§D2.5関係・同値関係・順序集合

最終更新

正の整数の間の整除関係や、集合の間の包含関係は、それぞれ反射的であり、反対称的であり、推移的であるという共通の性質を満たします。整除や包含のように別々に定義された関係を個別に扱ったのでは、こうした共通の性質やそこから導かれる構造を一般に論じることができません。二項関係を直積の部分集合として定義すれば、反射的・対称的・推移的といった性質をこの部分集合に関する条件として述べることができ、同値関係や半順序をこの言葉で統一的に扱うことができます。同値関係は集合を分割へ対応させ、半順序は整除関係のような順序を一般化したものであり、数学全体で広く仮定される基本的な構造です。本記事では、同値関係と分割の対応、半順序集合の基本的な性質について解説します。

1 二項関係

定義 1.1 (二項関係). 集合A,BA,Bに対し、直積A×BA\times Bの部分集合R⊆A×BR\subseteq A\times BをAAからBBへの二項関係 (binary relation) という。(a,b)∈R(a,b)\in RであることをaRba\mathrel{R}bとも書く。A=BA=BのときR⊆A×AR\subseteq A\times AをAA上の関係 (relation on a set) という。

関係を対の集合として定めたので、関係のもつ性質はいずれも集合の包含と演算の言葉で書くことができます。

定義 1.2 (関係の性質・合成・逆).AA上の関係R⊆A×AR\subseteq A\times Aについて、対角集合をΔA={(a,a):a∈A}\Delta_A=\{(a,a):a\in A\}とする。関係R⊆A×BR\subseteq A\times Bの逆 (inverse relation) はR−1={(b,a):(a,b)∈R}⊆B×AR^{-1}=\{(b,a):(a,b)\in R\}\subseteq B\times A、R⊆A×BR\subseteq A\times BとS⊆B×CS\subseteq B\times Cの合成 (composition of relations) はS∘R={(a,c)∈A×C:∃ b∈B, (a,b)∈R かつ (b,c)∈S}S\circ R=\{(a,c)\in A\times C:\exists\,b\in B,\ (a,b)\in R\ \text{かつ}\ (b,c)\in S\}である。AA上の関係RRについて、次のように定める。

  1. RRが反射的 (reflexive) であるとはΔA⊆R\Delta_A\subseteq R、すなわち任意のa∈Aa\in AについてaRaa\mathrel{R}aが成り立つことをいう。
  2. RRが対称的 (symmetric) であるとはR=R−1R=R^{-1}、すなわち任意のa,b∈Aa,b\in AについてaRba\mathrel{R}bならばbRab\mathrel{R}aが成り立つことをいう。
  3. RRが反対称的 (antisymmetric) であるとはR∩R−1⊆ΔAR\cap R^{-1}\subseteq \Delta_A、すなわち任意のa,b∈Aa,b\in AについてaRba\mathrel{R}bかつbRab\mathrel{R}aならばa=ba=bが成り立つことをいう。
  4. RRが推移的 (transitive) であるとはR∘R⊆RR\circ R\subseteq R、すなわち任意のa,b,c∈Aa,b,c\in AについてaRba\mathrel{R}bかつbRcb\mathrel{R}cならばaRca\mathrel{R}cが成り立つことをいう。

2 同値関係と分割

定義 2.1.AAを集合、RRをAA上の関係とする。RRが次の三条件を満たすとき、RRをAA上の同値関係 (equivalence relation) という。

  1. RRは反射的である。
  2. RRは対称的である。
  3. RRは推移的である。

RRをAA上の同値関係とする。a∈Aa\in Aに対し[a]R={x∈A:xRa}[a]_R=\{x\in A:x\mathrel{R}a\}とおき、これをaaのRRによる同値類 (equivalence class) という。同値類全体のなす集合A/R={ [a]R:a∈A }A/R=\{\,[a]_R:a\in A\,\}をRRによるAAの商集合 (quotient set) という。

例 2.2 (合同関係と写像が定める同値関係).mmを正の整数とする。整数a,ba,bに対してa∼ba\sim bをm∣(a−b)m\mid(a-b)によって定めると、∼\simはZ\mathbb Z上の同値関係である。実際、m∣0m\mid0であるから反射的であり、m∣(a−b)m\mid(a-b)ならばm∣(b−a)m\mid(b-a)であるから対称的であり、m∣(a−b)m\mid(a-b)かつm∣(b−c)m\mid(b-c)ならばm∣(a−c)m\mid(a-c)であるから推移的である。同値類はr+mZ={r+km:k∈Z}r+m\mathbb Z=\{r+km:k\in\mathbb Z\}という形であり、Z/∼={0+mZ,1+mZ,…,(m−1)+mZ}\mathbb Z/{\sim}=\{0+m\mathbb Z,1+m\mathbb Z,\ldots,(m-1)+m\mathbb Z\}である。

集合A,BA,Bと写像f:A→Bf:A\to Bに対し、a∼fba\sim_f bをf(a)=f(b)f(a)=f(b)によって定めると、∼f\sim_fはAA上の同値関係である。等号の反射律、対称律、推移律から、∼f\sim_fも三条件を満たす。aaの同値類はf−1({f(a)})f^{-1}(\{f(a)\})であるから、商集合A/∼fA/{\sim_f}はffの空でないファイバー全体からなり、写像A→A/∼f, a↦[a]∼fA\to A/{\sim_f},\ a\mapsto[a]_{\sim_f}は全射である。

例 2.3 (同値関係の三条件の独立性).A={1,2}A=\{1,2\}上の関係R1={(1,1)}R_1=\{(1,1)\}は対称的かつ推移的であるが、2R122\mathrel{R_1}2でないため反射的でない。AA上の関係R2={(1,1),(2,2),(1,2)}R_2=\{(1,1),(2,2),(1,2)\}は反射的かつ推移的であるが、2R212\mathrel{R_2}1でないため対称的でない。C={1,2,3}C=\{1,2,3\}上の関係

R3=ΔC∪{(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)}R_3=\Delta_C\cup\{(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)\}

は反射的かつ対称的であるが、1R321\mathrel{R_3}2かつ2R332\mathrel{R_3}3である一方で1R331\mathrel{R_3}3でないため推移的でない。したがって、同値関係の三条件のいずれも、残りの二条件から導くことはできない。

定義 2.4.AAを集合とする。AAの空でない部分集合を元とする集合P\mathcal{P}が、相異なるP,Q∈PP,Q\in\mathcal{P}についてP∩Q=∅P\cap Q=\varnothingを満たし、かつ⋃P∈PP=A\bigcup_{P\in\mathcal{P}}P=Aを満たすとき、P\mathcal{P}をAAの分割 (partition) といい、P\mathcal{P}の元を分割のブロック (block) という。

命題 2.5. 集合AA上の同値関係全体と、AAの分割全体との間には次の互いに逆な対応があり、全単射をなす。

  1. 同値関係RRに、同値類の族A/R={ [a]R:a∈A }A/R=\{\,[a]_R:a\in A\,\}を対応させる。
  2. 分割P\mathcal{P}に、「同じブロックに属する」という関係RP={(a,b):a,b は P の同一ブロックに属する}R_{\mathcal{P}}=\{(a,b):a,b\ \text{は}\ \mathcal{P}\ \text{の同一ブロックに属する}\}を対応させる。

証明.RRをAA上の同値関係とする。定義 2.1 条件 (a)により、各a∈Aa\in AについてaRaa\mathrel{R}aであるからa∈[a]Ra\in[a]_Rであり、[a]R[a]_Rは空でなく⋃a∈A[a]R=A\bigcup_{a\in A}[a]_R=Aが成り立つ。a,b∈Aa,b\in Aが[a]R∩[b]R≠∅[a]_R\cap[b]_R\neq\varnothingを満たすとし、xxをその共通部分の元とするとxRax\mathrel{R}aかつxRbx\mathrel{R}bである。y∈[a]Ry\in[a]_Rを取るとyRay\mathrel{R}aであり、定義 2.1 条件 (b)によりaRxa\mathrel{R}xであるから、定義 2.1 条件 (c)によりyRxy\mathrel{R}xが成り立ち、xRbx\mathrel{R}bと合わせてふたたび定義 2.1 条件 (c)によりyRby\mathrel{R}bが成り立つ。よってy∈[b]Ry\in[b]_Rであり[a]R⊆[b]R[a]_R\subseteq[b]_Rである。aaとbbの役割を入れ替えれば[b]R⊆[a]R[b]_R\subseteq[a]_Rも得られるので[a]R=[b]R[a]_R=[b]_Rである。したがってA/RA/Rの相異なる二元は互いに素であり、A/RA/RはAAの分割である。

P\mathcal{P}をAAの分割とし、aRPba\mathrel{R_{\mathcal{P}}}bであることを、aaとbbがともに属するP\mathcal{P}のブロックが存在することと定める。各a∈Aa\in Aは⋃P∈PP=A\bigcup_{P\in\mathcal{P}}P=Aからあるブロックに属するのでaRPaa\mathrel{R_{\mathcal{P}}}aであり、RPR_{\mathcal{P}}は反射的である。aaとbbがともに属するブロックが存在することと、bbとaaがともに属するブロックが存在することは同じ条件であるから、RPR_{\mathcal{P}}は対称的である。a,b,c∈Aa,b,c\in AがaRPba\mathrel{R_{\mathcal{P}}}bかつbRPcb\mathrel{R_{\mathcal{P}}}cを満たすとすると、a,b∈Pa,b\in Pとb,c∈Qb,c\in Qを満たすP,Q∈PP,Q\in\mathcal{P}が存在する。b∈P∩Qb\in P\cap QであるからP∩Q≠∅P\cap Q\neq\varnothingであり、P\mathcal{P}の相異なる二元は互いに素であるからP=QP=Qである。よってa,c∈Pa,c\in PとなりaRPca\mathrel{R_{\mathcal{P}}}cが成り立つので、RPR_{\mathcal{P}}は推移的である。ゆえにRPR_{\mathcal{P}}はAA上の同値関係である。

RRをAA上の同値関係とし、a,b∈Aa,b\in Aとする。aRA/Rba\mathrel{R_{A/R}}bとすると、a,b∈[c]Ra,b\in[c]_Rを満たすc∈Ac\in Aが存在し、aRca\mathrel{R}cかつbRcb\mathrel{R}cである。定義 2.1 条件 (b)によりcRbc\mathrel{R}bであり、定義 2.1 条件 (c)によりaRba\mathrel{R}bである。逆にaRba\mathrel{R}bとするとa∈[b]Ra\in[b]_Rであり、定義 2.1 条件 (a)によりb∈[b]Rb\in[b]_Rであるから、aaとbbはともに[b]R[b]_Rに属しaRA/Rba\mathrel{R_{A/R}}bである。したがってRA/R=RR_{A/R}=Rである。

P\mathcal{P}をAAの分割としR=RPR=R_{\mathcal{P}}とおく。a∈Aa\in Aを含むP\mathcal{P}のブロックは存在し、P,Q∈PP,Q\in\mathcal{P}がともにaaを含めばP∩Q≠∅P\cap Q\neq\varnothingからP=QP=Qとなるので、ただ一つである。これをP(a)P(a)と書く。x∈[a]Rx\in[a]_Rであることはxxとaaがともに属するブロックが存在することであり、aaを含むブロックはP(a)P(a)だけであるから、x∈P(a)x\in P(a)と同値である。よって[a]R=P(a)[a]_R=P(a)でありA/R={P(a):a∈A}A/R=\{P(a):a\in A\}である。各a∈Aa\in AについてP(a)∈PP(a)\in\mathcal{P}であるからA/R⊆PA/R\subseteq\mathcal{P}であり、逆にP∈PP\in\mathcal{P}は空でないのでa∈Pa\in Pを取ればP=P(a)∈A/RP=P(a)\in A/Rとなる。したがってA/RP=PA/R_{\mathcal{P}}=\mathcal{P}である。

同値関係RRにA/RA/Rを対応させる写像をΦ\Phi、分割P\mathcal{P}にRPR_{\mathcal{P}}を対応させる写像をΨ\Psiと書く。ここまでに示したことにより、Φ\PhiはAA上の同値関係全体からAAの分割全体への写像、Ψ\PsiはAAの分割全体からAA上の同値関係全体への写像であり、Ψ∘Φ\Psi\circ\PhiとΦ∘Ψ\Phi\circ\Psiはともに恒等写像である。Ψ∘Φ\Psi\circ\Phiが恒等写像であることからΦ\Phiは単射であり、Φ∘Ψ\Phi\circ\Psiが恒等写像であることからΦ\Phiは全射である。ゆえにΦ\Phiは全単射である。▨

系 2.6.nnを非負整数とし[n]={1,2,…,n}[n]=\{1,2,\dots,n\}とする。[n][n]上の同値関係全体と[n][n]の分割全体は同じ元の個数をもつ。

証明.命題 2.5により、[n][n]上の同値関係全体から[n][n]の分割全体への全単射が存在する。全単射で結ばれた二つの有限集合の元の個数は等しいから、結論が従う。▨

3 半順序集合

定義 3.1 (半順序集合・鎖・反鎖). 集合PP上の反射的・反対称的・推移的な関係≤\leを半順序 (partial order)、対(P,≤)(P,\le)を半順序集合 (partially ordered set)(poset)という。a≤ba\le bかつa≠ba\ne bをa<ba<bと書く。a≤ba\le bまたはb≤ab\le aのときa,ba,bは比較可能 (comparable)、いずれも成り立たないとき比較不能 (incomparable) という。

  1. 部分集合C⊆PC\subseteq Pが鎖 (chain) であるとは、CCの任意の二元が比較可能であることをいう(CCは全順序をなす)。
  2. 部分集合A⊆PA\subseteq Pが反鎖 (antichain) であるとは、AAの相異なる二元が常に比較不能であることをいう。
  3. m∈Pm\in Pが極大元 (maximal element) であるとは、m<xm<xなるx∈Px\in Pが存在しないことをいう。極小元は双対に定める。
  4. S⊆PS\subseteq Pの上界 (upper bound) とは、任意のs∈Ss\in Sでs≤us\le uを満たすu∈Pu\in Pのことをいう。上界のうち最小のものが存在すればそれをSSの上限 (supremum)(sup⁡S\sup S)という。下界 (lower bound) と下限 (infimum)(inf⁡S\inf S)は双対に定める。

さらにa<ba<bかつa<x<ba<x<bなるxxが存在しないとき、bbはaaを被覆する (covers) といいa⋖ba\lessdot bと書く。

定義 3.2.(P,≤)(P,\le)を半順序集合、SSをPPの部分集合とする。m∈Sm\in Sがすべてのs∈Ss\in Sについてs≤ms\le mを満たすとき、mmをSSの最大元 (greatest element) という。すべてのs∈Ss\in Sについてm≤sm\le sを満たすm∈Sm\in SをSSの最小元 (least element) という。

命題 3.3. 半順序集合の部分集合の最大元と最小元は、それぞれ存在すれば一意である。

証明.(P,≤)(P,\le)を半順序集合、S⊆PS\subseteq Pとし、m,m′m,m'をともにSSの最大元とする。最大元の定義からm≤m′m\le m'かつm′≤mm'\le mであり、≤\leの反対称性からm=m′m=m'である。したがって最大元は存在すれば一意である。

n,n′n,n'をともにSSの最小元とする。最小元の定義からn≤n′n\le n'かつn′≤nn'\le nであり、≤\leの反対称性からn=n′n=n'である。したがって最小元も存在すれば一意である。▨

例 3.4.{1,2,3}\{1,2,3\}の真部分集合全体をPPとし、包含関係⊆\subseteqを順序として入れる。PPは77個の元をもつ有限半順序集合である。{1,2}\{1,2\}を真に含む{1,2,3}\{1,2,3\}の部分集合は{1,2,3}\{1,2,3\}だけであり、{1,2,3}\{1,2,3\}自身は真部分集合ではないから、{1,2}\{1,2\}はPPの極大元である。{1,3}\{1,3\}と{2,3}\{2,3\}についても、それぞれを真に含む{1,2,3}\{1,2,3\}の部分集合は{1,2,3}\{1,2,3\}だけであるから、どちらもPPの極大元である。一方、mmがPPの最大元であるとすると{1,2}⊆m\{1,2\}\subseteq mかつ{1,3}⊆m\{1,3\}\subseteq mであるから{1,2,3}⊆m\{1,2,3\}\subseteq mとなり、mmが{1,2,3}\{1,2,3\}の真部分集合であることに反する。したがってPPは、極大元{1,2}\{1,2\}、{1,3}\{1,3\}、{2,3}\{2,3\}をもちながら最大元をもたない有限半順序集合である。

定義 3.5.(P,≤)(P,\le)を有限半順序集合とする。PPの各元を平面上の点で表し、a⋖ba\lessdot bであるときにbbの点をaaの点より上に置いて、被覆関係にある対だけを線分で結んで得られる図を、(P,≤)(P,\le)のHasse 図 (Hasse diagram) という。

命題 3.6.(P,≤)(P,\le)を有限半順序集合とし、a,b∈Pa,b\in Pとする。a≤ba\le bであることと、a=x0⋖x1⋖⋯⋖xk=ba=x_0\lessdot x_1\lessdot\cdots\lessdot x_k=bを満たすPPの元の列が存在することは同値である。ただし、k=0k=0の列はa=ba=bを意味する。したがって、有限半順序集合の順序は被覆関係だけから定まる。

証明.a=x0⋖x1⋖⋯⋖xk=ba=x_0\lessdot x_1\lessdot\cdots\lessdot x_k=bを満たす列が存在するとする。k=0k=0ならば反射律によりa≤ba\le bであり、k>0k>0ならば各xi−1<xix_{i-1}<x_iと推移律によりa<ba<bである。

a≤ba\le bとし、M(a,b)={y∈P:a<y<b}M(a,b)=\{y\in P:a<y<b\}の元の個数について帰納法を用いる。a=ba=bならばk=0k=0の列を取ることができる。a<ba<bかつM(a,b)=∅M(a,b)=\varnothingならばa⋖ba\lessdot bであるから、k=1k=1の列を取ることができる。a<ba<bかつM(a,b)≠∅M(a,b)\ne\varnothingならば、x∈M(a,b)x\in M(a,b)を取る。<<の推移性からM(a,x),M(x,b)⊆M(a,b)M(a,x),M(x,b)\subseteq M(a,b)であり、いずれもxxを含まないから、それぞれの元の個数はM(a,b)M(a,b)の元の個数より小さい。帰納法の仮定によりaaからxxへの被覆列とxxからbbへの被覆列が存在し、二つの列をxxでつなぐとaaからbbへの被覆列を得る。▨

例 3.7 (Hasse 図:1212の約数).P={1,2,3,4,6,12}P=\{1,2,3,4,6,12\}に整除関係a≤b  ⟺  defa∣ba\le b\overset{\text{def}}{\iff}a\mid bを入れると半順序集合になる。整除関係は反射的かつ推移的であり、正の整数a,ba,bについてa∣ba\mid bかつb∣ab\mid aならばa=ba=bであるから反対称的である。被覆関係は1⋖2,1⋖3,2⋖4,2⋖6,3⋖6,4⋖12,6⋖121\lessdot 2,\quad 1\lessdot 3,\quad 2\lessdot 4,\quad 2\lessdot 6,\quad 3\lessdot 6,\quad 4\lessdot 12,\quad 6\lessdot 12であり、Hasse 図は下から11、その上に2,32,3、さらに4,64,6、頂点に1212を置き、上の被覆対を辺で結んだ図になる。44と66は比較不能(4∤64\nmid 6かつ6∤46\nmid 4)だから{4,6}\{4,6\}は反鎖である。一方{1,2,4,12}\{1,2,4,12\}は鎖である。

PPの最大反鎖の大きさを求める。11は他のすべてを割り、1212は他のすべてに割られるので、1,121,12は残りのどの元とも比較可能であり、22元以上の反鎖には入れない。よって22元以上の反鎖は{2,3,4,6}\{2,3,4,6\}の部分集合である。{2,3,4,6}\{2,3,4,6\}の三元部分集合は{2,3,4}\{2,3,4\}、{2,3,6}\{2,3,6\}、{2,4,6}\{2,4,6\}、{3,4,6}\{3,4,6\}の四つであり、それぞれ2∣42\mid 4、2∣62\mid 6、2∣42\mid 4、3∣63\mid 6という比較可能な対を含むから、大きさ33の反鎖は存在しない。反鎖の部分集合は反鎖であるから、大きさ44以上の反鎖も存在しない。一方{4,6}\{4,6\}は大きさ22の反鎖である。したがって最大反鎖の大きさ(幅)は22である。

4 束

定義 4.1 (束). 半順序集合(L,≤)(L,\le)が束 (lattice) とは、任意の二元a,b∈La,b\in Lが上限a∨b=sup⁡{a,b}a\vee b=\sup\{a,b\}(結び (join))と下限a∧b=inf⁡{a,b}a\wedge b=\inf\{a,b\}(交わり (meet))をもつことをいう。

命題 4.2. 束(L,≤)(L,\le)の空でない有限部分集合は上限と下限をもつ。

証明.F⊆LF\subseteq Lを空でない有限部分集合とし、FFの元の個数について帰納法を用いる。F={a}F=\{a\}ならばaaがFFの上限である。nn元以下の空でない部分集合が上限をもつと仮定し、F={a1,…,an,an+1}F=\{a_1,\ldots,a_n,a_{n+1}\}とする。b=sup⁡{a1,…,an}b=\sup\{a_1,\ldots,a_n\}とおくことができ、束の定義からb∨an+1b\vee a_{n+1}が存在する。各aia_iはb∨an+1b\vee a_{n+1}以下であるから、b∨an+1b\vee a_{n+1}はFFの上界である。uuをFFの上界とすると、b≤ub\le uかつan+1≤ua_{n+1}\le uであるからb∨an+1≤ub\vee a_{n+1}\le uである。したがってb∨an+1=sup⁡Fb\vee a_{n+1}=\sup Fである。数学的帰納法により、FFは上限をもつ。

F={a}F=\{a\}ならばaaがFFの下限である。nn元以下の空でない部分集合が下限をもつと仮定し、F={a1,…,an,an+1}F=\{a_1,\ldots,a_n,a_{n+1}\}とする。c=inf⁡{a1,…,an}c=\inf\{a_1,\ldots,a_n\}とおくことができ、束の定義からc∧an+1c\wedge a_{n+1}が存在する。c∧an+1c\wedge a_{n+1}は各aia_i以下であるからFFの下界である。llをFFの下界とすると、l≤cl\le cかつl≤an+1l\le a_{n+1}であるからl≤c∧an+1l\le c\wedge a_{n+1}である。したがってc∧an+1=inf⁡Fc\wedge a_{n+1}=\inf Fである。数学的帰納法により、FFは下限ももつ。▨

例 4.3 (1212の約数の束).例 3.7のP={1,2,3,4,6,12}P=\{1,2,3,4,6,12\}に整除順序を入れる。各a∈Pa\in Pはa=2i3ja=2^i3^jと一意に書くことができ、指数は0≤i≤20\le i\le2、0≤j≤10\le j\le1を満たす。a=2i3ja=2^i3^jとb=2i′3j′b=2^{i'}3^{j'}に対して、a∣ba\mid bであることはi≤i′i\le i'かつj≤j′j\le j'であることと同値である。したがって

a∨b=2max⁡{i,i′}3max⁡{j,j′}=lcm⁡(a,b),a∧b=2min⁡{i,i′}3min⁡{j,j′}=gcd⁡(a,b)a\vee b=2^{\max\{i,i'\}}3^{\max\{j,j'\}}=\operatorname{lcm}(a,b),\qquad a\wedge b=2^{\min\{i,i'\}}3^{\min\{j,j'\}}=\gcd(a,b)

であり、いずれもPPの元である。よってPPは束である。たとえば4∨6=124\vee6=12、4∧6=24\wedge6=2である。

例 4.4 (冪集合の束). 集合SSの冪集合2S2^Sに包含順序を入れる。X,Y,Z⊆SX,Y,Z\subseteq Sに対して、X⊆ZX\subseteq ZかつY⊆ZY\subseteq ZであることはX∪Y⊆ZX\cup Y\subseteq Zであることと同値であり、Z⊆XZ\subseteq XかつZ⊆YZ\subseteq YであることはZ⊆X∩YZ\subseteq X\cap Yであることと同値である。したがってX∨Y=X∪YX\vee Y=X\cup Y、X∧Y=X∩YX\wedge Y=X\cap Yであり、2S2^Sは束である。

例 4.5 (束でない半順序集合).例 3.4の半順序集合PPを考える。{1,2}\{1,2\}と{1,3}\{1,3\}の共通上界U∈PU\in Pが存在すると仮定すると、{1,2,3}={1,2}∪{1,3}⊆U\{1,2,3\}=\{1,2\}\cup\{1,3\}\subseteq Uでなければならない。しかしPPの元は{1,2,3}\{1,2,3\}の真部分集合であるから、そのようなUUは存在しない。したがって二元{1,2},{1,3}\{1,2\},\{1,3\}は上限をもたず、PPは束でない。

5 演習

問題 5.1 (部分集合の要素数の偶奇).S={1,2,3}S=\{1,2,3\}とし、2S2^S上の関係X∼YX\sim Yを∣X∣≡∣Y∣(mod2)|X|\equiv|Y|\pmod 2によって定める。∼\simが同値関係であることを示し、すべての同値類を求めよ。

解答.

任意のX⊆SX\subseteq Sについて∣X∣≡∣X∣(mod2)|X|\equiv|X|\pmod2であるから、∼\simは反射的である。∣X∣≡∣Y∣(mod2)|X|\equiv|Y|\pmod2ならば∣Y∣≡∣X∣(mod2)|Y|\equiv|X|\pmod2であるから、∼\simは対称的である。∣X∣≡∣Y∣(mod2)|X|\equiv|Y|\pmod2かつ∣Y∣≡∣Z∣(mod2)|Y|\equiv|Z|\pmod2ならば∣X∣≡∣Z∣(mod2)|X|\equiv|Z|\pmod2であるから、∼\simは推移的である。したがって∼\simは同値関係である。同値類は

{∅,{1,2},{1,3},{2,3}},{{1},{2},{3},{1,2,3}}\{\varnothing,\{1,2\},\{1,3\},\{2,3\}\},\qquad \{\{1\},\{2\},\{3\},\{1,2,3\}\}

の二つである。▨

問題 5.2 (3030の約数の Hasse 図).3030の正の約数全体を整除関係で順序づける。被覆関係をすべて求め、この半順序集合の幅を求めよ。

解答.

3030の正の約数は1,2,3,5,6,10,15,301,2,3,5,6,10,15,30である。被覆関係は

1⋖2,1⋖3,1⋖5,2⋖6,2⋖10,3⋖6,3⋖15,5⋖10,5⋖15,6⋖30,10⋖30,15⋖301\lessdot2,\quad1\lessdot3,\quad1\lessdot5,\quad 2\lessdot6,\quad2\lessdot10,\quad3\lessdot6,\quad3\lessdot15,\quad5\lessdot10,\quad5\lessdot15,\quad 6\lessdot30,\quad10\lessdot30,\quad15\lessdot30

である。{2,3,5}\{2,3,5\}と{6,10,15}\{6,10,15\}はいずれも大きさ33の反鎖である。

大きさ44以上の反鎖が存在しないことを示す。11と3030はすべての約数と比較可能であるから、大きさ22以上の反鎖には属さない。残る六元を2,3,52,3,5と6,10,156,10,15に分け、反鎖が前者からkk元を含むとする。k=0k=0またはk=3k=3のとき、その反鎖の大きさは高々33である。k=1k=1のとき、後者の三元のうち選んだ素数で割り切れないものは一つだけであるから、反鎖の大きさは高々22である。k=2k=2のとき、後者の三元はいずれも選んだ二つの素数の少なくとも一方で割り切れるから、反鎖の大きさは22である。したがって最大反鎖の大きさは33であり、幅は33である。▨

参考文献

  1. Kenneth H. Rosen, Discrete Mathematics and Its Applications, 8th ed., McGraw Hill, New York, 2019.
  2. Richard P. Stanley, Enumerative Combinatorics, 2nd ed., Cambridge Studies in Advanced Mathematics 49, vol. 1, Cambridge University Press, Cambridge, 2011.
  3. B. A. Davey and H. A. Priestley, Introduction to Lattices and Order, 2nd ed., Cambridge University Press, 2002.

前提記事