§A3.5必要条件・十分条件・必要十分条件

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必要条件、十分条件、必要十分条件を、二つの条件のあいだにある含意の向きからどのように判別するのでしょうか。本記事では、条件文p⇒qp\Rightarrow qと二つの条件の真理集合を対象として、三つの関係を矢印の向きと包含関係から判別し、同値であることを二つの向きの含意に分けて確かめるところまで進みます。

定義 1 (必要条件・十分条件・必要十分条件). 条件文p⇒qp \Rightarrow qが真であるとき、ppをqqであるための十分条件といい、qqをppであるための必要条件という。p⇒qp \Rightarrow qとq⇒pq \Rightarrow pの両方が真であるとき、ppをqqであるための必要十分条件といい、p  ⟺  qp \iff qと書く。このとき、ppとqqは同値であるという。

1 真理集合の包含関係で判定する

定理 1.1.XXを全体集合とし、XX上の条件p(x)p(x)、q(x)q(x)の真理集合をそれぞれPP、QQとする。すべてのx∈Xx\in Xについて条件文p(x)⇒q(x)p(x)\Rightarrow q(x)が真であるための必要十分条件は、P⊆QP\subseteq Qであることである。

証明. すべてのx∈Xx\in Xについてp(x)⇒q(x)p(x)\Rightarrow q(x)が真であると仮定し、x∈Px\in Pを任意に取る。真理集合の定義によりp(x)p(x)は真であるから、仮定した条件文によってq(x)q(x)も真である。したがってx∈Qx\in Qであり、P⊆QP\subseteq Qが成り立つ。

逆に、P⊆QP\subseteq Qと仮定し、x∈Xx\in Xを任意に取る。p(x)p(x)が真ならばx∈Px\in Pであり、P⊆QP\subseteq Qからx∈Qx\in Qとなるので、q(x)q(x)は真である。したがって、すべてのx∈Xx\in Xについてp(x)⇒q(x)p(x)\Rightarrow q(x)は真である。▨

定理 1.1により、真理集合が小さい条件から、真理集合が大きい条件への含意が成り立ちます。したがって、条件が満たされる範囲が狭いほど条件は強くなります。

四角形全体をXXとすると、正方形の集合は長方形の集合に含まれます。この包含関係から、「正方形であること」は「長方形であること」であるための十分条件であり、「長方形であること」は「正方形であること」であるための必要条件です。

また、実数xxについてp(x)p(x)をx>3x>3、q(x)q(x)をx>1x>1とします。このときP={x∈R∣x>3}⊆{x∈R∣x>1}=QP=\{x\in\mathbb R\mid x>3\}\subseteq\{x\in\mathbb R\mid x>1\}=Qであるため、ppはqqであるための十分条件であり、qqはppであるための必要条件です。

2 二つの向きを判定する

定理 2.1. 同じ全体集合上の二つの条件pp、qqについて、p⇒qp\Rightarrow qとq⇒pq\Rightarrow pの真偽を別々に調べると、ppがqqであるための条件として次の四つの場合に分類される。

p⇒qp\Rightarrow q q⇒pq\Rightarrow p ppの分類
真 真 必要十分条件
真 偽 十分条件であるが、必要条件ではない
偽 真 必要条件であるが、十分条件ではない
偽 偽 必要条件でも十分条件でもない

証明.p⇒qp\Rightarrow qが真であることは、定義によりppが十分条件であることを意味する。q⇒pq\Rightarrow pが真であることは、定義によりppが必要条件であることを意味する。したがって、二つの条件文の真偽の四通りは、主張した四つの場合にそれぞれ対応する。特に両方が真である場合には、定理 1.1により二つの真理集合が互いに相手を含むので等しくなり、ppとqqは同値である。▨

一方の含意が偽であることを示すには、前件を満たして後件を満たさない対象を一つ挙げます。同値であることを示すには二つの向きをともに示す必要があり、一方の向きだけから同値と結論することはできません。

3 例:二乗によって生じる候補

例 3.1 (二乗した式の解が、元の方程式の解とは限らない). 実数xxについての方程式x+2=x\sqrt{x + 2} = xを考える。両辺を2乗するとx+2=x2x + 2 = x^2となり、x2−x−2=0x^2-x-2=0からx=2,−1x=2,-1が得られる。元の方程式が成り立てば二乗後の方程式も成り立つが、逆向きの含意はまだ示されていない。x=−1x=-1を元の方程式へ代入すると左辺は1=1\sqrt{1}=1、右辺は−1-1であり、等号は成り立たない。x=2x=2を代入すると両辺はともに22であり、等号が成り立つ。したがって、元の方程式の解はx=2x=2だけである。

この場面で「x+2=x2x + 2 = x^2を満たすこと」は、「x+2=x\sqrt{x+2} = xを満たすこと」であるための必要条件ですが、十分条件ではありません。必要条件だけを用いて得た候補については、元の式を満たすかどうかを確かめる必要があります。式変形では、各段階が⇒\Rightarrowだけを保つのか、  ⟺  \iffを保つのかを区別します。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の条件 p は、条件 q であるためのどのような条件か(十分条件・必要条件・必要十分条件・どちらでもない)を答えよ。

次の条件 p は、条件 q であるための何条件か答えよ。

解法の型p ⇒\Rightarrow q と q ⇒\Rightarrow p を独立に調べる。真理集合で見れば、小さいほう(きつい条件)が十分条件、大きいほう(ゆるい条件)が必要条件

  1. 例題 1

    p:n は 6 の倍数q:n は 3 の倍数\begin{array}{ll} p: & n \ \text{は}\ 6 \ \text{の倍数} \\ q: & n \ \text{は}\ 3 \ \text{の倍数} \end{array}
  2. 例題 2

    p:x>1q:x2>4\begin{array}{ll} p: & x > 1 \\ q: & x^2 > 4 \end{array}
  3. 例題 3

    p:x2+y2=0q:x=0 かつ y=0\begin{array}{ll} p: & x^2 + y^2 = 0 \\ q: & x = 0 \ \text{かつ}\ y = 0 \end{array}
  4. 例題 4

    p:x>0q:x2>0\begin{array}{ll} p: & x > 0 \\ q: & x^2 > 0 \end{array}
  5. 例題 5

    p:x=5q:x2=25\begin{array}{ll} p: & x = 5 \\ q: & x^2 = 25 \end{array}
  6. 例題 6

    p:x>0 かつ y>0q:xy>0\begin{array}{ll} p: & x > 0 \ \text{かつ}\ y > 0 \\ q: & xy > 0 \end{array}
  7. 例題 7

    p:四角形が正方形であるq:四角形がひし形である\begin{array}{ll} p: & \text{四角形が正方形である} \\ q: & \text{四角形がひし形である} \end{array}
  8. 例題 8

    p:三角形 ABC の3辺の長さを a,b,c とするとき、ABC は c を斜辺とする直角三角形q:a2+b2=c2\begin{array}{ll} p: & \text{三角形 ABC の3辺の長さを } a, b, c \text{ とするとき、ABC は } c \text{ を斜辺とする直角三角形} \\ q: & a^2 + b^2 = c^2 \end{array}
  9. 例題 9

    p:n は 3 の倍数q:n は 9 の倍数\begin{array}{ll} p: & n \ \text{は}\ 3 \ \text{の倍数} \\ q: & n \ \text{は}\ 9 \ \text{の倍数} \end{array}
  10. 例題 10

    p:n は 3 の倍数q:n は 6 の倍数\begin{array}{ll} p: & n \ \text{は}\ 3 \ \text{の倍数} \\ q: & n \ \text{は}\ 6 \ \text{の倍数} \end{array}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の条件 p は、条件 q であるためのどのような条件か(十分条件・必要条件・必要十分条件・どちらでもない)を答えよ。

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