この段は、高校数学の最上段である。Part A・Part B で別々に育てた計算・論証・関数・数列を一つにまとめる段であり、中心は微積分——微分と積分が微積分学の基本定理で結ばれること——である。あわせて、積み上げ型の単元だけでは触れにくい鑑賞的な定理集と、分野を横断する発想の型を置く。

段は学年の帯ではなく、扱う対象の層である。この段は高校の総合・展望にあたり、内容は数学Ⅱ・数学Ⅲと、指導要領の外にある話題からなる。

この段に置く単元

単元 扱うこと
微積分 微積分学の基本定理を入口に、積分の計算技術(置換・部分積分)、面積・体積・曲線の長さ、微分方程式・テイラー展開の入口まで
幾何の定理ギャラリー 初等幾何の強い定理を難易度別に並べた任意のギャラリー。本線の総合演習の代替ではなく、1項目=1定理=1つの動かせる図
初等整数論ギャラリー 初等整数論の名定理を一つずつ取り上げる任意のギャラリー。主張・初等的な証明・具体例を組にして扱い、1項目=1定理=1記事
受験微積分 大学入試の微積分で題材になりやすい話題を集めた任意のギャラリー。積分の漸化式、円筒殻による回転体の体積、和と積分の比較、多項式による数値の評価など、1項目=1題材=1記事
雑多な話題 積み上げに収まらない話題の受け皿。分野を横断する発想の型(不変量・極端原理・二通りに数える・彩色・鳩の巣)と問題解決の戦略

この並びにした理由

微積分をこの段の中心に置く。微分は Part B で関数の性質として扱い済みなので、ここでの主題は積分であり、その入口に微積分学の基本定理を据える。「面積を求める操作」と「変化率を求める操作」が互いに逆になっているという事実は、高校数学のなかで最も大きな総合であり、Part A・Part B で積み上げてきた計算と論証がここで一つにつながる。厳密な極限の定義には立ち入らず、計算の習熟をゴールとする。同じ計算を定義から組み直す作業は、次の段の ε-論法と基礎解析が引き受ける。

幾何の定理ギャラリーは、積み上げ式の単元とは性格が異なり、初等幾何のうち発展的で美しい定理(九点円・オイラー線・モーリー・ポンスレなど)を、依存関係を気にせず摘み食いできる場所として独立させている。Part A の初等幾何学を前提としつつ、順序に縛られない読み方を許す。

初等整数論ギャラリーも同じ性格の単元である。Part A の初等整数論で身につけた互除法・合同式・無限降下法・位数が実際に何を証明するのかを、ピタゴラス数の一般解・ウィルソンの定理・二平方和定理・ピックの定理・ベルトランの仮説といった個別の定理で確かめる場として置いている。定理どうしは互いの前提にならないので、どの記事から読んでもよい。

受験微積分も同じ性格の単元である。微積分は高校数学のなかで最も出題の幅が広く、題材となる数学的な話題が数多くある。それらは互いの前提にならず、微積分の解説の本線に順に並べることができない。そこで、微積分の積み上げの解説を薄めないために、題材だけを集めた単元として独立させている。入試問題そのものは載せず、題材の数学的な内容を、主張・導出・具体例の組として扱う。Part C の微積分で身につけた積分の計算を、まとまった題材に対して最後まで実行する場である。

雑多な話題は特定の分野の続きではなく、分野を横断する発想の道具立て(不変量・極端原理・二通りに数える・彩色・鳩の巣)と問題解決の戦略を養う場である。幾何・数論・組合せ論がある程度そろったこの段に置いている。分野別の実戦技法(不等式・組合せ・関数方程式・幾何・数論)は、それぞれの分野の単元の応用・展望に置いた。

参考にした基準

この段は、日本の学習指導要領の数学Ⅱ(積分の考え)・数学Ⅲ(積分法とその応用)を基準に据えている。二つのギャラリー、受験微積分、雑多な話題は指導要領の範囲外であり、必修ではない。数学Ⅲは、履修する場合には内容全体を学ぶ科目であるため、この段は理系進学を想定した読者向けの推奨経路である。

前の段・次の段へ

Part B(関数・数列・確率)で関数・数列・極限を扱えるようになっていれば、この段に進める。ここで高校数学を総合すると、Part D(大学1年ごろ)で、同じ極限・微積分を ε-論法によって定義から組み直す作業に入る。