極端原理では、空でない有限集合の最大元または最小元、あるいは自然数の空でない集合の最小元を選び、その選択が強いる局所的な制約を用いて問題を解きます。適用するには、極端な対象が存在する範囲を確かめ、選んだ対象から結論または矛盾へ進む関係を定めなければなりません。本記事では、最小反例、最大次数、最短距離を用いる議論を説明します。
1 極端原理の根拠
定義 1.1 (極端原理). 空でない有限集合の各対象に実数値が与えられているとする。が最大または最小となる対象を選び、その極端性から他の対象との関係を導く方法を極端原理という。有限性は、値の集合が最大値と最小値をもつことを保証する。一方、自然数の空でない部分集合から最小の数を選ぶ場合は、その部分集合が有限でなくても、自然数の整列性が選択を保証する。
2 極端な対象から得る制約
例 2.1 (最短距離の点対). 平面上の相異なる点からなる有限集合が二点以上を含むとする。の二点間の正の距離のうち最小のものを与える二点を選ぶと、線分の内部にはの点が存在しない。
証明.の二点からなる部分集合は有限個で少なくとも一つあり、それぞれの点対の距離は正であるから、距離が最小となる点対を選ぶことができる。
の点が線分の内部にあると仮定する。このとき、かつであるから、かつである。これはがの相異なる二点間の最小距離であることに反する。したがって、線分の内部にはの点が存在しない。▨
例 2.2 (最大次数の頂点).を頂点を少なくとも一つもつ有限単純グラフとし、頂点の次数の最大値をとする。このとき
が成り立つ。
証明.は空でない有限集合であるから、次数が最大となる頂点が存在し、その次数をと書くことができる。各辺は相異なる二端点の次数へ一回ずつ数えられるので、全頂点の次数の和はである。すべての頂点に対してであるから、
を得る。▨
3 最小反例
定理 3.1 (素因数分解の存在).より大きいすべての自然数は、有限個の素数の積に分解することができる。
証明. 主張の反例が存在すると仮定し、反例全体の集合をとする。は自然数の空でない部分集合であるから、最小元をもつ。
が素数ならば、自身が一個の素数の積であるからは反例ではない。したがっては合成数であり、かつ、を満たす自然数が存在する。の最小性によりとは反例ではないので、どちらも有限個の素数の積に分解することができる。それら二つの積を合わせればも有限個の素数の積に分解することができ、に反する。ゆえに反例は存在しない。▨
注意 3.2. 最小反例法と無限降下法は、自然数の空でない部分集合が最小元をもつことを共通の根拠とする。最小反例法は最小の反例より小さい対象で主張が成り立つことを用い、無限降下法は仮定した対象からさらに小さい同種の対象が得られることを用いる。
4 構成と上からの評価
定理 4.1.を正の整数とする。の部分集合で、連続する二整数を同時に含まないものの要素数の最大値はである。
証明. 奇数全体の集合は連続する二整数を含まず、要素数はである。したがって最大値は以上である。
連続する二整数を同時に含まない部分集合をとする。であり、各に対してである。これらの不等式から帰納的にを得る。とくにであるから、整数はを満たす。よってすべてのの要素数は以下であり、先の構成と合わせて最大値はである。▨
5 演習
- 相異なる整数からなる有限集合について、差が最小となる二数は、を小さい順に並べたときに隣り合うことを示してください。
- 頂点を少なくとも一つもつ有限単純グラフについて、次数が平均次数以上の頂点と、次数が平均次数以下の頂点がそれぞれ存在することを示してください。
- 最小反例法を用いて、すべての正の整数が相異なるの非負整数乗の和に表されることを示してください。
- の部分集合で、連続する二整数を同時に含まないものの要素数の最大値を、構成による下からの評価と昇順に並べた要素による上からの評価から求めてください。