は偶数なのでxは偶数であり、正整数u=x/2を用いてx=2uと書ける。すると
4u2=2y2,y2=2u2
となる。したがって、(y,u)はY2=2U2を満たす正整数の組であり、元と同じ方程式の解である。またx2=2y2>y2でx,y>0だからy<xである。新しい解(y,u)の第一成分は元の解の第一成分より小さく、xの最小性に反する。よって正整数解は存在しない。
もし2=x/yと正整数x,yを用いて書けたならx2=2y2となるので、2は無理数である。この証明では分数を既約にする操作を用いず、正整数解の最小性だけを用いている。
4 三つの判断をつなぐ:x4+y4=z2
不定方程式を扱うときには、合同式で偶奇と余りを絞り、残った積から素因数の指数を読み、最後に最小性を用いて降下させることがあります。次の例では、三つの判断が順に現れます。
例 4.1 (x4+y4=z2に対する三つの判断).x4+y4=z2を満たす正整数解が存在すると仮定し、その中からzが最小となる解(x,y,z)を取る。
第1段(互いに素にする)。 素数pがxとyの両方を割ると仮定する。このときp4∣z2であるから、素因数の指数を比較するとp2∣zである。したがって(x/p,y/p,z/p2)は正整数の組であり、
(px)4+(py)4=(p2z)2を満たす。さらにz/p2<zであり、zの最小性に反する。よってgcd(x,y)=1である。
第2段(法4で偶奇を決める)。(x2)2+(y2)2=z2と読むと、gcd(x2,y2)=1を満たすピタゴラス数である。x,yは両方偶数ではない。両方奇数ならz2≡1+1≡2(mod4)となり、例 1.2に反する。よってx,yの一方だけが偶数である。必要ならx,yを入れ替え、xを偶数、yを奇数とする。
原始ピタゴラス数の一般形(フェルマーの最終定理n=4 で証明したもの)より、互いに素で偶奇の異なる正整数m>n>0があって
x2=2mn,y2=m2−n2,z=m2+n2
と書ける。m,nの偶奇は異なる。mが偶数でnが奇数ならm2−n2≡3(mod4)となるが、yは奇数なのでy2≡1(mod4)である。したがってmは奇数で、nは偶数である。
第3段(指数に着目する)。nは偶数なので、正整数wを用いてn=2wと書く。x2=2mn=4mwより
(2x)2=mw
である。w∣nとgcd(m,n)=1からgcd(m,w)=1である。補題 2.1を適用するとmとwはそれぞれ平方数である。したがって、正整数u,vを用いて
m=u2,n=2v2
と書ける。mは奇数なのでuも奇数である。これをy2=m2−n2へ代入すると
y2=u4−4v4=(u2−2v2)(u2+2v2)
となる。二つの因子はともに奇数である。二つの因子を割る素数dがあると仮定すると、dは和2u2と差4v2を割る。dは奇数なのでd∣u2かつd∣v2である。一方、gcd(m,n)=1とm=u2,n=2v2からgcd(u,v)=1である。これは両立しない。よって二つの因子は互いに素である。積は平方数y2なので、補題 2.1により、正整数r,sを用いて
u2−2v2=r2,u2+2v2=s2
と書ける。第二の因子は正であり、二因子の積y2も正なので、第一の因子も正である。uが奇数なのでr,sはともに奇数である。またs>r>0である。差を取ると
s2−r2=4v2
である。s+rとs−rはともに正の偶数なので
2s+r⋅2s−r=v2
が成り立つ。ここでrとsは互いに素である。実際、両方を割る素数は、r2+s2=2u2とs2−r2=4v2を割る。r,sは奇数なので、その素数は奇数であり、uとvの両方を割ることになってgcd(u,v)=1に反する。
さらに(s+r)/2と(s−r)/2をともに割る整数はsとrをともに割るので、この二つの正整数も互いに素である。積は平方数v2なので、補題 2.1により、正整数p,qを用いて
2s+r=p2,2s−r=q2
と書ける。するとs=p2+q2、r=p2−q2であり、s2+r2=(u2+2v2)+(u2−2v2)=2u2から
u2=2s2+r2=p4+q4
となる。したがって(p,q,u)は正整数の組であり、元と同じ方程式X4+Y4=Z2を満たす。
第4段(降下)。m=u2とn>0より
u≤u2=m≤m2<m2+n2=z
なのでu<zである。新しい正整数解(p,q,u)の第三成分がzより小さいことは、zの最小性に反する。したがって、x4+y4=z2を満たす正整数解は存在しない。
5 何を選んだのか
この解答では、法4によって偶奇を定め、素因数の指数によって互いに素な積を二度処理し、最後にzの最小性を用いました。三つの判断をこの順に接続することが証明の構成を決めています。
同じ方程式を、原始ピタゴラス数の一般形を二度当てる別の道筋で降下させる証明が フェルマーの最終定理n=4 にあります。二つの方針を比べると、どの段階で指数の議論へ持ち込むかが違うことが見えます。
6 典型的な失敗
- 最小性を使う場合には、どの正整数値を最小にしたかを明記してください。
- 有限回の試行だけで解が存在しないと結論しないでください。無限個の整数を扱うには、合同式、評価、降下などによる一般的な議論が必要です。
- 合同式で必要条件を得ただけで、解が存在すると結論しないでください。合同式による絞り込みだけでは存在を示せません。
- 互いに素な積が平方数なら各因子が平方数であるという補題を使う直前に、二因子が互いに素であることを確認してください。
- 新しく作った組について、正整数性、元と同じ方程式を満たすこと、最小にした値が真に小さくなることを確認してください。
7 演習
- 任意の整数nについてn3−nが6で割り切れることを示してください。
- 素数p>3に対してp2−1が24で割り切れることを、法24でpのとりうる余りをすべて調べる方法で示してください。本文の方法と手間を比較してください。
- pを素数とします。x2≡1(modp)からx≡±1(modp)を示してください。
- 正整数x,yに対してx2=3y2が不可能であることを、3の倍数性を使った降下で示してください。
- x2−y2=1を満たす正整数x,yが存在しないことを、因数分解と最小性を用いて示してください。
- 正整数解を仮定すると降下できる不定方程式を一つ設計してください。最小にする正整数値を定め、各段階の正当性を説明してください。
無限降下は初等整数論の固有技法ですが、最小反例・極端原理という横断的な証明の型としても使えます。