1 真理集合の包含関係で判定する
定理 1.1.Xを全体集合とし、X上の条件p(x)、q(x)の真理集合をそれぞれP、Qとする。すべてのx∈Xについて条件文p(x)⇒q(x)が真であるための必要十分条件は、P⊆Qであることである。
証明. すべてのx∈Xについてp(x)⇒q(x)が真であると仮定し、x∈Pを任意に取る。真理集合の定義によりp(x)は真であるから、仮定した条件文によってq(x)も真である。したがってx∈Qであり、P⊆Qが成り立つ。
逆に、P⊆Qと仮定し、x∈Xを任意に取る。p(x)が真ならばx∈Pであり、P⊆Qからx∈Qとなるので、q(x)は真である。したがって、すべてのx∈Xについてp(x)⇒q(x)は真である。▨
定理 1.1により、真理集合が小さい条件から、真理集合が大きい条件への含意が成り立ちます。したがって、条件が満たされる範囲が狭いほど条件は強くなります。
四角形全体をXとすると、正方形の集合は長方形の集合に含まれます。この包含関係から、「正方形であること」は「長方形であること」であるための十分条件であり、「長方形であること」は「正方形であること」であるための必要条件です。
また、実数xについてp(x)をx>3、q(x)をx>1とします。このときP={x∈R∣x>3}⊆{x∈R∣x>1}=Qであるため、pはqであるための十分条件であり、qはpであるための必要条件です。
2 二つの向きを判定する
定理 2.1. 同じ全体集合上の二つの条件p、qについて、p⇒qとq⇒pの真偽を別々に調べると、pがqであるための条件として次の四つの場合に分類される。
| p⇒q |
q⇒p |
pの分類 |
| 真 |
真 |
必要十分条件 |
| 真 |
偽 |
十分条件であるが、必要条件ではない |
| 偽 |
真 |
必要条件であるが、十分条件ではない |
| 偽 |
偽 |
必要条件でも十分条件でもない |
証明.p⇒qが真であることは、定義によりpが十分条件であることを意味する。q⇒pが真であることは、定義によりpが必要条件であることを意味する。したがって、二つの条件文の真偽の四通りは、主張した四つの場合にそれぞれ対応する。特に両方が真である場合には、定理 1.1により二つの真理集合が互いに相手を含むので等しくなり、pとqは同値である。▨
一方の含意が偽であることを示すには、前件を満たして後件を満たさない対象を一つ挙げます。同値であることを示すには二つの向きをともに示す必要があり、一方の向きだけから同値と結論することはできません。
3 例:二乗によって生じる候補
例 3.1 (二乗した式の解が、元の方程式の解とは限らない). 実数xについての方程式x+2=xを考える。両辺を2乗するとx+2=x2となり、x2−x−2=0からx=2,−1が得られる。元の方程式が成り立てば二乗後の方程式も成り立つが、逆向きの含意はまだ示されていない。x=−1を元の方程式へ代入すると左辺は1=1、右辺は−1であり、等号は成り立たない。x=2を代入すると両辺はともに2であり、等号が成り立つ。したがって、元の方程式の解はx=2だけである。
この場面で「x+2=x2を満たすこと」は、「x+2=xを満たすこと」であるための必要条件ですが、十分条件ではありません。必要条件だけを用いて得た候補については、元の式を満たすかどうかを確かめる必要があります。式変形では、各段階が⇒だけを保つのか、⟺を保つのかを区別します。